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国際通貨基金(IMF)について教えてください。

回答

国際通貨基金(IMF、International Monetary Fund)は、サーベイランス、加盟国に対しての融資および経済政策のための能力開発を行うことで、国際貿易の促進、高水準の雇用と所得の増大、為替の安定など国際通貨制度の安定性に寄与する国連の専門機関です。

ポイント

  1. 最高意思決定機関は総務会および関連委員会によるガバナンス体制

  2. IMFのサーベイランスによる経済成長と金融の安定化

  3. IMFの融資制度で危機的状況を回避


ポイント解説

1. 最高意思決定機関は総務会および関連委員会によるガバナンス体制

IMF(本部所在地:米国ワシントンD.C.)は、1944年7月、米国ニューハンプシャー州ブレトンウッズで開催された会合において、戦後の先進国復興を目的とした国際復興開発銀行(IBRD)とともに設立されることが決定しました。ここで締結した「ブレトン・ウッズ協定」に基づき、米ドルを資本主義国の基軸通貨とする国際通貨制度が確立し、IBRDとIMFは両輪の役割を果たす機関となります。
2022年10月末現在で、IMF加盟国は190か国に達しています。

IMFの最高意思決定機関は、各加盟国の代表者(財務大臣、中央銀行総裁)で構成される総務会であり、ここで運営に関する重要事項を決定し、総務会に対する統制機能として、年2回、国際通貨金融委員会(IMFC、International Monetary and Financial Committee)および世界銀行・IMF合同開発委員会が開催されます。
また、毎年1回世界銀行グループと共に総務会の年次総会が開催されています。ここでは会合だけではなく、両機関の職員、NGO、報道関係者、民間企業などと交流を図るために数多くのフォーラムも行われています。今年は10月にモロッコで開催され、鈴木財務大臣より、IMFに対してCBDC(Central Bank Digital Currency)の実務的な指針となるハンドブック策定への期待が述べられました。IMFは金融業界を襲うデジタル化に対応するべく、2026年までにCBDCハンドブックを完成させる計画です。

ちなみに、IMFではドルや円などではなく特別引出権(SDR)という会計単位を用いていますので、報告書や資料では金額の規模感を掴むまでに少々時間がかかります。この会計単位により算出された出資割当額に比例して議決権が割当てられる仕組みであり、日本は約6%ほどの議決権を有しています。

年次報告書2023

2.IMFのサーベイランスによる経済成長と金融の安定化

加盟国の潜在的なリスクを調査・特定することを目的としたモニタリングから、経済成長と金融の安定性を促進するために必要な政策を助言します。これをサーベイランスと言い、各国を対象とした国別サーベイランスと世界経済を対象とした多国間サーベイランスがあります。

どのように国別サーベイランスは行うのでしょうか?

年に1回、IMF職員が加盟国を訪問し、政治家、労働組合、市民、公務員、中央銀行職員など幅広い分野で活躍されている方々と、為替相場や通貨政策、財政政策、金融政策、気候変動やデジタル化など、その国の経済と金融の安定性に重要なテーマについて政策対話を行い、仕組みに何かしらの脆弱性がないかリスク要因を調査します。IMF職員が協議内容を報告書にまとめ、当報告書がIMF理事会に提出されるため、世界の国々に存在する最新の潜在的リスクを把握することができるのです。この国別サーベイランスはIMF協定第4条に規定されていることから「4条協議」と呼ばれ、2023年度は世界の国々で126件を実施しています。

グローバル環境では、ある国の問題や政策が他の国にも影響を及ぼしますが、IMFには大半の国が加盟していることから、このような各国に横串をさすことは世界経済の成長と国際金融の安定化に資する取組みとなるわけです。

3. IMFの融資制度で危機的状況を回避

IMFは特定のプロジェクトに対して融資を行いません。危機に直面する国に対して融資を行います。その国が経済の安定と成長の回復に向けて政策を実施する上で、財政の余裕を持てるように支援しています。

1つの国の財政が危機的状況となる理由は、国内要因、国外要因もしくは両方の要因が混在した場合と様々です。国外要因の例として新型コロナウィルスの大流行が挙げられます。IMFは、パンデミックの発生以降、391億ドルの融資コミットメントを提供するなど取組みを強化しました。このような自然災害やパンデミックに対応しての提供だけではなく、健全な政策を講じているものの脆弱性が一部残存しうる国を対象にした予防的融資も提供しています。

また、IMFの融資においては、世界の主要通貨の平均金利によって決まる金利を採用する一般融資と、低所得国のニーズに沿う形とするために、貧困削減・成長トラスト(PRGT、Poverty Reduction and Growth Trust)の下で、譲許的な融資(ゼロ金利)による支援も行われています。

年次報告書2023|IMF


〈参考〉

あとがき
12月26日に、エチオピアが債務返済が困難となり債務不履行に陥ったことが報じされました。債務返済が滞る場合はIMFに支援を求めますが、新興・途上国の発展にはリスクが伴うため、今後もIMF支援残高が増加していくと思います。



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