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中国版ヴェイパーの「ポテンシャル」を探る②:中国スポーツブランド各社の基本概要

前回の中国版ヴェイパーの「ポテンシャル」を探る①で、2020年の各メーカーのレーシング新作のおさらい、中国メーカーの技術力、そして李寧と特歩の2つの中国ブランドの基本情報について書いた。

第2章は↑の記事から1年後となってしまったが、この1年間で中国の各スポーツメーカーがこぞって厚底カーボンシューズの新作を発売しているので、基本情報として各メーカーの基本概要について触れていきたい。

中国では2008年の北京五輪開催が決まったあたりから、スポーツ志向が高まり、各企業が小さな企業からブランド企業に上り詰めた。また、2022年の北京冬季五輪に向けて各社が猛チャージをかけて成長スピードを高めている。

李寧(Li-Ning)リーニン 

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※中国語では李宁(発音はリーニン)
・正式名称:李宁有限公司 / Li-Ning Company Limited
・本社所在地:北京市通州区中关村科技园区
・創業者 / 会長:李宁(1984年ロサンゼルス五輪男子体操:3種目金メダル)
・創業:1990年(現在31年目)
・上場:2004年6月(香港市場)
・時価総額:1.4兆円(2020年10月時点)
・Instagram:Li-Ning
・HP:英語 / 中国語

中国国内でアウトドアブランドのAIGLEの半世紀の独占販売権を保持しているとともにヨガブランドのDanskin、バドミントンブランドのKason、レジャーブランドのLottoなど多くのブランドを所有。

李寧というスポーツブランドとしても中国国内で4000店舗以上を展開しており、2020年10月時点での時価総額が1.4兆円という巨大な企業。

中国国内のみならず、東南アジアや日本(バトミントン用品)、欧州などで幅広く展開。有名選手やチーム単位でのスポンサードに積極的で、元NBA選手のシャキール・オニール(シャック)も一時サポートしていた。

2008年の北京五輪で急成長を遂げた企業であるが、そこからハイエンド市場(ラグジュアリー製品などの高価格帯製品)にシフト。近年はスニーカーも有名で、ハイセンスブランドとして認知されている。

ランニングの製品群は比較的安価なものも多いが、カーボンシューズの販売価格が高い(20,000-33,000円)。

日本では森脇健児氏が李寧のカーボンシューズを履いている。

【カーボンシューズ】
飞电1.0(2019年9月発売)
绝影(2020年8月発売)
飞电CHALLENGER(2020年11月発売)
飞电2.0 ELITE(2020年11月発売)

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特歩(Xtep)エクステップ

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※中国語では特步(発音はターブゥ)
・正式名称:特步(中国)有限公司 / Xtep(CHINA)Co.,LTD.
・本社所在地:福建省晋江市
・創業者 / 代表取締役:丁水波(関連記事
・創業:1987年(現在34年目)"特歩"ブランドは2001年から開始
・上場:2008年6月(香港市場)
・Instagram:XTEP SPORTS
・HP:英語 / 中国語

体操の五輪金メダリストの李寧氏とは対象的に、創業者の丁水波の10代は庶民的な生活。その後、靴工場勤務から経営を学び、会社の規模を拡大させていき、2001年から特歩ブランドとして会社規模をさらに拡大させた。

自社でマーケティング、R&D(研究開発)、デザイン、生産、販売の機能を持ち、直近で6,200店舗を超える小売店を傘下に有している(日本を除くアジアを中心に展開)。メインはスポーツアパレルで、ファッション系については補完的な位置付け。

2019年から特歩ブランドのみならず、Saucony(索康尼)、Merrell(迈乐)、K-Swiss(盖世威)、Palladium(帕拉丁)といったブランドを中国で展開するマルチブランド戦略をとっている。

