中東カタールで、ビリヤニTシャツをまといビリヤニを食べる~W杯観戦記~
ペルシャ湾に囲まれた小さな国カタール。
裕福なイメージがあるこの国は、移民や出稼ぎ労働者が多く、その割合は人口の9割と言われています。
2022年12月、初めて中東の国カタールを旅しました。
ホテル入口で空港の保安検査のような手荷物検査があり、担当していた男性に話しかけられました。
「これは私の国の言葉です!なんて書いてあるか分かりますか?」
私が持っていたトートバッグに書かれた文字を指しながら、祖国の言葉だと言い、
「ビリヤニ欲しいと書いてあるよ」
と教えてくれました。
ベンガル語が母国語だと教えてくれた彼も、カタールで働く外国人の一人で、懐かしい文字を目にして思わず声をかけてくれたのかもしれません。
カタールを訪れた理由
旅の目的は、4年に一度の祭典、サッカーワールドカップを観戦するためでした。
ワールドカップが中東で開催されるのは初めてで、冬季に開催されるのも初めてでした。
そして、もうひとつ、ひそかに楽しみにしていたのがビリヤニです。
カタールにはインドやパキスタンの出稼ぎ労働者が多いため、彼らの胃袋を支えるインド料理やパキスタン料理のお店が多数あるのです。
冒頭のビリヤニバッグは、ビリヤニを食べに行く時に使うため、日本から持参したもので、ホテルのロビーでリアクションをもらえたのは予想外でした。
ビリヤニとの出会い
2019年12月、勤務先近くのインドカレー屋さんで「限定10食」に惹かれ、ビリヤニがどんな料理かも知らずに注文したのが始まりでした。
第一印象は、ものすごいボリュームだな。
銀色の大きな皿に、カレーピラフのようなご飯が盛られ、骨付きチキンがたっぷりと添えられていました。チキンはスプーンで簡単にほぐせるくらいホロホロにやわらかく、ご飯はスパイシーながらやさしい味わいで、出会って10分で恋に落ちました。
「ナン食べ放題」に満足している場合じゃなかった!
ビリヤニとは、主にムスリム地域で食べられている炊き込みご飯です。
お米、スパイス、肉(豚肉以外)や魚介、野菜を入れて炊いたものですが、お店によっては炒めたものもあります。
盛り付けも、味付けも、お米も、具材も、作り方も様々で、調べれば調べるほど奥深く、食べれば食べるほどトリコになるのです。
カタール初日のチキンビリヤニ
夜22時に日本を出発し、朝5時にカタールに着きました。
日本から直行便で13時間、時差はマイナス6時間です。
宿にスーツケースを預け、バスに乗り、強めの日差しを浴びながらひたすら歩き、解体が始まろうとしていた「スタジアム974」を柵越しに眺め、タクシーでイスラムミュージアムに行こうとしたらナショナルミュージアムで降ろされ、強烈な冷房に震えながらミュージアムを見学し、気付いたらお昼を過ぎていました。
Google Mapで、ビリヤニを食べられる一番近い店を探しました。目指すは、ナショナルミュージアムから歩いて10分程の場所にあるレストラン「Bayt Sharq」です。
入り口で「予約はしていますか?」と聞かれ、ビリヤニを食べるのに予約をする発想がなく焦りましたが、席が空いていたようで案内してもらえました。
コンクリートの四角い建物の中は、緑が美しい中庭が広がり、パラソルがついたテーブルがゆったりとした間隔で配置されていました。ワールドカップ観戦用の大きなモニターが設置され、各国の旗も飾られていました。
素敵!
雰囲気が好き!
QRコードを読み込みメニューを拝見。アラビア語は全く理解できませんが、写真付きなのでなんとか選べそうです。
悩む。
どれにしようか悩む。
だって、思っていたより高い。
チキンビリヤニが約5,000円?!
鍋のような器に入っているけれど2人分なのかしら?
周りのテーブルを見渡すと、まあまあボリュームがありそうだし、値段も高いので2人でシェアすることにしました。他にサモサとフルーツジュースも注文。
注文し終わってから気付いたのですが、英語版メニューもありました。
木陰に座り、半袖でジュースを飲んでいると、師走だということを忘れそうです。
しばらくして運ばれてきたのは……、気品あふれるチキンビリヤニ!!!
