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【ブックレビュー】全国各地で本にかかわる女性たちの生き方を垣間見る『本の時間を届けます』

こんにちは。
東北暮らしの週末ライター、すずき・ちえです。
今日は最近読んだ本のレビューを書いていきます。

ご紹介する本はこちら。

2016年に初版が発行された本です。
先日、地元の図書館に行った時に見つけました。私も本が好きなので、タイトルに惹かれて手に取りました。

パラパラとページをめくると、本が好きで、本を届ける仕事や活動を自分で初めた女性たちをクローズアップしている内容でした。

拠点や形態も様々で、瀬戸内海の離島の図書館、古本バル、読書会を柱とした古書店など、個性豊か。そして地方都市で活動している人も多い。

地方都市の本好きの一人として、オーナーの女性たちの人となりや、どのようなプロセスを経て本を仕事にする道を作ってきたのかに興味を惹かれて、読んでみました。

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この本には、東北から九州まで、全国各地で「本の時間を届ける」女性たちが紹介されています。
驚いたのは新卒から出版・編集関係の仕事をしていた人ばかりではないということ。大学職員、動物看護師、主婦など異業種からの転身という方も。

また、同じ志をもつ数人で活動を立ち上げた人たちもいました。

私が一番印象に残ったのは、宮城県南三陸町の「みなみさんりくブックス」でした。

南三陸町は、2011年、東日本大震災で甚大な被害を被った町。町立図書館や書店も、津波によって跡形もなく流されてしまいました。

みなみさんりくブックスは、震災後にボランティアがきっかけで移住し現地のNPOで働く女性や、地元にUターンしてきた元書店員の女性などが立ち上げたプロジェクトです。

震災から4年後に発足。「本と出合える場所」「本をきっかけに人と人が交流できる場所」を作ることを目的に、廃校になった小学校の木造校舎に「かもしか文庫」という私設文庫の運営などの活動をしています。

私の心に響いたのが、主要メンバーの言葉でした。

「普通の生活をしていると本を読むのって当たり前のことですけど、実は本を手に取れるというのはすごいことなんだなって。(後略)」

『本の時間を届けます』より

私自身も、宮城県で震災に遭いました。南三陸のような大きな被害は受けていないものの、当時は目の前の復旧作業で精一杯だったり、本の流通も途絶えていたので、「本を読む時間の大切さ」はなくなって初めて気が付きました。
共感できる一言でした。

「かもしか文庫」はオープン以来、町の人ばかりではなく、県外からも本好きな人が来るなど、だんだんと浸透してきているようです。

誰でも気軽に入ることができ、日常を忘れて本を読むことができる場所を作ることは、本が好きな人たちだからこそできる発想だと感じました。
本を通して多くの人に喜んでもらえるのは活動の醍醐味なのではないか、と思います。

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全て読み終わった時に感じたのが、「本」を通して様々な人生が垣間見ることができたことでした。
登場するすべての人たちが、自分の道を作っている生きざまが格好良かったです。
実は私が本を読んだ時は、自分の力不足を痛感した出来事があった直後でした。けれども読後、落ち込んでいた気持ちが晴れて、パワーが湧いてくるのを感じたのでした。

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