特歩はNBA選手などとも契約しているが、製品群ではマラソン、特にランニングシューズに特化。中国国内の多くのマラソン大会の協賛をしている。

契約選手にマラソン2:08分台の選手が3人いる(董国建 2:08:28 / 彭建华 2:08:50 / 杨绍辉 2:08:56)。

特歩は現在、中国陸連とのパートナーシップ契約を締結しており、どちらかというとアスリート向けのブランディングを行っている。

自社でXtep研究所を保有しており、厚底カーボンシューズの開発研究など、比較的製品のアップデートが速い。

【カーボンシューズ】
160x 1.0(2019年12月発売)
160x 1.5(2020年8月発売)
160x 2.0(2021年3月発売)
160x Pro(2021年7月発売)

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安踏(Anta)アンタ

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※中国語でも安踏(発音はアンタ)
・正式名称:安踏体育用品有限公司 / ANTA Sports Products Limited
・本社所在地:福建省晋江市
・創業者 / 代表取締役:丁世忠
・創業:1991年(現在30年目)
・上場:2007年7月(香港市場)
・時価総額:1.4兆円(2017年時点)
・Instagram:ANTA Sports
・HP:英語 / 中国語

安踏は2022年北京冬季五輪の公式パートナー。

2009年にイタリアの「FILA(フィラ)」の中国事業を買収して大きく成長。「ANTA」「ANTA KIDS」「NBA」だけでなく、日本企業のデサント、韓国の大手アウトドアブランドのKOLON SPORT、香港の高級子供服ブランドのKingkow等のブランドポートフォリオも有するマルチブランド戦略が功を奏している。

世界のスポーツ用品企業の売上ランキングでも、ナイキ、アディダス、プーマに次ぎ、第4位に入る超巨大企業。中国国内では2016-2020年にかけてナイキ、アディダスに次いで売上高で第3位。中国本土で約1万店舗を運営している。

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2018年12月に安踏は方源資本 (FountainVest Partners)、中国インターネット財閥のテンセント(腾讯、コングロマリット企業)、チップ・ウィルソン(ルルレモン創業者)らの投資家集団と手を組み、52億ドル(約5700億円)でフィンランドのスポーツ用品メーカー大手のアメアスポーツコーポレーションを買収。現在、安踏はサロモンやウィルソン、スントなどの親会社となっている。

26ものスポーツで中国代表をサポートするなど、巨大な総合スポーツブランドであるが、中でもバスケットボール、NBA選手のスポンサードに積極的。


安踏は低価格帯中心の製品群でランニングシューズも展開しているが、中国ブランド間でのカーボンシューズの開発競争には出遅れた。

コロナ禍で発売時期が遅れていたが、2021年の春にやっとカーボンシューズのC202 GTが発売された。安踏はナイキやアディダスのように研究開発に多くの資本を投入する企業なので、ランニングの製品群への投資や研究開発のスピードアップに期待したい。

【カーボンシューズ】
C202 GT(2021年4月発売)


匹克(Peak)ピーク

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※中国語でも匹克(発音はピークゥ)
・正式名称:匹克体育用品有限公司(匹克体育)/ Peak Sport Products Co., Limited
・本社所在地:福建省泉州市
・代表取締役:許志華
・創業:1989年(現在32年目)
・上場:2009年7月(香港市場)
・Instagram:Peak Sport Official
・HP:英語 / 中国語 / 日本語

匹克(PEAK)は英語の "PEAK "に由来し、ブランドロゴのように山の頂上まで登るという自己挑戦の精神を意味している。

2009年に上場したのち、2011年に米国市場に参入。NBAと公式マーケティングパートナーシップを結び、中国でNo.1のバスケットボールブランドとなったこともあり、バスケ製品が主軸でNBA選手のスポンサード、欧州の国々の代表チームのサプライヤー契約を結んでいる。

ヨーロッパ、アメリカ、アジア、アフリカ、オーストラリアの5大陸70カ国以上で輸出事業を展開。北京、広州、アモイ、泉州、アメリカのロサンゼルスに5つの国際デザイン・R&Dセンターを持っている。

匹克は業績低迷で李寧 / 安踏 / 特歩などの他社に差をつけられ2016年11月に香港上場を廃止したが、その後方向転換し研究開発(R&D)に多額を投資。現在では3Dプリントスニーカーも発売するなど最先端のテクノロジーへの投資を惜しまない。

