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「スポーツ」×脱炭素

 今年は、パリオリンピック・パラリンピックが開催されますね。一見、関係ないように思える「スポーツ」と「脱炭素」。実は大きく関係しているのです。自称スポーツ観戦オタク(主にテニス、バスケ、ラグビー)の担当Sが詳しくご説明します!


気候変動でスポーツが楽しめない?

 皆さんもニュース等で「○○年に一度の暑さ」という言葉を耳にすることがあるのではないでしょうか。気象庁によると北海道では、100年あたり1.75℃上昇しているそうです。さらに全国でも真夏日と猛暑日の年間日数が増加しており、地球温暖化の影響は否めません。
 さらに総務省消防庁の発表によると令和5年5月から9月に全国で熱中症により救急搬送された人は9万1,467人。平成20年の調査開始以降、2番目に多い搬送人員ということで、熱中症はいまや大きな社会問題の一つです。
 こうした状況に歯止めがかからなければ当然、スポーツにも影響がでてきます。2018年7月愛知県刈谷市で開催が予定されていた東海社会人サッカーリーグ1部の公式戦が猛暑を理由に中止となった(出典:スポーツニッポン(WEB)2018年7月22日)ケースや、世界に目を向けると2014年のテニスの世界4大大会の一つ、全豪オープンでは暑さを理由に試合が中止となる事態が発生しました。
 このように地球温暖化は、私たちのスポーツの楽しみを脅かしつつあるのです。 

冬のスポーツはもっと影響大!

 冬のスポーツについては、さらに影響が大きいです。
 平均気温の上昇は冬の積雪量にも大きな影響を及ぼしており、積雪量の減少と雪質の劣化は、冬のスポーツの安全や持続可能性に悪影響を及ぼします。
 北海道檜山地域でもその影響は顕著です。厚沢部町太鼓山スキー場は、例年3月頃までオープンしていますが、今シーズンは十分な積雪が見込めず、2月19日に終了しました。
 北海道にとって雪は観光資源の一つですし、道産子は冬にスキー授業を行うのが一般的です(地域によってはスケートですが)。地球温暖化が、子どもたちの学習機会を奪ってしまうかもしれないのです。

テニス界の取組

担当の私がこよなく愛するテニスは、実はゼロカーボンにはほど遠い世界なのをご存じでしょうか。フェルトとゴムで作られるテニスボールは数回使用すると空気が抜け、充填はできないため再利用はできません。ちなみに世界4大大会では、1回の開催で約10万個のボールが廃棄されているそうです。また、ストリング(いわゆるラケットのガット)の多くはプラスチック製で、これも切れるとストリングとして再び使用することはできず、プラスチックごみとなります。ちなみに担当Sは高校、大学時代には3日に1回程度の頻度で切れていました。1回で約12mのストリングを消費するので、世界中の学生だけでも、ものすごい廃棄量です。当然、製造過程でもたくさんの温室効果ガスが排出されています。
 さらにプロの世界は、世界中を転戦するため、多くの移動が伴います。男子プロテニス協会(ATP)によると昨年200人の選手を対象に記録された移動距離は合計で約655万㎞。地球1周が約4万㎞、地球から月までが約38万㎞ですので、ものすごい距離です。多くは航空機での移動となっており、温室効果ガスが大量に発生しています。
 こうした現状を受け、テニス界では様々な取組が始まっています。
 まずは、ATPの取組です。昨年から「カーボン・トラッカー・リーダーボード」という取組が開始されました。パートナー企業が開発したアプリを選手が使用し、トーナメントの移動を追跡、移動手段の変更などにより排出量を削減するほか、クイズに解答するなど、様々な要素によって順位を決定。上位の選手には賞金が与えられるという仕組みです。ちなみに昨年のトップ3選手は、賞金を環境保護団体へ寄付しているとのことです。
 道具の面でも各メーカーで様々な取組を行っています。ボール製造メーカーである住友ゴム工業(株)(ダンロップ)では、まずは、ボールを入れるボトルのフタをこれまでプラスチック製だったものから紙製に、練習球にはフタを使用しないという取組を始めています。

 スポーツ用品メーカーのウィルソンでは、100%再生利用可能なペットボトルを使用したストリングを開発。また、2019年には「地球環境を考えるボール」として、従来のペット缶に入ったボールではなく再生可能木材から作られた紙パックに入ったボールを発売し話題となりました。

北海道のスポーツチームの取組

 地域のスポーツチームでも様々な取組が進んでいます。
 北海道コンサドーレ札幌は、「PASS(Positive Action for Sustainable)」プロジェクトをスタートし、「廃棄物ゼロのクラブをめざそう」ということで、プラスチックごみの回収や、ペーパーレス化を進めています。また、年代、性別、国籍、障がいの有無に左右されずスポーツを楽しむ文化づくりや、自然豊かな北海道をホームとするクラブチームとして、自然との共生の取組も進めています。

 北海道日本ハムファイターズは、不要になったグッズを回収し、新しいグッズを開発する「リサイクルプロジェクト」を推進中です。ファンの応援グッズだけでなく、使用しなくなった選手のユニフォームもリサイクルするという特徴的な取組です。

 北海道旭川をホームとする男子プロバレーボールチームのヴォレアス北海道は、2021年に「VOREAS GREEN DEAL宣言」を発表し、地球環境の保全と人々の健康維持という課題解決に取り組んでいます。
応援グッズのハリセンは、一般的には強度を保つためにプラスチック加工が施されておりリサイクルやリユースが難しいのですが、このプラスチック加工を排除し、リユースやリサイクルしやすいものに変更しています。そのほかにも会場のプラごみゼロ運動、石油燃料の使用量を10から20%削減できる液体燃料触媒の販売も行っています。

私たちにできること

  私たちがスポーツを楽しむ際にできることは何でしょうか。
 実は環境省では、スポーツを楽しむ際に簡単に取り組めるゼロカーボンアクションを紹介しています。スポーツをやる人だけでなく、観る人向けの内容もあります。道具を長く、大切に使うなど、今すぐできる取組もありますので、無理のない範囲で取り組んでみていただけると嬉しいです。

環境省「気候変動×スポーツ」特設サイトより

 今年のパリオリンピック・パラリンピックでも様々な脱炭素の取組が実施されると思います。選手の活躍はもちろんですが、そうした取組にも是非注目してみてください。


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