サステナビリティの法定開示なんて一過性のもんだよって言い張る上司を説得したいという社員さんのためにミニ勉強会をしたので目次を置いておきますね
1. サステナビリティ情報の法定開示(国内/これまで)
(1)コーポレート・ガバナンス報告書
2021年6月にコーポレートガバナンス・コード(CGコード)を改訂
↓上場企業はCGコードの改訂に対応したコーポレート・ガバナンス報告書(CG報告書)を2021年末までに提出
プライム市場上場企業はプライム市場向けの規定に対応したCG報告書を2022年4月4日以降開催の株主総会終了後に提出
サステナビリティに関するCGコードの改訂ポイントは:
(基本原則2考え方、補充原則2-3①、2-4①、3-1③、4-2②)スタンダード市場、プライム市場上場会社に適用される補充原則では、サステナビリティ課題への対応の検討、サステナビリティへの取り組みの開示、基本的方針の策定が求められている
気候変動リスクについては「TCFD提言又はそれと同等の枠組みに基づく」開示の量と質の充実を進めるべき旨が示されているが、実質はTCFD一択
(2)有価証券報告書
2023年1月に有価証券報告書(有報)での開示内容を定めた「企業内容等の開示に関する内閣府令」(開示府令)等が改正
→ 有報内でサステナビリティに関する情報開示がスタート
開示が求められた情報は3種類
①多様性に関する指標
(女性管理職比率、男性の育休取得率、男女間賃金格差)
②サステナビリティに関する「ガバナンス」「リスク管理」「戦略」「指標及び目標」
③人的資本に関する情報
(人材育成方針・社内環境整備方針と関連する指標・目標・実績)
2. サステナビリティ情報の法定開示(国内/これから)
(1)公表されている「ロードマップ」
金融庁は2022年12月に「我が国におけるサステナビリティ開示のロードマップ」を公表済
※その後アップデートされ、2023年12月14日 経団連 金融・資本市場委員会「今後の金融行政の方向性」に「2023年8月時点」のものが掲載されていました(下記)↓
ISSBは、国際会計基準(IFRS)財団が、2021年11月にイギリスで開催されたCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)にて設立を発表した組織
(2)「グローバルベースライン」
サステナビリティ開示基準乱立に終止符へ?
国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)は、COP26において資本市場向けのサステナビリティ開示の包括的なグローバルベースラインを開発するために設立
↓
- G20(主要20カ国)の首脳宣言で明確な支持を得ている
- 証券監督者国際機構(IOSCO)も同基準を承認する
(IOSCOは世界の証券監督当局や証券取引所などから成る組織)
ISSBは、2023年12月4日の国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)のファイナンス・デーにおいて、ISSBの気候関連基準の採用又は利用を推進することについて、400近い組織による賛同表明を得た旨の宣言を公表
(参考)https://jicpa.or.jp/specialized_field/ifrs/information/2023/20231211eai.html
TCFDを設立した金融安定理事会(FSB)は、企業開示のモニタリング機能をTCFDからISSBに移管し、TCFDを2024年度中に解散することを発表した。今後はISSBがTCFDに代わってサステナビリティ開示のグローバルベースラインを提供し、日本を始めとした各国の法定開示基準の土台となる(参考)
https://www.mizuho-rt.co.jp/publication/report/2023/issb2310.html
(3)地域別の法制化
欧州(EU)
CSRD(2024年1月1日~)
- EUが現行のNFRDの代わりに法的拘束力のあるCSRDを策定
- 日本企業のEU現地法人も適用対象となる可能性あり
- 企業に欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)に基づく報告を要請
- バリューチェーン全体の情報が必要
- ISSB基準との相互運用可能性(interoperability)も検討中
日本
ー 2024年3月中に草案発表予定(ISSB基準をベースに)
ー 2025年3月に最終化予定
→ 法定開示へ?
(4)コネクティビティ
ISSB基準が目指すところは
「財務諸表と同じ報告期間のサステナビリティ情報を同時に開示」
3. その他
法定開示ではないが、企業が実質的に「やらざるを得ない」もの
■CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)
CDP は、投資家、企業、国家、地域、都市が自らの環境影響を管理するためのグローバルな情報開示システムを運営している英国のNGO
投資家からの指名を受けた企業もしくは、時価総額等を基準に選定された企業に対して毎年質問書を送付(日本では2022年以降、対象が東証プライム上場企業全社へと拡大されている)
CDPが収集した企業データはスコアリングされ、主にESG投資を行う機関投資家にデータベースとして参照される
CDPの2024年の気候関連の質問書はISSB・S2ベースになるとのこと
■TNFD
わかりやすく言えばTNFDはTCFDの「自然版」
2023年9月に最終版公表
詳しくは下記記事などを参照
https://www.asahi.com/sdgs/article/15060909
https://www.dir.co.jp/report/consulting/sustainability/20231110_024072.html
今年1月のダボス会議で「TNFD Early Adopter」が発表された(日本は世界最多の80社)https://www.wwf.or.jp/activities/activity/5525.html
※TNFD Early Adopter:
2023年、2024年、あるいは2025年度の企業報告をTNFDに沿った形で開示する意向を登録した企業
■ESG評価機関
以上、サステナビリティ分野のnote更新1000日連続への挑戦・104日目(Day104)でした。それではまた明日。
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