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患者さんを守るために、デザイナーとして譲れないもの

今回は、デザイナーKさんを中心に、CTO本橋さん、臨床開発部長 黒木さんを交えた対談をお送りします。治療用アプリや臨床試験システムのUI/UXデザインを担当しています。

一般的なWeb・アプリ開発におけるデザインは、ユーザーのフィードバックやアクセスログの解析結果からPDCAサイクルを回し、品質を上げていくスタイルが多いです。一方で、サスメドが扱っているサービスは、リリース時から高い品質が求められ、かつリリース後の修正が難しいため、時間をかけて品質の高いデザインを最初からリリースします。

今回は、特徴的な開発環境下においてデザイナーKさんがどのような思いで業務に取り組み、何を大事にしているのか。さらに、Kさんの入社によって現場にどのような変化がもたらされたのか、インタビューを通してお聞きしました。

プロフィール

K|UI/UXデザイナー(写真中央)
前職ではマーケティングデザイナーとして、マーケティング施策からデザインまで一貫して担当。サスメドには2020年12月に入社。(本人のご希望で匿名の登場となります)

選考中から滲み出ていた、徹底的に調べる姿勢

── サスメドにはどのようなきっかけで入社したのでしょうか?

K:自分から応募して、入社に至りました。サスメドを知ったとき、ちょうどキャリアの転換期を迎えていて。これまではデザイナーとして自社の売上を上げるための仕事をしていたのですが、今後は社会的意義が高い仕事に取り組んでみたい、と思うようになっていたんです。

サスメドは「デジタルセラピューティクス(DTx)」という領域に携わる会社。「デジタルで病気を治すことができるんだ!」と驚き、自分もそんなプロジェクトに関わりたいと思いました。昔から医療に関する興味が強かったのも影響しているかもしれません。

── 入社の決定打になったものはありましたか?

K:プロダクトの開発プロセスがまさに自分の求めているものだった、というのが決定打でした。サスメドのプロダクトは特性上リリース後の修正が難しいため、リリースまでにユーザーさんのことを考え抜いて、丁寧に作っていくと聞いて。これまでは数ヶ月の短期決戦で作り上げるケースが多かったので、すごく新鮮に映りました。

本橋:一般的なWebやアプリには多くの事例があり、ある程度“正解パターン”というものがありますが、治療用アプリは全く新しいもの。また患者さんに品質の悪いものを提供することはできないため、答え合わせが簡単にはできず、「これで駄目だったら変えてみよう」が難しいんです。だからこそ、デザインを追求して考えられるデザイナーさんを求めていました。Kさんは、まさにそれができる人。選考時から、我々を驚かせてくれました(笑)。

── 選考ではどんなことがあったのでしょうか?

本橋:「不眠障害治療に必要なあるUIコンポーネントを作るとき、どのようなデザインを考えますか?」という課題をお渡ししたんです。

Kさんは、デザイン自体が良かったというのもあるのですが、病気について徹底的に調べてきたんですね。「この人は突き詰められる人だ」と思って、ぜひサスメドに来てほしいとオファーしました。

黒木:現在もそうですよね。何冊も本を読んだりWebで調べたりしたんだろうな、というのが伝わってくるんですよ。しかも、本も一般書から専門書まで目を通されていて。“突き詰める”のレベルがものすごく高いなと感じますね。

K:勉強しなくては、知らない単語ばかりで仕事が進められなくて(笑)。対象疾患や治療方法、効果が出るロジックなどをきちんと理解しないとプロダクトを作ることはできないので、日々皆さんから学ばせてもらっています。

違和感を見過ごさないことが、患者さんを守ることに繋がる

── 入社してからこれまで、具体的にどういった業務に携わってきましたか?

K:Webとアプリ両方のUI/UXデザインに携わっています。Webでは、ブロックチェーン技術を活用した臨床試験システム。アプリでは、慢性腎臓病患者さん向けの治療用アプリや不眠障害治療用アプリを担当しました。

── まずは、ブロックチェーン技術を活用した臨床試験システムについて詳しく教えてください。

K:製薬企業や医療機器メーカーが医薬品・医療機器の有効性や安全性を確認する治験や臨床試験を実施する際、従来は多大な労力と費用がかかっていました。データの転記ミスや改ざん防止のためのデータ照合などが必要だからです。

サスメドでは、ブロックチェーン技術を活用することでデータの信頼性を向上させ、人手での照合作業を削減することで治験・臨床試験の効率化を実現する臨床試験システムを提供しています。

私が担当したのは、医療従事者の方が使用する紙のワークシートを、電子的なワークシートに置き換えるという取り組みです。これまでは患者さんの検査結果や評価を紙のワークシートに記入し、その後に紙のワークシートからシステムに転記・確認していたので、大変な手間がかかっていたんですね。

この取り組みで大事にしたのは、医療従事者の方々に受け入れてもらいやすいUI/UXにすることでした。紙から電子的なワークシートに移行するのは大きな変化なので、本当に入力しやすいシステムにしないといけなくて。入力画面までの遷移を最少にして短時間で入力できるようにしたり、質問票の表示パターンの充実などにもこだわって可読性や視認性を上げるようにしました。細かい気遣いをすごく大事にしましたね。

本橋:正直、こういった“気遣い”は機能面だけでみると必須ではありません。UI/UXにこだわってもこだわらなくても、データ入力自体はできてしまうからです。でも、もし医療従事者の方が「このワークシートは非常に手間だ」と感じられたら、結局臨床試験システムは広がらず、治験コストが上がり続けてしまう。特に我々エンジニアは、機能面を重視しがちなので、Kさんの提案は非常にありがたかったですね。

── 治療用アプリについては、患者さんも手にとるプロダクトですよね。臨床試験システムとはデザイン面で重視する部分も異なるのでしょうか?

