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CSRDとCSDDDってどう違うの?どう関係があるの?

昨日のnoteで採り上げた「ビジネスと人権」のハードロー化で、今、避けては通れない話題が、人権DD義務指令案(CSDDD)だそうです。

サステナビリティ分野にまだまだ素人な私は、この「CSDDD」という名前を見た時に素朴な疑問を2ついだいてしまいました。


①CSDDDってどう読むの?
②CSRDとCSDDDって名前が似てるけどどういう関係なの?


レベルが低くて恐縮ですが、本日のnoteはここからスタートして、CSDDDに関する素朴な疑問への回答をいくつかまとめていきたいと思います。



1.CSDDDってどう読むの?


どうやら「シーエストリプルディー」と読むようです。少なくとも私が先日聞いた講演では、弁護士の先生がそう発音しておられました。

ちなみに、書く時は「CS3D」と書くこともあるようです。
事例 ↓↓↓


2.CSRDとCSDDDって名前が似てるけどどういう関係なの?


この素朴な疑問への答え、見つけるのに結構時間がかかってしまいましたが、こちらの図が一番わかりやすいと私は思いました。

出典:日本シェアホルダーサービス/三菱UFJ信託銀行資料
なおこの図には「CSDD」とありますが現在では「CSDDD」が一般的


欧州委員会が 2018 年 3 月に発表した「持続可能な成長への資金提供に関する行動計画」には3つの分野があり、そのひとつである「透明性と長期志向の促進」の具体策(アクションプラン)が以下の2つだった。

  • 持続可能な開示と会計基準の策定

  • 持続可能なコーポレートガバナンス強化と長期志向の促進

この前者がCSRDであり、後者がCSDDDだということなのですね。


この図表だけではCSRDとCSDDDは別物のように見えますが、JBCE(在欧日系ビジネス協議会)の資料の説明を読むと、両者の関係がもう少し明確になるかと思います。

CSRDの開示要求事項においてDD(デューデリジェンス)プロセスの説明等が求められていることを踏まえ、別途議論が進められているCSDDD(Corporate Sustainability Due Diligence Directive) への対応と両にらみで検討を進めていくことが必要となる。

出典:JBCE「欧州CSR政策の動向-ブリュッセル効果と如何に向き合うか-」p.26  


3.で、結局CSDDDって何なの?


主に大企業に対して、自社の活動が人権と環境に及ぼす悪影響をデューデリジェンス(特定・予防・緩和)することを義務付けるものです。


なお、日経ESG ・12月号 p.46 には、CSDDDのポイントが次のようにまとめられていました。

■どんなルール?
・人権や環境に関するデューデリジェンスの実施を義務付け
・デューデリジェンスのプロセスを詳細に規定
・違反企業に対して罰金を含む効果的な制裁を科す

■対象企業は?

EU域内企業:
(1)従業員500人超、売上高1億5000万ユーロ超
(2)従業員250人超、売上高4000万ユーロ超かつその50%以上が高リスク業種(繊維、農林水産、鉱物など)

EU域外企業:
(1)域内の売上高1億5000万ユーロ超
(2)域内の売上高4000万ユーロ超かつその50%以上が高リスク業種(繊維、農林水産、鉱物など)


■いつから始まる?
2024年1月に発効し、26年1月から適用される可能性もある

■注意点は?
2024年1月から適用される企業サステナビリティ報告指令(CSRD)に基づき、先行してデューデリジェンスの実施に関する開示が必要

(注)上の表は、欧州委員会が2022年2月に公表した原案に基づいて作成

出典:日経ESG ・12月号 p.46


4.CSDDDを望んだのは誰?


望んだのは市民社会だけでなく、産業界(企業を含む)も、です。

市民社会が危惧していたのは、企業のボランタリーな取組のみでは進捗が遅れるしバラバラな対応となりがち(“Slow and uneven”)であること。

一方、産業界が危惧していたのは、こうした「バラバラ」な状況では取るべき責任も明確ではない上、不公平になる(=より厳しい取り組みを課されている国でビジネスをする企業は、そうでない企業よりもコスト等の面で不利になる)ということでした。

JBCE(在欧日系ビジネス協議会)の資料にて、CSDDD指令案発表前の各ステークホルダーの主張をご覧ください。

出典:JBCE「欧州CSR政策の動向-ブリュッセル効果と如何に向き合うか-」p.30

<ご参考>
なお、ALDI SÜD、ユニリーバ、MARS、イケア、アビバ・インベスターズ、エリクソン、ハパッグロイド、ノボ・ノルディスク、ボルトン・グループ、グローバル・ネットワーク・イニシアチブ(GNI)、欧州製薬団体連合会(EFPIA)、GLS銀行などの企業や団体が、CSDDDに対して(条件付ではありますが)賛同の意を発表しています。

(下の図をクリックすると原文が開きます)


