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速いスパイクとサーブを打つには、ジャンプの最大筋力とスプリントの最大速度を高めよう

「バレーボールでは、『スパイク』と『サーブ』が一番多くの得点を生み出す」と言われています(Challoumas,2018)。

スパイクとサーブの強さは、身体的要因によって決まり、トレーニングを通してそれらの身体的要因を高めることが重要です。

バレーボールにおいて、筋力とパワーは、スパイクとサーブの球速にどの程度関係するかまでは明らかになっていません。

近年、筋肉の発揮するパフォーマンスを測定するため、「Force-Velocity Profile(F-V Profile)(力速度プロファイル)」という新しい試験手法が提案されています。

力速度プロファイルとは、重さの異なるバーベルなどを用いてバーベルを動かす速度を計測することで、その動作における理論上の①最大筋力(F0)、②最大速度(V0)、③最大パワー(Pmax)、④力速度直線を算出する手法です。
最適な力速度プロファイルは個々人に存在することが分かっており、個々人に合った最適なトレーニングプログラムを考えるのに役立ちます。

しかし、力速度プロファイルとスパイクとサーブの速度の関係性について調べた研究はこれまでありませんでした。

今回は、Baena-Rayaら(2021)が、ジャンプ、スプリント、ベンチプレススローの力速度プロファイルとスパイクとサーブの速度の関係性について調べた研究について紹介します。


◆スパイクとサーブ球速は、ジャンプの最大筋力、スプリントの最大速度が関係する

Rodrigeuzらは、22人の男性トッププロ選手
(年齢24.3±4.5歳、身長1.89±0.06m、体重86.3±8.6kg、プロ期間6.68±4.23年)に対して、下記①~④の実験を行いました。

①ジャンプ力測定
スミスマシンで10~70㎏のバーベルをかついでジャンプ。
重量毎のジャンプ高、バーベル重量・移動距離を測定。

②スプリント測定
30m走のタイムを測定。

③ベンチプレススロー測定
スミスマシンで14、30、50㎏のバーベルを使い、ベンチプレスの姿勢から胸を収縮させてできるだけ高く3回連続で投げる。一番高く投げられた記録を採用。

④スパイクとサーブの球速測定
3本ずつ全力でスパイクとサーブを3×3mのところ目掛けて打つ。一番速い球速を採用。

その後、力速度プロファイルと、スパイクとサーブの球速との相関関係を調べました。

その結果、ジャンプの最大筋力、スプリントの最大速度はスパイク速度とr≧0.8、サーブ速度とr≧0.7以上のかなり強い相関を見せました。
ベンチプレススローの最大筋力はサーブ速度とスパイク速度にr≧0.5の強い相関を見せました。

Rodrigeuzら(2022)より筆者作成


また、重回帰分析の結果、
ジャンプの最大筋力が1N/kg増えるごとにスパイクとサーブの球速が約2.0km/h速くなる
スプリントの最大速度が1m/s速くなるごとにスパイクの球速が約10km/h、サーブの球速が約12km/h速くなる
ベンチプレススローの最大筋力が1N/kg増えるごとにスパイクとサーブの球速が約約0.06km/h速くなる
ことを見出しました。

これらの説明変数を用いて、スパイクとサーブの球速の20~36%説明できると述べています。

最後にBaena-Raya らはトレーニング方法として、
・ジャンプの最大筋力を高めるため、1RMの80~90%の重さのスクワット
・スプリントの最大速度を高めるため、補助ありのカウンタームーブメントジャンプ
・腕の筋力と加速度を高めるため、1RMの60~80%の重さのベンチプレススローや床へのメディスンボール投げ
を提案していました。

今後バレーボールのトレーニングを考えるうえで、参考になれば幸いです。


◆参考文献

Challoumas D & Artemiou A(2018) Multivariate assessment of selected performance indicators in relation to the type and result of a typical set in men’s elite volleyball.

Baena-Raya et al.(2021) The force-velocity profile as determinant of spike and serve ball speed in top-level male volleyball players.

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