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5年越しの願いを叶えたハナシ〜自分の中の”ちょっとしたこと”を叶えるススメ〜

私には、かれこれ5年に渡って、ずっとやってみたかったけれど、一歩踏み出せなかったことがある。

それは、
ガレット・デ・ロワを買うこと!

……

ガレット・デ・ロワとは、フランスの伝統菓子の名前だ。アーモンドクリームをパイで挟んだお菓子で、毎年新年の公現祭(1月6日)というお祝いに合わせてこのお菓子を食べるのが、フランスでは定番の習慣らしい。ここ数年は、日本でも年末年始に販売をするパン屋や洋菓子屋が増えているので、この名前を耳にしたり、実物を目にしたことがある人も少なくないかもしれない。

私がガレット・デ・ロワと初めて出会ったのは、もう20年ほど前になる学生時代のことだった。

当時私はフランスのベーカリーを模したパン屋でアルバイトをしていたのだけれど、そこで毎年年明けの1週間だけ限定販売されていたのだ。一年に一回、七日間しか販売されないなんともプレミア感が強いそのお菓子に興味を持った。ホール売りと同時にピース売りもしていたので、パン屋の社割を使って1ピースを買って食べてみた。

一口食べて、気に入った。サクサクのパイ生地の香ばしさと、その中に挟まったアーモンドクリームのしつこくない上品な甘味。今まで食べたことがない食感と味わいは私の好みにヒットし、その瞬間からガレット・デ・ロワは私のお気に入りのお菓子となった。それ以来、そのパン屋さんに勤めていた数年は毎年ガレット・デ・ロワの登場を楽しみにしていて、一年に一回毎年欠かさず食べていた。

ただ、その後大学を卒業してアルバイトを辞めた後は、そのパン屋とも縁がなくなり、他にも販売しているお店はあったのだろうけれど、何しろ年末年始の短い期間にしか世の中に登場しないお菓子ということもあり、なんだかんだで巡り合うタイミングがなく、ガレット・デ・ロワとのご縁が切れたまま数年が経っていった。

そんなある日、ちょうど5年ほど前に、自宅付近のパン屋さんでガレット・デ・ロワが販売されているのを見かけた。その瞬間に、学生時代に出会ったあの味が蘇って、「また食べたい!」となったのだけど…そのときの私にはガレット・デ・ロワを購入することは、すごくハードルの高いことになっていた。

というのも、私が近所のパン屋で見かけたガレット・デ・ロワはホール売りしかしてなかったのだ。

そもそもガレット・デ・ロワというのは、ホールのパイの中にフェーヴという小さな陶器の飾りを一つ潜り込ませて、家族で切り分けて食べたときにそのフェーヴが入っているピースに当たった人が一日”王様”として周りの人にいうことを聞いてもらえる、というような遊びも入った食べ物なのだ。

そんな食べ方の特徴もあるので、ホール売りされている理由は理解できるのだけれど、デッカいホールのパイなんて、一度には食べ切れないだろうし、パイなんて日持ちしないから、万が一余ったらもったいないし…と「ホール」のお菓子に異様なプレッシャーを感じたのが一つ。

さらに引っかかったのが値段だ。ホールのパイともなると、3000円くらいのお値段がする。さらには、そもそも誕生日でもクリスマスでもないのに、そこそこの値段を出してホールのパイ菓子を買うというのは、自分の常識の中になさすぎて、そこにも躊躇があった。

そう、そもそも年末年始という時期の販売、という点も自分の中で引っかかる要因の一つだった。日本人として日本の年末年始に慣れている身としては、年末は年越し蕎麦を食べ、年始にはお正月料理を食べることに慣れている(ここ数年我が家ではおせち料理は用意していないけれど、お雑煮は作っているし、お餅も食べたりする)。それだけでも、食べ物という点では結構盛り沢山だ。

そんな慣れ親しんだ日本の年末年始の習慣をわざわざ飛び越えて(もしくはそれにプラスして)フランスの習慣の一つであるガレット・デ・ロワを購入することに躊躇してしまった。まじめかよ、という感じだけど、慣れないこと、やったことがないことをやることは、どんな事柄であってもその最初の一歩は非常にハードルが高い。

そうして、「昔食べて美味しかったあの味をもう一度味わいたい!…でも、食べ切れなさそうだし、結構お高いし、年末年始は他にも食べるもの色々あるのに、ちょっと贅沢すぎるよね…」と葛藤を繰り返すこと5年ほど(こうやって書き出すと、長っ!)

他人からしたら、「いや、確かにちょっとお値段するし、習慣にはないことかもしれないけど、5年も悩んでるんだったら、とっと買っちゃえばいいじゃん!」と思われるかもしれない。

でも私にとっては、"ちょっとしたこと"であると同時に、達成するには高いハードルを感じることだったのだ(何が人にとってハードル高いかって、本当に人それぞれだ…!)。

ということで、毎年購入への一歩が踏み出せずにいたのだけど…

でも今年、今でも覚えている1月5日、ふとした瞬間に、「あ、私、今年こそはガレット・デ・ロワを買おう!自分に買ってあげよう!」と思い立ったのだ。
(このキッカケについてはまた別途書きたい)

そして、思い立ったら即行動!ということで、その日のうちに駅前のパン屋さんに向かい…

念願のガレット・デ・ロワを購入してきた!!!

