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檜山×「公共交通」×脱炭素

 こんにちは!檜山振興局環境生活課のSです。
 皆さんは普段バスや鉄道などの公共交通機関は使っていますか?
 今回は脱炭素と公共交通に関するお話です。併せて、先日上士幌町にお伺いし、最先端の取組を視察してきましたので、この記事をご覧になっている皆さんにもご紹介します。


公共交通の現状

 脱炭素のお話の前に、公共交通の現状について考えてみます。私が住む北海道、特に檜山地域は平成26年のJR江差線の廃止や路線バスの一部路線の廃止・休止が相次いでおり、人口減少や少子高齢化の進行に伴い、公共交通を維持していくことが非常に難しい状況に陥っています。
 一方、公共交通は、地域住民の日常生活における移動や、観光客の周遊の手段として必要不可欠です。全道で最も少子高齢化が進んでいる檜山地域では、自家用車を持たない高齢者が今以上に増えていくことが想定され、公共交通をどのように持続可能なものとしていくのかが喫緊の課題です。
 また、公共交通は、地域の衰退と密接に関係しています。公共交通がなければ「通いたい学校に通えない」「働きたい場所で働けない」「観光したいけど観光できない」といった事態に陥り、その地域に住む・訪れること自体が難しくなります。こうなってしまうとますます人口減少や産業の衰退が進み、公共交通の維持はおろか、地域そのものが衰退していきます。

公共交通の維持=ゼロカーボンの推進

 次は、公共交通の維持とゼロカーボンの関係について考えてみます。
 皆さんもなんとなく、ガソリン車から温室効果ガスが排出され、環境に悪影響なのはご存じだと思います。具体的にはガソリン1リットルを消費するとCO2が約2.3㎏排出されると言われています。
 では、これをどのようにゼロカーボン、脱炭素に近づけることができるでしょう。様々な方法がありますが、その一つが「公共交通の利用」です。とでも単純なことで、例えばある10人が同じ目的地にそれぞれの自家用車で移動した場合と、全員が同じ路線バスで移動した場合では、9台分のガソリンの消費が抑えられます。また交通量が減ることで渋滞等が緩和され、燃費も向上します。公共交通を利用するという選択だけでゼロカーボンに一歩近づくのです。
 ただし、一つ注意点があります。それは「一定の利用者がいなければならない」という点です。定時定路線のバス等の場合、利用者がいなくても必ず運行しなくてはなりません。この場合、いわゆる「空気を運んでいるだけ」という状態になってしまい、ゼロカーボン・脱炭素とは逆行してしまいます。つまり、いかに効率的に人を運ぶかがゼロカーボンに向けた大きなポイントとなります。

上士幌町の先進的な取組

 こうした公共交通の課題に立ち向かう上士幌町の取組を紹介します。
 まず福祉バスのデマンド化です。デマンドバスとは、定時定路線の従来型の路線バスと違い、電話等で配車予約をし、目的地に向かうという利用者のニーズに応じて柔軟に運行するバスのことです。実はこうしたデマンドバスは全国各地で運行していますが、上士幌町で予約受付はタブレット端末からの専用アプリに限定しています。主に70代から90代の高齢者が利用する福祉バスですが、町のIT制作の一環で希望する高齢者世帯にタブレット端末を配布しており、それを活用しているとのことです(通信費も町負担!すごい!)。
 当初、高齢者の皆さんの抵抗感も強かったとのことですが、使用方法については、町の担当者やまちおこし協力隊の方が高齢者サロンなど高齢者の皆さんが集まる場に足繁く通い、丁寧に説明することで理解いただいたとのことです。また、こうしたタブレット端末の活用は町民のデジタルリテラシーの向上や高齢者の認知症予防にも貢献しているとのことでした。タブレット端末は町内の主要施設5カ所にも設置しており、出先からも福祉バスが利用できるようにしているということです。


町内に設置されたタブレット端末。専用アプリのUIはATMを参考にシンプルなものにしたとのこと

 続いての取組は、自動運転バスです。公共交通の維持には、当然運転手といった人材の確保が欠かせません。こうした人材も少子高齢化の影響により、確保が難しい状況が続いています。上士幌町では2017年から自動運転バスの実証試験を続けており、現在は定時定路線で町内中心部を自動運転バスが運行しています。また「レベル2」の自動運転ということで車内にはオペレーター(運転手)の同乗が必要ですが、来年度からは一部で「レベル4」(オペレーター不要)の自動運転の実証が行われるとのことです。
 今回、私も試乗させていただいたのですが、オペレーターは車内にいるもののほとんどの場所を自動で運行していました。当日は前日までにかなり雪が積もっており、道路は完全に雪で覆われていましたが、直線は全く問題なく驚きました。左折時、路肩に積み上げられた雪を障害物と認識してしまい急停止する場面もありましたが、今後、温度センサーの設定等を工夫することで解消できる見込みとのことでした。将来的にはこの自動運転バスも定時定路線からデマンド運行に切り替え、より利便性を高めるとのことです。

実際に上士幌町を運行する自動運転バス。車内のタブレットから行き先を入力できるため、システム上は予め決められたバス停であればデマンド運行にもすぐ対応可能とのこと

江差マースの取組

 実は公共交通の課題への取組は檜山地域でも進んでおり、今回は、江差町の”江差マース”を紹介します。
 まずマース(MaaS)とはMobiliy as a Serviceの略称で、地域住民や旅行者一人一人の移動ニーズに応じて複数の公共交通機関や移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービスです。
 江差町では「江差マース」と称し、デマンドバスを運行、電話またはLINEアプリから予約を行い、町内全域88カ所の乗降場所を発着します。複数人の予約があった場合は、乗合バスとなり、最適なルートを運行する仕組みとなっています。さらに、この取組はサツドラとも連携しておりEZOCAマネーによる電子決済も可能となっていて、利用に応じてポイントも付与される仕組みです。

江差マース公式HPより

私たちにできること

 今回は上士幌町と江差町の取組を紹介しましたが、公共交通の維持については各地で様々な取組が進められています。
 では、私たちにできることはなんでしょう。正直、自家用車のDoor to Doorに適う交通機関はないのが現実です。しかしながら、公共交通機関の維持は、地域の将来を支える重要なインフラであることは前述のとおりです。私たち一人一人がそのことを意識し、週に一度、月に一度でも自家用車の替わりにバスや鉄道といった公共交通を利用してお出かけしてみることが、地域の将来、地球の未来を支えることに繋がるかもしれません。


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