K:そうですね。治療用アプリの開発では、「患者さんを守る」という観点を重視しています。慢性腎臓病患者さん向けの治療用アプリのプロジェクトは東北大学と共同で進めていて、私も本橋さんや黒木さんと一緒に定例会に参加し、治療内容の議論から入っていきました。治療用アプリのUI/UXは、治療行為そのものと言っても過言ではありません。正しく安全に治療ができるように、患者さんの視点を徹底的に考え抜く必要があります。

そのため、違和感を率直に伝えるよう心がけました。サスメドのメンバーは医師や製薬メーカー出身者もいて、私と違って医学的知識や治験の実施経験があります。だからこそ、当たり前すぎて疑問に感じない部分もあるんじゃないかと。私はそういった専門知識がないからこそ、患者さんと同じ目線で考えられる部分もあると思うんです。

本橋:代表の上野と僕は自分の意見をきちんと納得しないと曲げないところがあるんですけど、Kさんもいい意味で頑固というか、引っかかっていることがあったら絶対にスルーしない人で。「やっぱり患者さんにとってよくないと思うのでもう一度考えませんか」と、全部調べてから提案してくれるんです。そのおかげで、医療に関する知識や経験が豊富でかつ常に物事を突き詰めて考えている代表の上野も、Kさんの考え抜いた提案に納得して方向性を変えることが何度かありました。そういう方は貴重ですし、これくらい芯がある方を我々も求めています。

K:違和感を伝えることは、患者さんを守ることにもなるし、ひいては会社、会社のメンバーを守ることにもなる。医療のプロの方々に対して「言いづらいな……」と思うこともあるけれど、強い気持ちで伝えるようにしています(笑)。

黒木:Kさんは芯はしっかりしているけれど、一方でコミュニケーションは柔らかい。話しかけやすさとプロフェッショナリティの両方を持っているので、メンバーからの信頼も厚いですね。

難易度の高いプロジェクトで、挑戦を続ける

── 他部門から見て、サスメドのデザイナーとして必要だと感じる要素はなんだと思いますか?

黒木:一般的なアプリとサスメドの医療機器である治療用アプリの違いは、世の中からのフィードバックを簡単にはもらえないことです。だからこそ、さまざまな情報を取り入れながら、自分の頭で繰り返し考える必要があります。それを、楽しめるというのが重要な要素かなと。

通常は、エンドユーザーからフィードバックをもらって、PDCAを回してプロダクトを改善していくと思うんですけど、治療用アプリは発売までに治験などを通して有効性と安全性の根拠となるデータを揃える必要があります。発売時点で、効果などが確認された医療機器として出すためです。

本橋:“暗中模索”のようですよね(笑)。世の中に正解がないから、時間をかけて議論をして、自分たちで仮説を立てて進めていく必要がある。作ったものが正しいのか分からないという苦しさはあるはずです。だからこそ、正解を探していくプロセスを面白いと感じる人に入ってきてほしいですね。

また、サスメドのデザイナーは、ただデザインを決める人ではなく、専門家として議論しながら一緒になって治療方法を作っていく人でもあります。時間はお渡しできるし、入社時点での医療的な知識は不要なので、ぜひ前向きに勉強してくださる人だといいなと思います。

── Kさんは、どのようなデザイナーがサスメドにフィットすると感じられますか?

K:刺激がほしい人……ですかね(笑)。サスメドのプロダクトは難易度が高いものが多く、特に臨床試験システムはさまざまなロールがあり、それぞれの業務フローが絡み合う複雑なシステムです。これまでWeb系の会社でさまざまなシステムを作ってきましたが、正直、ダントツで難易度が高いと感じます。レベルの高い、難しいことにチャレンジしてみたい人にはすごく合っているんじゃないかなと思いますね。

あとは、プロダクトのことを本気で考えられる場所を望んでいる方。サスメドのメンバーは皆さん、利己的な意見ではなく、医療のため、患者さんのためを思って意見を言う方ばかり。全員の“目的”が一緒なので、「何でも言いましょう」という文化が出来上がっているんです。だから私も要件に対して、率直な疑問を投げかけますし、デザインに対しても正直なフィードバックをもらっています。意見がぶつかっても嫌な空気にはなりません。

お互いに領域をはみ出し合いながら、後悔のないようにいいものを作り上げている感覚があるので、そういった環境に身を置きたい方にはおすすめです。

── 最後に、Kさんのこれからの目標を教えてください。

K:コロナ禍で入社したので、医療機関に訪問したり、患者さんから直接お話を聞いたりすることがあまりできていなくて。現場を直接見たり聞いたりすることで、実際の業務や治療を本当に理解して、より正解に近いプロダクトを作っていきたいです。その上で、自分なりの社会貢献ができたら嬉しく思います。

── ありがとうございました。

取材・執筆/早坂みさと