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#138:イギリスの北風と太陽

この前シャワーの時に1999年のイギリス滞在がフラッシュバックしてから、時々他のことも思い出すようになった。(シャワーの時↓)

イギリスの北風

滞在したのは9月で決して冬というわけではなかったが、まだ残暑という時期の日本から来るとマンチェスターは既に肌寒い季節だった。

たぶんそれだけではなく、どんよりと曇りがちな空や、英語も満足に話せないひ弱なアジア人として滞在した心細さも大いに影響していたと思う。

そして当時のイギリス北部の街並みにも明るさはなく、淡々と厳しい経済や生活を過ごしつつ、皮肉のひとつも口にしながら皆生きているという感じ。

いくつか旅した各都市ともに同じ空気感。そんな北風の吹く環境。

イギリスの太陽


一方で、(意外に思われる方もいるかもしれないが)イギリスの太陽だったのは、そこに住んでいる人たちの温かさだった。

イギリス人のステレオタイプとして、シニカルで暗い人が多い表現があるが個人的にあまりそういう印象はない。南国やアメリカ人のような突き抜けた陽気さはさすがにないが、現実世界で生き抜く知恵を持っているユーモアのある人たちが多かったように思う。

マンチェスター市内に向かうトラム(路面電車)でも、近郊の街を観光している時でも、見ず知らずのアジア人の私に話しかける地元の人たちがいた。穏やかに、時に明るく話しかけてくれた。

話としては、どこから来たのか?とか、昨日のフットボールがどうだとか、この街をどう思うか?とか、他愛のない話が多かったが、ほんの数分だけ、そういう話をするだけでじんわりと温まった。「じゃあ、最後にタバコを一本くれないか」と言われても、気持ちよく渡すことができたw

たとえ天気が良くなくても、経済が良くなくても、機嫌よく話しかけてくる人たちが居た。彼らはいわゆる親切な人というより、自分達の暮らしの中に街の人との会話が含まれているようだった。それは生活の知恵というか、決して状況が良くなくても楽しく生きる術かもしれない。イギリスの人たちは強かだなと感じた。

もちろんあまり見たことがないアジア人に警戒する人がいたり、あからさまに冷たくあしらわれることもまあそれなりにあったのだが、それが嫌になるほどではなかった。先に述べた味わい深い人たちに会ったおかげで、少し嫌なことがあった時でも、空に呪いの言葉を静かに吐いて収める術を学んだ。

当時得たこういう炭火のような緩やかな火種や知恵は、20年経過した今でも少し自分を温めてくれる。

2023年の日本

2023年1月の日本。
給与水準が30年上がっていないとか、生産性が高くないとか、もう先進国ではないとか。暗いニュースばかりに思えるが、視点を変えれば国として歳を重ねたということかもしれない。成長というより成熟のフェーズ。

(英国万歳とは思わないが)歳を重ねた国である、イギリスには見習うべきことが多いように思う。例えば、皆で単に暗くならず、北風にも流されない強さや明るさを一緒に分かち合えたらいいのに、とか。

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国の行く末は分からないが、自らの生活を振り返ってみても結局のところ「自分さえ良ければ」だけだと人生つまらない。(と漸く最近気づいた)

1日の中の僅かな時間、名も知らないどこかの誰かとでも他愛ない会話をすれば、そんな些細なことが生きる糧になるかもしれない。

40代を生き抜いていく上で、あの時のイギリスの経験が役立ちそうだ。

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