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湾岸線

潮風で錆びた煙突を背景に
湾岸線が北へ南へと流れてゆく
運河を吹き抜けるつよい風が雲の背中を押して
少し早い夏が訪れたような塊は作られる

私はテトラポッドの向こうから聴こえくる
協奏曲のリフレインに春の色を感じて
運河をゆく逞しい学生の握るオールが
風と風を縫い合わせる様に力強さを感じて

ただありのままに存在する
植物やアスファルト、落ちた葉と土壌
太陽のひかりは鮮やかに降り注ぎ
いつの間にか私は色彩の力強い世界にいる

遥か昔から
待ち焦がれていたはずの凪は
想像とはすこし形を変えて産まれたあと
肌に馴染んですっかり溶けていってしまった

見上げた空はとてもうすく
しかし成層圏まで抜けてしまうほどに青い
何十年前に生まれてよく知るこの街の
どの風景も新しく鮮やかに塗り替えられたよう

これまで窮屈であったわたしの殻
冷たい世界の輪郭
地層のように堆積していた時間もすっかり解けて
涙腺を通りあたたかく流れてゆく

(もうきっと春だよ)

いつからか放置されて流れっぱなしになっていた誰かの歌が
おなじフレーズを何度も何度も繰り返していた

I appreciate your brilliant photo,Pexels
https://pixabay.com/ja/users/pexels-2286921/

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