匹克は匹克態極(PEAK-TAICHI)というアシックスの"GEL"のようなクッション材を開発し2018年12月に発表。現在、スニーカーやバッシュ、ランニングシューズにPEAK-TAICHが使用されている。

ランニングシューズでPEAK-TAICHを使用したものは、アシックスのGELを使用したゲルカヤノやゲルニンバスなどと同じように、重量がそこそこあり、安定性を重視しているシューズが多い。

また、PEAK-TAICH 2.0 ProやPEAK TAICH-3.0 Proといったランニングシューズはどちらかというと走ることのできるスニーカー(ジョグぐらいなら)という感じである。

UP30というカーボンシューズは重さがあるが、安定性がとても高いのでどちらかというと初心者向きのカーボンシューズであると言える(上級者でも低強度の持久走やロングランには普通に使える)

【カーボンシューズ】
UP30(2020年夏発売)PEAK-TAICHをヒール下部に使用


361°(361 Degrees)スリーシックスティワン

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※中国語では361度(発音はサンリウイードゥ)
・正式名称:三六一度国际有限公司 / 361 Degrees International Limited
・本社所在地:福建省晋江市
・創業:2003年(現在18年目)
・上場:2009年6月(香港市場)
・Instagram:361° official
・HP:英語 / 中国語 / 日本語(日本代理店)

※日本語では「スリーシックスティワン」もしくは「さんびゃくろくじゅういちど」と呼ばれている。

361°の前身企業は、1994年に設立された別克(福建)鞋業有限公司。2003年に社名を三六一度(福建)有限公司と改め、更に、2005年に三六一度(中国)有限公司に変更。現在、中国国内で1万店舗弱を運営。

2016年のリオオリンピック / パラリンピックの公式ユニフォームのサプライヤーとなった。様々なスポーツの製品を展開しているが、他の中国スポーツブランドと同じくバスケットボールに力を入れている。

ランニングは欧米でも展開しているほか、2020年からは日本にも進出し、大阪に本社を置くゼットが独占販売権を取得し日本国内で販売している。それもあってか、大阪のランニングコミュニティにジワジワと認知されている。

361°はアメリカの男子トライアスロン選手のモーガン・ピアソン(2021年横浜トライアスロンエリート男子3位)をスポンサードしており、彼は東京五輪の全米代表入りが決定。その他、アメリカ拠点の選手で361°のスポンサードを受けている陸上長距離の契約選手がいる。

中国ブランド間でのカーボンシューズの開発競争には一足遅れてしまったが、2021年の春に待望の新作が発売された。この製品↓はアメリカでも販売しているが、日本では秋以降の発売が予定されている。

【カーボンシューズ】
飞燃(2021年3月発売)※日本では“フレイム”という名称


乔丹(Qiaodan)ジョーダン

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(2021年1月からは↓)

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※中国語では乔丹(発音はチィアォダン)
・正式名称:中乔体育股份有限公司 / Zhongqiao Sports Co., Ltd.
・本社所在地:福建省泉州市
・創業:2000年(現在21年目)
・Instagram:乔丹体育官方账号
・HP:中国語

中国南部の福建省には特歩、安踏、匹克、361°といった中国主要スポーツブランドの本社があるが(南部は工場が多いらしい)、乔丹もそれらと同じように福建省の納税額トップ30企業の1つに入る企業であり、中国国内で約6,000店舗を展開している。

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(出典先:新浪体育

しかし、アメリカのジョーダンブランドのパクリブランドということで本家ジョーダンファンからすると、中国ブランドの中で最も敬遠されているブランドといっていいだろう。

本家ジョーダンは、2012年以降に乔丹社に対して80件の訴訟を起こしており、2020-2021年にかけて乔丹社が敗訴し賠償金を支払っているが、中国の法律では5年以上の商標が中国で認められてきたものは、その商標を取り消すことができなようだ。

