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感想『此の世の果ての殺人』著作:荒木あかね

 本作品は、第68回江戸川乱歩賞(江戸川乱歩の寄付を基金として、日本推理作家協会により、探偵小説を奨励するために制定された文学賞)受賞作であるが、驚くべきは受賞者の年齢で、乱歩賞史上最年少の23歳の著者による本格的なミステリである。


あらすじ

 小惑星「テロス」が日本に衝突することが発表され、世界は大混乱に陥った。そんなパニックをよそに、小春は淡々とひとり太宰府で自動車の教習を受け続けている。小さな夢を叶えるために。年末、ある教習車のトランクを開けると、滅多刺しにされた女性の死体を発見する。教官で元刑事のイサガワとともに、地球最後の謎解きを始める。


感想

 終末の世界で展開されるミステリという設定の面白さもさることながら、その世界観をふんだんに利用する、ということをあえてせず、普通の世界かのように物語が進むところが面白い。
 数日後に終末が迫っている世界なら、殺人が起きようと、誰もいちいち捜査しようなどとは思わないだろう。
 しかし、そんな世界においても、不正義を許さない元刑事イサガワの、強すぎる正義感が暴走していく。巻き込まれる形でありながらも、主体的に事件を追うことにした主人公小春と、刑務所を脱走した兄とそれを手引きした弟のコンビ、いつのまにか小春の家にいた少女という、キャラの立ったメンバーが集まっていき、真相へと迫っていく。
 事件が繋がっていくダイナミズム、終盤にいくにつれて増していく緊迫感は、しっかりと読者を引き込む筆力を感じさせ、細かい違和感などは問題にならないほどで、最後まで一気に読んでしまった。
 23歳でこれほど素晴らしい本格ミステリを書かれる筆者は、今後のミステリ界の牽引役になることに疑いなし。


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