見出し画像

【#ご当地グルメ】岩手の懐かしの味「すいとん」

noteの「募集中」のテーマの中に「#ご当地グルメ」を見つけた。その時に思い浮かんだのが「すいとん」だった。

「すいとん」は、小麦で作った団子を入れた汁物だ。全国色々なところにあるらしいが、呼び方や材料がそれぞれらしい。
東北では、「ひっつみ」「はっと」など呼ばれている地域もあるようだ。

私にとってのご当地グルメでもあり、思い出の味は、亡き祖母が作ってくれた「すいとん」だ。
子どもの頃、夏休みや冬休みのほとんどの時間を岩手の祖母の家で過ごしていたときの思い出がよみがえる。

昭和ひとケタ生まれの祖母は40代で夫に先立たれ、定年退職まで働いていたキャリアウーマンだ。行動的なタイプで話題も豊富、一緒にいると楽しくてウマがあった。
祖母と2人で過ごす休みがとても楽しみだった。

ある日の夕食で、初めてすいとんを食べた。
シイタケと鶏肉の味が染み込んだ、しょうゆ味の汁。
中には、小麦粉で作った、ぼってりとしたワンタンのような具と、大根・人参・ごぼう・ネギといった野菜やシイタケなどのキノコが入っていた。

その時、なぜか昔から馴染んだような味がして、もっと食べたくなった。
「おいしい~」「また食べたい」と大絶賛しながらお代わりした記憶がある。

それ以来、祖母と孫の夕食の定番メニューとなった。
食べるだけではなく、作るところから一緒にやるようになった。

画像1


「何でもやってみなさい」が口ぐせだった祖母。
「え~、できないよ~」としり込みする小学生の私に「一緒に作ってみよう!できるから!」と、背中を押してくれた。

「すいとん」作りは子どもにとって、長丁場だ。半日かかる。汁の中に入れる小麦粉の具は、昼間から準備が必要だ。
小麦粉に水を少しずつ加えながら練っていく。祖母が水を加えて私が練る、私が疲れた様子を見せると、祖母が練るのを変わってくれた。

2人で力を合わせて練った小麦粉は、大きな塊となった。
そこから5~6時間ほど、ねかせる。ボウルの上に濡らした布巾をかけるので、文字通り小麦が「寝ている」ような気がして、人みたいだと幼心に思った。
そうそう、ここでシイタケもぬるま湯につけておく。あるとないとでは風味が全く違うのだ。

夕方になると、ごぼう、大根、人参、ネギを切る。
そして、シイタケが柔らかくなったころ、醤油汁を作り始める。

汁には、野菜と鶏肉、シイタケを入れる。
シイタケの他、もう一つの味の決め手が鶏肉だ。「いわい鶏」という地元の銘柄の鶏肉は、柔らかくてじんわりと油が出て、醤油味によく合う。

汁を煮ながら、祖母が、寝かせていた小麦の塊を指で押して確かめる。「ん~もうちょっとだね」と言われると、待ち遠しくて早く作って食べたい衝動に駆られる。
ほどよい柔らかさになると、伸ばしてちぎりながら、沸騰した汁の中に入れる。少し火を通せば完成だ。

食べると、鶏肉・シイタケ・醤油が合わさった味はこの上ないくらいに相性がいいと思った。「美味しい」を連発する小学生の孫を見て、祖母は「まさか孫にこんなに喜ばれるとはね~。戦時中に食べてたから、特別美味しいと思ったことなかったなぁ~」とほほ笑みながら言った。

もしかすると、小学生の私が「すいとん」を美味しいと思ったのは、祖母と二人で、丁寧に、楽しみながら作った充実感や、「自分にはできない」と思っていた「すいとん作り」ができた自信に満ち溢れていたからかもしれない。

そんな祖母も一昨年に亡くなった。
最近、祖母の暮らしていた家の整理に岩手に行った時、泊まった旅館の夕食で「すいとん」が出た。
食べていたら、二人ですいとんを作って食べたことを思い出して、少し切なくなってしまった。
今度作ってみようかな…小麦粉を練るところから…。なんて思っている。「やればできるから!」と、祖母が背中を押してくれている気がした。

#ご当地グルメ

この記事が参加している募集

#ご当地グルメ

15,921件