5.決まっていること・未だ検討中のこと


このnote冒頭でご紹介した記事「Companies: Are You CS3D Ready?」(2023年11月5日公開)には、What Is Certain?/What Is Still Under Discussion? というタイトルでそれぞれのポイントがまとめられていましたので、ご紹介します。

(和訳はまだほぼ機械翻訳によるものですので、必要に応じて下記原文をご参照ください)


What Is Certain?(決まっていること)

1.CSDDD が採用されること
欧州議会、EU理事会、欧州委員会による2022年の立法優先事項の共同宣言と広く一般からの支持を考慮すると、この指令はおそらく2024年までに採択されるとのコンセンサスが得られている。指令が正式に採択されれば、EU加盟国は2年以内、2026年頃に国内法に移項することになる。

2.企業には人権および環境デュー・ディリジェンスの実施が義務付けられること
企業はコーポレート・ガバナンスを改善し、人権・環境リスクとその影響のリスク管理・軽減プロセスを企業戦略に統合する必要がある。これには主に、これらの影響を特定し、予防し、是正するための方針を確立し、プロセスを実施することが含まれる。


3.スコープには人権と環境への影響が含まれること

CSDDDの最終版では、企業は人権と環境への影響に関するデューデリジェンスを実施することが求められている。スコープはまだ明確に定義されていないものの(国際的に)認められた人権および環境規範(国際協定や条約、EU規制)に基づいている。したがってCSDDDでは、人権と環境への影響に全面的に対処するデューデリジェンス・プロセスと行動計画が期待されると考えられる。


4.対象には企業自身だけでなくサプライチェーンの事業も含まれること

3つの提案は、企業が自社の事業と子会社の事業についてデューデリジェンスを実施する必要性で一致している。ビジネス関係(サプライチェーンのみ、バリューチェーン全体、限定的なバリューチェーンなど)に関連する義務の範囲についてはまだ不明確な点があるとしても、義務が自社の活動や業務を超えて拡大し、パートナーを含むプロセスを(ある程度)予測しなければならないことは明らかである。

5.ステークホルダーの関与を高める必要があること
企業は、人権と環境デューデリジェンス・プロセスの設計と実施において、関連する利害関係者を関与させる必要がある。例えば、人権・環境デューディリジェンスの一環として、長期的なステークホルダーの参画を図り、実施する必要がある。

6.企業は救済へのアクセスを改善する必要があること
CS3Dには、企業行動による人権や環境への悪影響の影響を受けた人々の救済へのアクセスが含まれる。このため企業は、苦情処理および報復防止に関する方針、メカニズム、エスカレーション・プロセスを強化する必要がある。これに従わない企業は、強制措置の対象となる。CSDDDは、デューデリジェンス義務違反に起因する損害に対する企業の民事責任を確認する。また、加盟国は制裁を決定し執行する国内監督当局を指定する可能性が高いため、企業の実務に対する監視も強化される。また、企業の売上高に応じた罰金も科されることになる。


What Is Still Under Discussion?(未だ検討中のこと)


1.国際基準との整合性をどこまでとるか

最初の全体的な課題の一つは、将来的な CSDDD とデューディリジェンスに関する認知され た国際基準、すなわち国連グローバル・コンパクトや OECD ガイドラインとの整合性である。


2.人権や環境への悪影響の種類

この点は、デューデリジェンスで特定されるべき影響の範囲と、どの悪影響を優先させるべきかに関係する。今のところ、提案では、CSDDD の附属書にある人権と環境への悪影響のリストに言及しているが、ステークホルダーからはさらなる明確化が求められている。


3.金融セクターの参加

現在進行中の三者協議(トリローグ)では、CSDDDの範囲に金融サービスが含まれるかどうかは不透明。これまでのところ、3つの立場はすべて、金融機関がデューディリジェンスを実施すべき方法について、異なるとはいえ、一定の除外規定を設けている。


4.取締役の義務を含むか

デューディリジェンスを実施し、監督する取締役の善管注意義務の包含と、これらの義務がど のように定義されるべきかについては、不確実性がある。具体的には、取締役は、短期的、中期的、長期的に、持続可能性に関する事項の意思決定の結果を考慮しなければならないかどうかが議論されている。


5.将来的にCSDDDが、フランスやドイツなどの加盟国で採用されている既存の法律とどの程度相互作用するか

加盟国は、自国の国内規則とCSDDDを適応させなければならない。加盟国(フランスとドイツ)は、CSDDD のデューディリジェンス義務の範囲を「弱体化」させるとして非難されているとの報告がある。CSDDDの規定は、既存の国内規制よりも優先されるため、企業は、これらの国内規制を遵守する方法を予測すると同時に、CSDDDの義務を予測する必要がある。



続きはまた明日。
以上、サステナビリティ分野のnote更新1000日連続への挑戦・39日目(Day39) でした。

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