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DXプランナー視点で読む、経済産業省「循環経済ビジョン2020」

2020年5月22日、経済産業省が「循環経済ビジョン2020」を取りまとめたものを発表しました。
https://www.meti.go.jp/press/2020/05/20200522004/20200522004.html


この「循環経済ビジョン2020」、さまざまな視点でとても多くの示唆に富んだ内容となっています。
DXプランナー、デジタルマーケティングの皆さんには必読必至です。

私なりの解説や意見をまぜていきたいと思います。

補: DXとはデジタルトランスフォーメーションを指します。DXを推進する役割の人物をここではDXプランナーとしています。DXプランナーはIoT、マーケティング、デジタルの経験と知見を備えかつ経営的・社会的な視点も必要とされる職種です。


●循環経済とは

経済産業省「循環経済ビジョン2020」より抜粋
• 線形経済:大量生産・大量消費・大量廃棄の一方通行
• 循環経済:あらゆる段階で資源の効率的・循環的な利用を図りつつ、付加価値の最大化を図る経済

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モノをつくって売るまで、廃棄するまでの動きを線形経済と呼び、循環経済はその名のとおり循環を指さします。言葉でいうと、リサイクルなど少々聞き慣れた言葉かもしれませんが、その本質的価値は今もいやこれからもっと重要になっていくでしょうね。


●循環経済への転換の必要性


経済産業省「循環経済ビジョン2020」より抜粋
・ 世界的な人口増加・経済成長に伴い、資源・エネルギー・食料需要の増大、廃棄物量の増加、温暖化・海洋プラスチックをはじめとする環境問題の深刻化はティッピングポイントを迎えつつあり、大量生産・大量消費・大量廃棄型の線形経済モデルは、世界経済全体として早晩立ち行かなくなる畏れ。
・短期的利益と物質的な豊かさの拡大を追求する成長モデルから脱却し、あらゆる経済活動において資源投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化等を通じ付加価値の最大化を図る循環型の経済社会活動(循環経済)により、中長期的に筋肉質な成長を目指す必要。
・循環経済への移行の鍵は、デジタル技術の発展と市場・社会からの環境配慮要請の高まり。これを新たなドライバーに、循環型の経済活動へと転換を図ることで、地球環境の保全に貢献しつつ、我が国産業の中長期的な
競争力の強化につなげることを目指す(環境と成長の好循環) 。

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SDGsやESG、フィデューシャリー・デューティー、インパクト投資などに代表されるように社会は、利益追求型資本主義な考え方から共存共生的資本主義へ変化しはじめています。国が政府が法的な強制力を整備(ハードロー)し企業がその抜け道を探すことが影を潜め、法的な強制力がないにもかかわらず,経営戦略・事業戦略としての企業の自主的な取組を促進する動き(ソフトロー)が主役となりはじめています。
マーケティングの手法も、モノ訴求のバラマキ広告から、コト軸訴求の共感を得ることがマーケティング活用や企業ブランドにとっても重要に気づき、企業は情報発信の方向性を大きく変える必要がありますね。

●循環経済への転換に向けた対応の方向性

経済産業省「循環経済ビジョン2020」より抜粋
・ 循環性の高いビジネスモデルへの転換は、事業活動の持続可能性を高め、中長期的な競争力の確保にもつながるもの。あらゆる産業が、廃棄物・環境対策としての3Rの延長ではなく、「環境と成長の好循環」につ
なげる新たなビジネスチャンスと捉え、経営戦略・事業戦略として、ビジネスモデルの転換を図ることが重要。
・ 動脈産業のビジネスモデル転換を促す上で、関係主体(静脈産業、投資家、消費者)の役割が重要。

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製品のサプライチェーンを「動脈経済」にたとえるのに対して、産業廃棄物や使い終わった製品などをリサイクルしたり、負荷が少ない形で自然に戻したりする産業を「静脈経済」にたとえます。循環経済では動脈と静脈をバランスよく整えること。循環性の高いビジネスモデルへの転換は、事業活動の持続可能性を高め、中長期的な競争力の確保にもつながるもの。あらゆる産業が、廃棄物・環境対策としての3Rの延長ではなく、「環境と成長の好循環」につなげる新たなビジネスチャンスと捉え、経営戦略・事業戦略として、ビジネスモデルの転換を図ることが重要としています。

