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サステナブルシーフードの協会が、「おさかな小学校」をはじめたわけ

わたしたちは、小学生たちと一緒に海や魚について考える「おさかな小学校」というオンラインプログラムを運営しています。

といっても、さかなクンみたいな魚にめちゃくちゃ詳しい子を育成しようというわけではありません。おさかな小学校でしているのは、日本人なら誰でも知っていてほしい、マグロやイワシ、タコやエビの話です。

生きたタコやエビを見せて、生き物としての魅力を伝えることはもちろんですが、わたしたちが大事にしているのは、そんな生き物たちがすむ海と、わたしたちのつながりです。

わたしたちは海に囲まれた島国にすんでいて、日々、海産物を食べて生きています。でも、海で泳いでいた魚たちが、どのように食卓に上がっているのか、ちゃんと答えられる人は少ないのではないでしょうか?

おさかな小学校では、魚をとる漁師さん、魚を売り買いする魚市場の人、魚を料理する板前さんなど、「魚を食べる」に関わるいろいろな人が、オンラインで話をしてくれます。

例えば、今年のマグロの回では、北海道のマグロの漁師さん、世界でマグロをとる遠洋漁業会社の社長さん、回転寿司の店長さん、豊洲魚市場の仲買さんに登場していただきました。

立場がかわれば、マグロとのかかわり方もかわります。マグロとわたしたちのあいだには、いろいろなお仕事があって、いろいろな人がかかわっているんだな、と感じてくれたのではないかと思います。

「ほっかいどうのりょうしさんも今日のしゃちょうさんも、おなじりょうしさんだけど、ちがうたいぷのりょうしさんだと思いました。」という感想を送ってくれた子もいました。そう、「漁師」と言っても、さまざまなんです。

もちろん、海とわたしたちのつながりは、「食べること」だけではありません。2021年度には、海や魚の研究者、海洋環境や野生生物を守る環境団体の方、さらには石材屋さんやアイヌ協会の方にも来ていただいて授業を行いました。

「1匹の魚を目の前にしたときに、多くのことを想像できる子供を育てたい」と思っています。

毎週、子どもたちからたくさんの質問をもらうのですが、鋭い洞察に基づいた質問があり、とてもうれしいです。

サステナブルシーフードと「おさかな小学校」


わたしたちは、2021年4月に「一般社団法人日本サステナブルシーフード協会」を設立し、協会のプログラムとして「おさかな小学校」を運営しています。

「持続可能な水産物」という意味の「サステナブルシーフード」と、「おさかな小学校」。どうつながっているのかな?と思われると思います。

そこで、なぜサステナブルシーフードを掲げる私たちが子ども向けの学校を運営することになったのか、お話したいと思います。

世界の海の現状

これは、国連の食糧農業機関が発表している、世界の水産物消費量の推移です。水産物の消費量は年々増えていて、50年前の約6倍もの水産物が消費されています。

一方で、世界の水産資源の状態は年々悪くなっていて、「獲りすぎ」の海の割合が増えています。

こちらは、日本の漁業生産量の推移です。1980年代には1200万トン以上の漁獲量がありましたが、今は約3分の1まで減っています。

漁師さんも高齢化していて、漁師の数も減っています。

わたしたちは、「このままでは、将来は魚を食べられなくなってしまうかも」と心配しています。

魚の獲りすぎだけでなく、プラスチックによる海の汚染や、海の温暖化・酸性化によるサンゴ礁の死滅など、いろいろな海の心配があります。

わたしたちは協会を設立することにした

そんな、いろいろな問題を抱えている海や漁業ですが、漁業は海の上で行われていて、なかなか身近に感じることが難しいです。

農家さんの手伝いをしたり、家庭菜園で野菜を作っている人はたくさんいますが、船に乗って漁師さんの手伝いをしたことがある人はとても少ないのではないでしょうか?

「それでも、海が好きだし、魚も食べたい!」と思うわたしたちは、美しい海とおいしい魚を将来に残すために、なにができるのでしょうか?

そのように考えて、何度も話し合って、わたしたちは協会を作ることに決めました。名前は、「日本サステナブルシーフード協会」。

1.豊かで美しい海がいつまでも続くこと
2.海に暮らす人々の生活が守られていること
3.将来の世代も美味しい魚を食べられること

という3つの柱を、ビジョンとして掲げました。
そして、このビジョンを達成するために、交流と学びの場を作ろうと思いました。こうして、まず、協会ができたのです。

子どもに分かる言葉なら、大人にも伝わる

わたしたちは、海や魚のことを、子どものいるお母さんたちにつたえたいと思いました。2018年には70年ぶりに漁業法の改正があり、漁業についての議論がたくさんありましたが、議論していたのは男性たちばかりで、日々おさかなを買っている女性たちの声は、ほとんど聞こえてきませんでした。

スーパーや魚屋さんで魚を買うのはほとんど女性たちなのだから、海や魚のことをもっと知ってほしい、一緒にどうしたらいいか考えたい。でも、どうやったらいいんだろう…??

そんなとき、以前、友人のさわちゃんに言われた言葉を思い出しました。さわちゃんは、一緒に魚を使ったランチイベントをやったりしていて、「すーさん」という愛称の名づけ親でもあります。

「すーさんは、小学生にも分かる言葉で話してくれるから、私にも分かるよ」

小学生に分かる言葉で話せば、大人にも伝わる!

じゃあ、小学生向けのプログラムを作って、お母さんやお父さんにも一緒に参加してもらおう!

「おさかな小学校」のアイデアは、こうして生まれました。

おさかな小学校は、毎週土曜日9時から。

ということで、毎週土曜日の9時~9時30分に、おさかな小学校をやっています。

2021年4月に開校して、今年、2年目に入りました。卒業した子も、新しく入ってきた子も、2年目受講している子も。低学年から高学年までいますが、それぞれの理解力で楽しんでもらえていると思います。

どの月からでも入学できます。例えば、7月に入学したら、翌年6月に卒業となります。日本では1000種類以上の魚介類を利用しているそうですが、その中から一番基本となる11種類を選びました。8月は「特別授業」として、いつもとはちょっと違う授業を試みています。

詳しくはホームページをご覧ください。こちらの3分動画もぜひ。

おさかな小学校がめざす未来

海について、想像力を働かせられる子供を増やしたいです。
海とわたしたちのつながりについて学んだら、きっと海をもっと大事にしようと思うでしょう。
海を大事に思う人が増えたら、きっと、美しい海とおいしい魚を未来に残せると思います。
海の教育が、あたりまえに公教育のなかに取り入れられたらいいのにな、と思いつつ、そうなるまでは、「おさかな小学校」として、海や魚のことを子どもたち、お母さん、お父さんに伝え続けていきます。

(文章 鈴木允)




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