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【エッセイ】見えないところで

先日、宮城県の鳴子温泉に一泊した。
鳴子は山あいにあり、宮城県内でも雪が多い地域である。私が行った時も天気は、みぞれからの雪だった。天気予報によると夜から雪が激しくなるという。

温泉街は、山の斜面にあり、宿泊したホテルは温泉街の中でも標高が高いところにある。さらに行くまでの道路の幅が狭く、譲り合わないと車がすれ違うことができないほど。

ホテルまでの狭くて急な坂を車で上りながら、天気予報が頭をかすめ、翌日の帰り道が不安になった。着いてみると駐車場も屋根がないので、車の雪下ろしを覚悟していた。

フロントでチェックインした時に「お車の雪下ろし、させていただいてもよろしいでしょうか」とたずねられた。サービスでやってくれるとは!ありがたい申し出に「(ぜひ)お願いします!」と答えた。

翌朝、5時30分くらいに目が覚めた。窓からまだ暗い外を眺める。温泉街を一望できるのだが、真っ白になっていた。空からは次々とハイペースで雪が降ってきていた。

そんな中、ホテル前の坂道をタンクを積んだ車が何度も行き来していた。小まめに融雪剤をまいているのだ。

ふと駐車場を見ると、ホテルのスタッフ数人が車の雪下ろしや駐車場の雪かきをする姿が見えた。自宅であれば、寒い中自らやらなければならないこと、体力も消耗する。
宿泊料金に含まれているとはいえ、早朝からの雪かきがとにかくありがたいと思った。

おかげで11時に出発するときには、スムーズだった。車の雪下ろしもほとんどなく、懸念していた坂道も問題なく下っていけた。みんなが寝静まっている間に除雪をしてくれる人たちに感謝の気持ちでいっぱいになった。



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