これまで出会ったビリヤニとはちょっと違います。
横から見るとこんな感じです。
カレールーのようなソースがかけられていて、カシューナッツ、花の形にカットした人参も添えられています。スプーンで掘ると、チキンとご飯がぎっしり詰まっていました。
お店の雰囲気と値段がそう感じさせるのか、上品な味わいです。
ご飯はさっぱりめで、カレールーとのバランスが絶妙。一人で鍋全部食べられそうなくらい美味しいビリヤニでした。
そもそも一人分だったのかも……。
他の人が食べているお料理も美味しそうだったな。
夜は、ルサイル・スタジアムで、準々決勝オランダvsアルゼンチンを観戦。メッシのゴールに、乱闘、乱入、延長、PKと見どころ満載の試合で、アルゼンチンがベスト4に進出しました。
今日もやっぱりチキンビリヤニ
灰色の空。風も強く寒いです。
日本を出発する時に着ていた厚手の上着が活躍するとは思ってもいませんでした。
向かうのは、宿泊先のアパートから歩いて10分ほどの「Lahore Biryani Restaurant 」です。Google Mapで「ビリヤニ」と検索してヒットした一番近いお店を選びました。朝5時から23時まで営業しているお店です。
早朝からビリヤニを食べる人がいるってこと?
「ビリヤニTシャツ」を着て、「ビリヤニバッグ」を持って、いざ出発!
昨日のお店とは対象的で、間口が狭く小さなお店でした。ちょうどお昼だったので満席で、お客さんは100%地元民という感じです。
「2階へどうぞ!」
店員さんがすぐに案内してくれました。
観光客が珍しいのか、ビリヤニTシャツが素敵すぎるからか、皆が注目するのでビリヤニバッグを見せると、店員さんもお客さんも笑ってくれました。
みんなを笑顔にできて幸せ。
街の外れにある小さな店でも、メニューは写真付きデジタルだし、店員さんは英語が話せるし、カタールはビリヤニ食べ歩きの穴場なのかもしれません。
マトンと迷ったけれど、チキンビリヤニを注文。辛さを選べたので、中ぐらいの辛さをお願いしました。
しばらくして、大盛のビリヤニが出てきました。量が多いのは万国共通のようです。
プラスチックのスプーンで、ひとくち頬張る。ものすごくスパイシー。というか辛すぎる。
大きめのホクホクしたジャガイモが入っていて、辛みを和らげてくれます。日本のジャガイモと違い甘みが強いように感じます。スパイシーなご飯にほんのり甘めのジャガイモは、考えられたバランスなんだと気付きました。
それにしても、ビリヤニのチキンはどうしてこんなに美味しいんだろう。
店員さんに、ビリヤニTシャツとビリヤニバッグの記念撮影を求められ、OKしたら、「デザート食べる?」と冷蔵庫からプラスチックの容器に入ったものを3種類持ってきてくれました。
ヨーグルト風の何か、フルーツのコンポート、もう一つは、どう見てもコールスローサラダ。
ヨーグルト風の何かを選びました。懐かしいような、初めて食べるような、そんな味わいでした。
謎のデザートを食べながら、急に不安になってきました。
このお店、現金払いのみかも……。
「いくら持ってる?」
「30カタールリヤル(日本円で約1,200円)」
「絶対足りないよ!」
そもそもメニューを選ぶ時に値段を見なかったし、デザートはサービスなのか、請求されるのかも分かりません。
そういえば最初に出てきたペットボトルの水は無料?
まさか水道水じゃないよね!
気になることだらけです。
恐る恐るレジに向かい、運命のお会計タイム。
……。
現金足りた!!!
想像以上に安かった!!!
ふらっと入って、美味しいと感じるお店。誰かにおススメされて期待して行くとがっかりするかもしれないお店。近所にあったら頻繁に通うであろうお店。そんなお店でした。
夜は、アル・トゥマーマ・スタジアムで、準々決勝モロッコvsポルトガルを観戦。モロッコが1-0で勝利しました。
これもビリヤニ?
ホテルのフロント横に、次から次へと人がやってくる人気のテイクアウト専用コーナーがありました。
旅の最終日、外に行くのが面倒になり買ってきた夕飯です。
ビリヤニ風ライスと、フィッシュフライ、サラダ、ラタトゥイユみたいな煮込み、オレンジジュース、プリンがついて約800円。
茶色い食事は見た目に反して美味しい!
今回の旅で食べたビリヤニのお店は、インド料理店なのか、パキスタン料理店なのか、はたまたバングラデシュ料理店なのか、私には区別がつきません。
何料理か区別して評価する必要はなく、美味しいものを食べて幸せな気分になれたのなら、それでいいのだと思います。
国籍、人種、性別、職業での区別や差別は要らないと感じているのと重なる気がしました。
ワールドカップ開催をきっかけに、カタールはどんなふうに変わっていくのかな。
いつか、またサッカー観戦とビリヤニ探検の旅で訪れたい場所です。
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