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【迫真エッセイ】転職と苦悩の話①

ちょっと自分の話を綴りながら、過去そして現在を整理したいと思います。時は新入社員の頃に遡ります。


■舗装された道

僕は工学部を出て、とあるメーカーで設計職に就いた。それなりに名のある会社だった。理系出身で良かったと心から思った。他でもない、推薦枠があるからだ。

学生時代の僕はそつなく単位取得をこなしながらも、実態は遊び惚けていた。生きてはいるが、何かに向かって活き活きとしている訳ではない。夢と現実の狭間で悩む若者の映画や小説に触れてもいまいちピンとこない。そんな学生だった。

強いて言えばお金が欲しかった。

一人暮らしはそれなりに貧乏だったから。自宅暮らしの友人がいつもバイト代をフルに使えているのがうらやましかった。だからどんなに夜中まで働いてもいいから給料の良いところに行きたかった。言ってみればそれが夢だった。そんな希望で僕はあるメーカーに入った。それで入れてしまうのが理系だった。

そんな感じで僕の社会人生活はスタートした。「激務」と「夢中」の始まりだった。


■躍動

入社に当たって僕は明確にある目標を掲げた。それは「社会人デビュー」

よく高校デビューとか、大学デビューとかあるけれど、まさにあの類。僕は学生時代、特に勉強熱心でもなく、
はっきり言って優秀では無かったが、社会人になるにあたって”スーパールーキー”を演じることにした。

多少の虚勢もやむなし。とにかく、自分を蔑むことなど絶対にやめ、根拠のない自信と給料だけをガソリンにしたやる気。「オレに任せてください!」と背中に張り紙でもあるのではないかと錯覚させるほどのプロアクティブさで目をぎらつかせていた。

結果としてこれが良かった。

会社に定期テストなどない。頭の良し悪しを明示する機会など無いのだ。まさにゲゲゲの鬼太郎のエンディングテーマ。会社とは、学校も試験もない妖怪たちの村そのものだった。この妖怪たちの住みつく世界を若造が生き抜く術はただ一つ。「やる気全面マン」だ。

多少の空振りは許される。むしろ空振りをすればするほど要領を得ていく。”若いうちの苦労は買ってでもしろ”という教訓を、虚勢を張ったスーパールーキーを演じることで期せずして実践していたのだ。


疲れ切った先輩が言う「君いいね。」。するとそれはタバコ部屋で話題になる。会社という妖怪村は恐ろしい。実際に見たものよりタバコ部屋の駄話の方が信頼度は高い。こうして良い噂が広がっていく。

「鈴木と申します。よろしくお願いいたします。」

と他部署で自己紹介すれば、「君が鈴木くんか」と安いドラマのようなリアクションを受け、良い方の色眼鏡で見てくれる。僕の社会人デビューは上々だった。こうして僕は調子に乗って行く。

スーパールーキーは躍動する・・・かに見えた。しかし気付いてしまうのである。

「オ、オレは利用されている!?」



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続く。
全く転職の話が出てこないが、続く。

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