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【読書感想】「35歳からの反抗期入門」碇雪恵


2023年初読みは碇雪恵さんのリトルプレス。

表紙のデザインに味があって好き。


たしかTwitterでたまたま情報を見かけて、「35歳の反抗期入門」というタイトルに、「面白い!」となり。

さらには、自分の年齢が近いこと、著者のプロフィールを拝見したら、以前自分と同じ業種(出版取次)で働いていた経歴があるらしい、と、なんとなく共通点があって気になり。中身はエッセイ・日記ということしか前情報はないまま、気になって購入。

著者がもともとブログに書いていた記事のいくつかを編集、追記した一冊とのこと。なんだか懐かしい雰囲気の味のある表紙が素敵だ。

人と人との関係、コミュニケーション、社会で生きていくうえでのふとした疑問や感じる理不尽、フェミニズム、世間で起きることとそれに対する人々の反応から感じること…などなど。日常の中の様々なきっかけから、著者の感じたこと考えたことが、展開されていく。

120ページ、ページ数はそこまで多くないし、文章自体はとても読みやすいのだけど、中身の濃度が凄かった…!

一つ一つのエピソードに対する著者の熱量がすごい…というか、いや、むしろ熱ではなく、冷静に目の前の事柄に対して、とことん向き合い、考え、思いを巡らせ、深堀りする、という表現のほうが合っているかもしれない。

変に飾らず、とても「リアル」。

だからこそ、これは私の個人的な感覚なのだけれど、一つエピソードを読んでは、ふぅ…と一呼吸置いて、しばらく物思いにふけりたくなるような、そんな感じ。疲れるから、ということではなく、文章を読みながら、すごく「考えさせられる」から。

"著者はこの件に関してそう考えるのか。
なるほど。
私の場合はどうだろう。
そういえば私も○○な体験をしたことがある。
あのとき私はこう思った。
でも今思えば、
あれは△△だったかもしれない…"

…というように、著者の思考と紡ぎ出した文章が、いい意味で自分の中に染み入ってきて、自分の中のあのときやこのときの思考や心情を自然と刺激してきて、自分はどうだろうか、どうだったろうか、と振り返させる。目の前に綴られた言葉に強力な吸引力のようなものが、碇さんの文章にはあって。

目の前の事柄(読んでいる事柄)を他人事として片付けさせないエネルギーのようなものがある(それは逆に碇さん自身が目の前の事柄を他人事にせず向き合っている文章だからかなと思う)。

そして私の場合は、自分の感じたこと考えたことを普段からブログやnoteに書いているので、この碇さんの本を読んで受けた刺激、思い出したエピソードや改めて考えさせられたことなど、読みながら自分の中から湧き上がってきたことを、自分もまたメモしたり文章として書き出す、という作業にも繋がって。

一つエピソードを読んでは、考えて、書く、を繰り返していたおかげで、一冊読み終えるのに結構時間がかかってしまった!(でもこの部分は私の個人的な事情…!)

実際は、まずはただエッセイ本、日記本としてさらっと楽しむこともできると思う。

でも逆に、読みながらじっくり文章に浸りにいくのであれば、そこから派生する自分の感情や思考を観察するのも、この本を味わう方法として面白いのではないかと思う。

エッセイ本は、もちろんただ書かれている内容を楽しむのもいいのだけれど、小説と違って著者の心情や考えが直に記されているからこそ、ときにそれがすごく近しく感じられて、自分事として迫り来る感覚を味わえることも醍醐味であり面白さかなと思うので、その点でもすごく楽しませていただいた一冊だった。

文章のパワー、すごかったなぁ…!

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