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雨の記憶 page5 section 2−1
7月中旬になった。
あれからも何度か深川さんは店に来た。
相変わらず、大した話はできてないが、ちょくちょく注文をもらって、届けては少し勉強を教え、マスターも気を使ってなのか頻繁に休憩をくれるようになり、少し距離が縮まったと思っていた。
それが1週間ほど、日程で言うとテスト最終日の前日まで続いた。
そんな日々を過ごして、ある晩に家で疑問が頭に浮かんだ。
それまで浮かばなかったのも不思議な
雨の記憶 page4
翌日も雨だった。
もう最近は暑くなってきて、梅雨明けが近づいてきた。
俺は基本週4でシフトに入っていて、この頃は出勤日のほとんどが雨で、店に行く時は地獄だった。
でも、店に入ってしまえば、除湿され涼しい空間に癒され、何より雨の日は彼女が来るのでなんやかんや楽しみだった。
マスターも「雨の中ご苦労様、これ私からのまかない。今日もよろしくね」とアイス珈琲をくれて少し一息ついてからバイトを始め
雨の記憶 page3
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彼女が来店して30分くらい経った。
今日も他にお客さんが来る気配はなく、彼女と俺、二人だけの空間はしばらく変わりそうにない。
落ち着いた空間を背に、彼女が頼んだ当店のオリジナルブレンド抽出し、デザートの甘さ控えめなショコラケーキを用意する。
そして珈琲が出来上がる間は、カウンターから彼女を眺める。
もちろん、さりげなくだが。
小さなクラシックが流れる中、彼女のペンはスラスラ
雨の記憶 page2
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半月ほど経った雨の日、彼女はまたきた。
今日は、普段いるマスターが用があるというのでお店を任されている。
ところで、なぜ、いつも一人なのかと不思議に思うかもしれない。
うちは、普段からお客が少ない個人経営なので、いてもあと一人、雨の日はマスターと俺1人でも回せる。
この喫茶店に来て彼女は普段、読書の時もあれば、スマホをいじっていたり、居眠りしていたり、自由に過ごしてもらえてい