DXを考えるにおいて、どうしても動脈に焦点が行きがちではないでしょうか。このコロナショックでグローバリズムが逆回転を始めているようですがそれもサプライチェーンという動脈のレジリエンスにばかり注目しがちですね。
企業の未来像、社会の未来像をDX視点で考えるならば静脈をも俯瞰して検討する必要があります。
この着眼点は、IoTに強いIT部門、動脈に強いマーケティング部門にはもれぬける可能性が高い領域です。経営企画部門はこの領域をも意識しDXを検討することが求められますね。

この循環経済を「環境と成長の好循環」につなげる新たなビジネスチャンスと捉え、経営戦略・事業戦略として考える・・・・事業戦略を、戦術におとす場合は、AI/機械学習と、ブロックチェーンの要素が必須事項になります。

AI/機械学習は、新たな頭脳。人的作業効率を超える強力な武器になります。一方、ブロックチェーンは業務フローを効率的に実現していきます。ブロックチェーンのビジネスでの活用シーンを大別すると次の6つに収斂します。
・本人確認活用  複数企業横断利用を促す本人確認(KYC)
・電子契約活用  契約・決済を署名ベースで電子化
・トレーサビリティ活用 原材料・製造過程等の証明
・知財管理活用 知的財産権の権利関係を証明・透明化
・オープンデータ活用 ビッグデータ収集・活用プラットフォーム
・仮想通貨活用 コイン・ポイントの発行・送金・決済
この6つの活用シーンは業務遂行の上で作業負荷が高い業務、これをシステム化することで循環経済は回転しやすくなるでしょうね。


●この「循環経済ビジョン2020」で得られる示唆

この「循環経済ビジョン2020」、さまざまな視点でとても多くの示唆に富んだ内容となっています。DXプランナー、デジタルマーケティングの皆さんにとって得られる示唆は次の5つです。

1、貴社の目指すDX全体像のヒント
DXは未来像。点(課題)ではなく面(ビジネス未来像)を捉える必要がある。この循環経済は社会全体のプロセス全体のみならず、業種・一企業でも当てはめることができる。

2、コロナショックでサプライチェーン見直しをする好材料
コロナショックによりサプライチェーンの再構築・柔軟力強化が求められている。調達ー製造ー販売までの動脈サプライチェーンに注目しがちだが、静脈サプライチェーンの再構築・柔軟力強化も忘れてはならない。

3、SDGs/ESGへの貢献性
特に動脈産業(製造・小売など)は、廃棄段階まで含めたライフサイクル全体を考慮した循環性の高い製品・ビジネスモデルをデザインしていく必要がある =SDGs⑫「作る責任、使う責任」 投資家もそれを評価する時代=ESG

4、企業ブランド向上とデータ活用
ビジョンと現状の取組を日本国内に留まらず国際的にも積極的にコンテンツ発信を行う。コンテンツ閲覧者(投資家・ビジネス候補)を分析し、ときには連携していく企業姿勢は環境と成長の好循環を実現する企業として高評価を得る。人口減少からくる労働力不足解消や、海外労働者確保にもつながる。

5、AI/機械学習、ブロックチェーンなどの活用領域へのヒント
循環経済の実現に向けて単独企業活動からコンソーシアム活動にシフトしていく。ブロックチェーンが得意とするトレーサビリティや証明確認など利用範囲は広い。経済効率の面でAI・機械学習の活躍の場も多い。


「循環経済ビジョン2020」本誌の末尾にいい言葉で締めています。
「循環なき経済は罪悪であり、経済なき循環は夢物語である。」

まさにそのとおりです。
各企業でDXを検討している皆様、お忘れなきように。


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 数藤雅紀 suto.masanori@members.co.jp

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