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統合失調症の外国人の彼と私の恋愛:ともに暮らす中で見えてきたこと

こうしてシーラと一緒になった私。

統合失調症の症状と直結するのかはよくわかりませんが、
彼と暮らしながら見えてきた特徴についてお話してみようと思います。

まず、
彼の決断と行動までの時間のスピードがものすごく速いことです。

はじめ私が住み始めた時は、5名の女子ルームメートと一緒でしたが、
彼は自分の部屋にある2つのベットを繋げて無理やりダブルベットにして、
1人ルームメートがいるのもお構いなしでここに引っ越して来なよ。

と言ってきて、もう部屋できてるかという事になり、
別の男子生徒4人と私の不思議なルームメート生活が始まりました。

次に、彼はとにかく落ち着きがありません。
シーラは毎朝、起きたら何かの錠剤を飲んで、寮と直結している大学の授業に向かいます。
授業が終わればすぐに部屋に戻ってきたり、何コマかこなして戻ってきたり、しばらく戻ってこなかったりします。
授業がなくても部屋にいたかと思えば、突如消えたりしていたのですが、当時あまり携帯のメールでどこにいるのか?など聞く習慣がなくて、毎回どのタイミングで彼が部屋に戻ってくるのかは、全く予想がつきませんでした。

ということで、2人きりで過ごせる時間は平日においては、ほとんどなかったように記憶しています。寮生活とはそういうものなのかもしれませんが、朝から部屋に友達が訪れたり、彼が出かけたり、その繰り返しが深夜まで続きました。

慌ただしい寮生活の中、シーラは夕方になるとさらに一錠を飲みます。
そうすると、ゆっくりになります。
彼にとって薬がとても近い存在にありました。聞いたところによると、18歳から服用を始めたらしいです。精神安定の薬だとは聞いていましたが、そんな薬だったのかは知ることはありませんでした。彼がその錠剤の存在に興味を持って、薬を多めに飲んでハイ状態になりたいために他の寮の生徒が訪ねて来ることもありました。

その様子を見ながら、私ができることは何か考えて、勇気を出して薬剤師である彼の姉に連絡をして、
『今服用している錠剤を彼が飲むと、意識がもうろうとして辛そうだからもう少し弱いものか、別の薬にすることはできないか』
と、話をしてみました。
それから実際、薬の内容が変わったのかは分かりませんが、少なくとも意識が朦朧として階段に座り込んだりすることはなくなりました。

そんな日常の中にも、シーラは守り続けているものがありました。それは部屋が片付いていることと、料理です。

ハンガリーの学生は週末に実家に帰って、戻る時に大量のおかずなどを持ってきます。もちろんシーラも実家に帰ると同じように持ってきますが、調理師免許を持っていることもあって、買い出しから下ごしらえ、最後までしっかりと料理をします。
色々と出歩いて夜遅く帰ってきたかと思えば、急に早朝から寮の自分の部屋の大掃除を始めたりしたりするのです。
その時の彼は目は決まってキラキラしているのです。

彼の行動と病の間に、どれくらい作用しているのか、私が知る由はありません。シーラの日常にとって、私がどのくらいの存在だったのかを感じさせないほど、彼は刹那の中に生きていました。

まだハンガリー語がうまく話せない私にとって、彼の存在は大きく、私の拠り所になっていたのは間違いありませんでした。でも、当時の彼は21歳。ましてや、人生で初めての彼女が私で、言語が通じなくて、文化も違うとなれば、思いがけない苦労が次々と押し寄せてきていたでしょう。

なぜ私といようと思ったのか、ずっと私は理由が見つりませんでした。

そして
その答えは、再会する12年後にやっと知ることになるのでした。


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