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コトバは幸せを運んでくるものなのか、悲しみを連れてくるものなのか。

昔から言葉が苦手だ。
思ったことが思ったように伝わらない。
大切にしていることほど
口に出したとたん陳腐なものに変わってしまって
がっかりしてしまう。
それはただ自分に表す技術が足りてないだけかもしれない。
体感できれば満足だから
味わい尽くしたらそのあとの結果はどうでもよかったりする。
言葉は便利だけど偽れるものだから
言葉を介さないコミュニケーションの方がわたしにはわかりやすい。


コトバは好きじゃないのに
なぜか本屋は好きで何時間でも居られる。
きのう最高にワクワクする本との出会いがあった。
しっとりすべすべとしていて、それでいて温かみのあるその本は
さまざまな物語の一部が集められたものだった。

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はじめに

いま、わたしたちの世界は緊密につながり合っていて、じぶんの気持ちや、毎日がすばらしかったりつまらなかったり、といったことを伝える手段をいろいろ持っています。でも、コミュニケーションのスピードや頻度の高さはつねに誤解をうむ余地にもなり、わたしたちは今までになく、翻訳のなかで迷子になっています。頻繁にすばやくコミュニケーションをすることはできても、言葉の解釈や、そこにこめられた感情や要望などのギャップをうめることは、そう簡単にできないのです。

わたしたちは、それぞれ異なる個人的な経験を自分らしく表現したいし、自分をほかの人と区別したいと思っています。でも、それと同時に、わらしたちはみんな、同じ「素材」でできています。わたしたちは、それぞれほとんど同じように笑ったり泣いたりするし、言葉をおぼえては忘れ、自分たちと異なる文化の人々と出会って、それでも、彼らの暮らしを理解しています。わたしたちが相手を正確に理解するのを助けてくれるし、文化の違いから生じる問題を解決し、境界をこえさせてくれるのです。


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wABI-SABI
生と死の自然なサイクルを受けいれ、不完全さの中にある美を見出すこと。

仏教の教えがルーツにある日本のこの考え方は、
不完全で未完成であるものに美を見いだす感性です。
うつろいと非対称性をくらしのなかに受け入れるとき、わたしたちはつつましく、満たされた存在になりえます。


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MAMIHLAPINATAPAI
同じことを望んだり考えたりしている2人の間で、何も言わずにお互い了解していること。(2人とも言葉にしたいと思っていない)

書きつづるのもむずかしい語ですが、それが、言葉の複雑な意味をいいぐあいに視覚化しています。
ヤガン語は、チリのティエラ・デル・フエゴの近辺にくらす原住民の言語。


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GEZELLIG
単に居心地よいだけでなくて、ポジティブであたたかい感情。物理的に快いという以上の『心』が快い感覚。たとえば、愛する人と共に時をすごすような。

どのオランダ人にたずねても、みんなgezelligについて語ってくれます。
あたたかく、まるで家族のように人をむかえ入れ、たのしい会話やハグでリラックスさせてくれる文化が、そこに現れています。


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KILIG
おなかの中に蝶が舞っている気分。たいてい、ロマンチックなことや、すてきなことが起きたときに感じる。

きっとあなたもご存じでしょう。
ひとたびこの気分になると、まともにものが考えられず、どんなことにもほほえんでしまうし、胃の奥のほうからわくわく感がこみあげてきます。


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訳者あとがき

 「翻訳できない世界のことば」というタイトルから、読者のみなさんは、最初どんな本を想像されたでしょうか?
原書のタイトルは「LOST  IN TRANSLATION」、「翻訳できない」は、厳密にいうと「りんご=apple」のように1語対1語で英語に翻訳できない、という意味です。
 その中には、日本語の「ボケっと」「積ん読」「木漏れ日」「わびさび」もふくまれていました。日本人には当たり前の言葉ですが、著者のみずみずしい感性によって、それらの言葉の内包する意味の広がりやドラマ性に焦点が当てられています。
 日本語以外の言語の言葉についても、新鮮なおどろきによって、一つ一つがすくい上げられていることは、想像に難くありません。それぞれの言葉がまるで映画のワンシーンのように投げかけてきてくれる物語の切れ端を、読者のみなさんと共有できれば本望です。


読んでいる最中から絵が頭に浮かび、いままで自分の中で言葉にならなかった感情が、単語になっていることに驚いたとともに、存在していることにうれしさをおぼえた。
何か共通点がひとつでもあれば、それまでなんのつながりも感じなかったことが身近なものになっていく。
言葉においても、自分自身が使いたい言葉を知らなかっただけかもしれない。
ひとつの単語をきっかけにつながっていく、そんなつながりかたもあるのだと初めて知ることができた。


本には翻訳者の解釈と意図 (思い) がのる。
今回2冊のすてきな本に出会うことができた。
翻訳者からつながって本と出会っていく、そんな出会いもおもしろそうだ。


ものごとは変化し、
生れては滅ぶ。
そのあやうさを
おそれる必要はない。

老子 あるがままに生きる 安冨 歩訳から一部抜粋


人生の波乗りを楽しんでいきましょ。
では、よいお年を♪



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