念願のガレット・デ・ロワ✨


こうやって改めて実物をマジマジと見つめると、まず見た目からしてかわいい。パイの表面の焼き柄が繊細で、上品感漂う。そして、私が購入したパン屋さんでは、ガレット・デ・ロワ専用の箱と袋が用意されていて、丁寧に梱包をしてくれた。そのデザインもまたかわいい。

そしておまけのフェーヴ(陶器の飾り)もかわいい。

切手型のフェーヴ✨


フェーヴは、フランスの昔からの習わしではパイの中に入っていると先ほど書いたけれど、最近は衛生上の対策ということで、パイとは別にして手渡してくれるお店が増えているとのことで、このお店もその形式をとっているようだ。切手型のデザインがオシャレで嬉しい。

そして、箱を開けた瞬間に漂ってきた香ばしいパイ生地とアーモンドの香り。なんとも幸せの香りだ。

いざいただいたそれは、もちろん味も美味しかった。学生時代に食べたあの最初の感動のままで、長年想像していた味わいの通りで、本当にとても美味しかった。なんとも満たされる感覚だった。一緒に食べた家族も、みんな気に入ってくれたようで(偏食次男の反応はまぁまぁだった 笑)、このおいしさを共有できたことがまた嬉しい。

5年間の思いも相まってなのか、あまりに美味しくて、すぐさま2ピース目を切り分けようとナイフを手にとった。

すると、2ピース目を切り分けている途中、ナイフを持った手に不思議な感触が走った。何かに引っかかったような感触があり、切り口を見てみると…

切り分けたガレット・デ・ロワの中に、何かが入っている!

2ピース目の中に…!



そこでふと、先ほどお店からお菓子と一緒に手渡された説明書のようなものに目をやると、どうやら陶器のフェーヴの代わりとして、アーモンドが一粒パイの中に入れ込まれているらしい。そのアーモンドにナイフが当たったのだ!(むしろ半分に切ってしまったけれど 笑)新年早々フェーヴに当たるなんて、なんだかラッキーな感じがして、ますます気分がいい。

そうして、念願のガレット・デ・ロワを無事満喫したのだった。

こんなに満たされるならもっと早くに買っておけばよかった…!と思わなくもないのだけれど、まぁ、私にとっては、今がタイミングだったのだろうとも思う。

…と、きれいにまとめてしまいたくなるのだけれど、まとめてしまってもいいのだけれど…正直、一方で、やっぱりやりたいこと、気になること、惹かれることがあるなら、それは我慢せずに、できるだけ早くやってあげたほうがいい!と改めて思ったところはある。

今回の私の件も、
お菓子を買う買わないという、
"ちょっとしたこと"ではあるのだけれど…

でも私はこの5年間、
ずっとこのお菓子へ思いを馳せてきて
(1年中それについて
考えているわけではないけれど、
それでも1年に1回正月時×5年!)

今すぐやらないからといって、
生活に支障が出ることではないし、
ものすごく困ったり、
苦しむことでもないのだけれど。

本当に、"ちょっとしたこと"だけれど。

でも、
その"ちょっとしたこと"を
ふと思い出すたびに、
ちょっとだけチクッとしたり、
モヤッとしたりする自分がいる。

その瞬間は、
その"ちょっとしたこと"を
やりたいのにやらない(やれない)自分に直面する。

それは一瞬のことだけれど、
でもその一瞬も重なっていけば、
「自分の願いを叶えてあげない自分」が
ひっそりこっそり
積み重なっていったりする。

それはやっぱりなんだか、
悲しいな、って、
寂しいな、って、
思ったのです…。

だからやっぱり、
私も含めて、
目の前の"ちょっとしたこと"も
軽くあしらわずに、
やりたいことや叶えたいことは、
どんどん叶えていってあげたほうがいい、
と今回改めて思った。

でも、
多分こういう"ちょっとしたこと"って、
"ちょっとしたこと"だからこそ、
見逃せちゃったりする。

他人からしたら
「なんでそんなことで悩むの?」みたいな
ことだったりもして。

でも、
その"ちょっとしたこと"は、
どんな内容でも、
どんなに小さな事柄でも、
大事な自分の願いだから。

一気に無理しなくてもいいけれど、
実は気になっている
"ちょっとしたこと"、
実はやってみたい
"ちょっとしたこと"がある人は、
ぜひやってあげてほしいなと、
思ったのだ。

そういった”ちょっとしたこと”を
叶えてあげる自分は、
いずれもっと大きな願いを叶える自分にも
繋がっていくと、
そう思うから。

5年間ガレット・デ・ロワに
想いを馳せてきて、
やっとこさその願いを叶えた私からの、
同じように”ちょっとしたこと”に
躊躇する人への
エールというか、
励ましというか、
一緒に頑張ろうぜ、というか、
そんな今の私なのでした!

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