読書感想:R帝国

R帝国、中古の文庫本をポチった。
好きな作家の一人、中村文則の作品。
この方の本読むのは累計9冊目。

あらすじ(裏表紙の紹介文を借用)

近未来の島国・R帝国。
人々は人工知能搭載型携帯電話・HP(ヒューマンフォン)の画面を常に見ながら生活している。
ある日、矢崎はR帝国が隣国と戦争を始めたことを知る。
だが、何かがおかしい。
国家を支配する絶対的な存在『党』と謎の組織『L』。
この国の運命の先にあるのは、幸福か絶望か。
やがて物語は世界の真実にたどり着く。


架空の日本ぽい世界を舞台に、政治とメディア腐敗、先進国や上級国民の見えざる搾取、SNSと承認欲求、スマホ依存、ネットでの誹謗中傷と快楽、、これらを風刺した内容。
また、人間の我が身可愛さ、身勝手さ、劣等感と優越感、流されやすさ、脆さ、愚かさ、攻撃性、狂気、、、人間の闇部分を踏み込んで直視させられる、ダークでヘビーで中々やばいエンタメ作品であった。

私の好きな中村文則の本は『1人の人間の内面、闇の部分、狂気に焦点を当てたシンプル目なストーリー』であり、『教団X』は自分の中で詰まりすぎ?重すぎ?でイマイチだった。
本書は複数テーマに、ヘビーで暗くて救われない話なのだが、テンポ良く読みやすい、更にパンチの聞いた重い言葉から目が離せなくなり、どんどん中毒度が増して一気に読んだ。
そんな感じだった。

とにかく超面白かった。
この体験は、小説以外ではなかなか難しいと思う。





さて、ここからはネタバレってわけでもないけど、私の心をえぐった作中のワードをいくつかご紹介する。




幸福とは閉鎖である。
幸福とは、世界にあふれる飢えや貧困を無視し、運の良かった者たちだけが享受できる閉鎖された空間である。貧困者たちからその利益を強奪してまで生きる価値はこの世界にあるのだろうか。
戦争をしなくても我々が貧国からさまざまに搾取しているのを忘れてはならない。
我々は様々に巧妙に他国から搾取しながら、国内で愛や友情や夢を語っている。
幸福に生きることと、正しく生きることは違う。
人々が欲しいのは、真実ではなく半径5メートルの幸福なのだ。


いやー。

刺さる刺さる。

自分が直接的な搾取者でなくとも、恐らく多くの事で間接的に関わっている。
それは知らないだけなのか。
都合の悪い事実から目を背けているのか。

人は、知ってる隣人には優しくても、知らない他人には恐ろしく冷たい。
貧困国の人はどこか可哀そうと思いつつ、でも自分たちの些細な幸せな気持ちに水を差したくないし。
彼らと自分たちを比較することでなけなしの優越感を得れる存在だし。
テレビの向こうで見る人は、自分の欲求をインスタントに満たす対象になる。
人柄も知らないのに勝手に、馬鹿にしたりネットで攻撃したり。

劣等感の強い社会的な弱者が、更に弱い自分でない何かをたたく。

自分の頭で考えて言葉を発しているようで、スマホやメディアに依存して扇動されている。裏には政府の介入、印象操作がある。(のかもしれない)

比較的まともな人は、危険に晒されたくないから、自分の関係ないことには基本ダンマリ傍観。


、、、こんなことを書いているうちに、私も、『何かを暴いている感』『自分は知っている優越感』という快楽に浸っているのかもしれない、、具体性のない誰かを標的にして、、
なんて思ってきて永遠ループになりそう(笑)


本書はフィクションでエンタメでありつつ、えぐいほどリアルで現実とリンクする部分が多く、読み終わった後も、自分の生活に良くも悪くも影響を与え兼ねない。
とにかくすごい本でした。

『教団X』も再チャレンジしてみようかな。

おわり。

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