私の住みたい街
もし、どこにでも住めるとしたら…
そんな問いかけに、ふと海辺の美しい街が浮かんできた。木立を抜けてくる潮風が陽の光とダンスしている…ハンモックが揺れ、ヨットの白い帆がまぶしい…あの街に住めたら素敵かもしれない。
ハンモックに身を沈め、ゆらゆら揺れてみる…揺れながら…むしょうに虚しくもなる。心を開いて一緒に語り合う友がいなければ、素敵な街を満喫することもできない。
やっぱり寂しい…
一緒にお茶の時間を楽しんだり、夕暮れ時、1日のちょっとしたことをつぶやきあう友だちがいる街がやっぱり居心地いいかな。
散歩の途中、ばったり出会えたり、家の前を通ると、窓辺に姿をみかけたり…偶然会えることがいつも嬉しい〝心の友〟がいるなら、どんな街だって楽しい。
素敵な街を探すことよりも、〝心の友〟を見出すことはずっと難しい…よね。
そう… どこでも住めるとしたら、〝心の友〟がいる街かもしれない。
一緒にいるだけで、心が解き放され、幸せな気持ちになる…
ダメじゃん…そんな友だちがいるわけでもない…しょんぼり…
友の目に映っている〝私〟と、私の目に映る〝友〟…どちらも大好きなら、きっとどこだって!居心地がいいはず…だけど…
〝青い天使〟…シャガールの絵をモチーフにしたマグネット、その青色に引き込まれて、覗きこむ…天使がいるこの場所には花の香りと愛が…ふわふわ漂っていそう…もし、ここにいたら、気持ちよく、ゆうゆうと幸せに呼吸するだろう…
どこでも住めるとしたら、
お気に入りの絵画のなか…
大好きな物語のなか…
が…いいかも。
でも、その絵を描いた画家や物語を紡いだ作家が住んでいる街がもっといいよね。まだ無名の時代、彼らがすごい作品を生み出すなんて、まだ誰も知らなくて、懸命に創作を続けている場所、その近くにさりげなく住めたら、もっと楽しい!
彼らの創作活動をまぶしく見守り、何気なく話をするかもしれない。
そのうち顔見知りになって、さりげなく微笑んで挨拶するかもしれない。
なんだか…とても気があって、仲よしになるかもしれない。
最初の熱烈なファンになれるかもしれない。
想像するだけでワクワクするから、とりあえず!楽しさだけ先取りしたけど…メタバースならリアルに!もっと味わえるかもしれない。メタバースのそんな街に住めるとしたら素敵だ!ささやかな交流を感じ、素晴らしい気分を味わうことができるのかもしれない。
〝青い天使〟を描いたシャガールが23歳でやってきた頃のパリ、画家たちから無視され、孤独な日々を過ごす街角をさりげなく、日々の散歩で通りかかるのはどうだろう?
キュビズム全盛の街で、まだ詩人たちがが注目しはじめる前に、心のなかから感情があふれ出すシャガールの絵にうっとりする…
「彼の絵は愛を歌っている!」
「シャガールの絵は愛の詩」
シャガールの絵の素晴らしさをいたるところでしゃべりまくる…カフェに通って、遅くまで、キュビストとは真逆だと、シャガールの絵を論じたり、感想を詩人たちと語りあう…どんなに楽しいだろう…ね!
本棚を見るとお気に入りのファンタジーが並んでいる。本の表紙を見ているだけでもちょっとだけ気分が良くなる効果がある。眠れない夜には「はてしない物語」を読む…
ミヒャエル・エンデが「ジム・ボタンの機関車大旅行」を執筆していたのはミュンヘンだろうか… 母との生活をなんとか支えるために物語を書くことにするなんて!最高の発想がいつもできる人のような気がする。そんな彼が暮らしている街に住みたい。
ナチスが統治する時代、大胆にも召集令状を破り捨て逃亡したことやレジスタンス運動に加わり、伝令として大活躍した思い出もジム・ボタンの中には息づいている。
「MOMO」が世に出るのは、ずっと先だけれど…エンデとどこかで出会って、話しかけたら、きっと応えてくれそうな気がする。
「この頃は忙しそうにしてる人ばかりだね。楽しく働いてる人はどんどん消えていくね。」
「ニッコリあいさつする時間はムダで無意味なんだって…」
「時間を貯蓄することができるってふれ回ってる人たちがいるよ。」
「灰色で無機質な街がどんどん増えていくのかな…」
きっと、大の仲良しになって、一緒に歌いながら美味しいビールを飲めるかも…ビールの泡まで生き返って踊りだす!楽しい場所…どこでも住めるなら、私が住みたいのはこんな場所かな!
現実の居場所と〝こころの居場所〟は違っていていいし、やっぱり違うものかもしれない。
現実に住んでるのはちょっぴりがっかりなホコリっぽい街で、実際に出会う人々はみんな灰色で無機質な目をしていたとしても、こころの中に幸せな居場所があったら、孤独ではないし、もうしばらく生きていたくなる。
〝こころの居場所〟は自分の中にひっそりあってくれるだけでいいけれど、職業とか、住んでる場所とか、年齢とか、家族構成とか…外側から出会っていく日常ではない、内側のこころの居場所で出会える世界があったら、おもしろい…メタバースで名声や社会的な評価から自由なお互いの作品に出会えたら…目が覚めるような可能性にドキドキしてしまう。
現実では叶わない世界、理想の街、出会いたい人がすぐ近くにいて、心を通わせる可能性がある街をメタバースで実現することができるとしたら、その街はかけがえがない生活の場になるのかもしれない。
摩訶不思議かもしれないけれど、私は魔女のように微笑んで…言うのかもしれない。
「現実だけで生きてるなんて、どんなにつまらないでしょうね…」
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