と、評判は最悪クラスの企業であるが、製品のクオリティはそれなりに高い。商品はバスケが主力であるが、ランニングにも力を入れており女子契約選手にはマラソンで2時間33分台の記録を持つ選手がいる(焦安静)

お馴染みの”飞影PB”はその軽さ、安定性、反発性のバランスがピカイチ。

アッパーのパクリ度とそのちゃっちい感じは中華クオリティなのかもしれないが、ランニングのパフォーマンスに対しての性能は高いと感じる1足。

中国国内ではこの1足が常時、定価11,000円前後で販売されているから驚き。

【カーボンシューズ】
飞影PB(2020年9月発売)


必邁(Bmai)ビーマイ

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※中国語では必迈(発音はビーマイ)
・正式名称:北京必迈体育用品有限公司
 / ‎Beijing Bmai Sports Goods Co.,Ltd
・本社所在地:北京市朝阳公园
・創業者:张志勇
・創業:2014年(現在7年目)
・HP:中国語

かつては李寧に務めていた张志勇氏が2014年に創業した新しいブランド。経営陣は元李寧やアディダスやナイキのメンバーが集まり、中国のオリジナルランニングブランドを創った。今後の成長が期待される。

Bmaiとは”be myself”の英訳であり"Every step is beyond”がスローガン。

販売網に関しては実店舗を構えるブランドではなく、オフラインのランニングコミュニティの形成と、オンラインでの販売で存在感を放っているランニングに特化したシューズブランド。

従業員がみんな走る、という点では従来の発想に囚われない会社であり、ランコミュニティに馴染みがあり重要視しているのでスイスのonに近いマーケティングをしているブランド。

ミッドソールにNYLON 12(PA12)という独自素材を使用した厚底カーボンシューズのMile 42K Turbo 惊碳を2020年11月に発売。

【カーボンシューズ】
Mile 42K Turbo 惊碳(2020年11月発売)


多威(Do-Win)ドゥーイン

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※中国語でも多威(発音はドゥウェイ)
・正式名称:多威体育用品有限公司
 / ‎Do-win Sports Goods Co., Ltd
・本社所在地:昆山市
・創業:1983年(現在38年目)
・HP:中国語

中国の国家靴の製造を行い、製品の70%は主に中国のナショナルチーム、省庁のスポーツチーム、大学や専門学校などの競技に使用され、30%はヨーロッパやアメリカなど20以上の国や地域に輸出されている。

多威は様々なスポーツをカバーするだけでなく、他のスポーツブランドとは違ってランニング製品以外にも陸上競技の製品(スパイク、その他の陸上専門用品)を多く製造しており、中国陸連公認のブランドである。

2000年のシドニーオリンピックでは、中国の7人の選手が多威のシューズを履き、そのうち5人が金メダルを獲得。

そのようなことから日本でいうアシックスのような存在であったそうだが、ランニング(特にロードレース)においては最近はナイキやアディダスといった外資ブランドに押し出されて存在感を失いつつある。

かつてはアシックスと同じように薄底シューズのレーシングモデルなどの人気があったようだが、カーボンシューズ開発から遅れてしまい後発となってしまった。

【カーボンシューズ】
神行者 / Speedstar(2021年4月発売)


カイラス(Kailas)

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※中国語で凯乐石(発音はカイルゥシィ)
・正式名称:湛江市玛雅旅游用品有限公司
 / ‎Kailas / Zhanjiang Maya Travel Products Co.
・本社所在地:湛江市
・創業者:布莱恩 / 柯林斯
・創業:1968年(現在53年目)
・HP:中国語 / 英語日本語

チベット高原西部に位置する標高6656mの※未踏峰(登頂者が誰もいない)であるカイラス山にちなんで生まれた中国最大のアウトドアブランド。

(※)信仰の山であるため登頂許可は下りない。

アウトドア用品をはじめトレイルランニングのシューズも製造しているが、日本にも販売代理店がある。

トレイルランニングの世界にカーボンシューズを初めてもたらした。中国ブランドは変化に柔軟で、開発スピードが非常に速いのが特徴である。

【カーボンシューズ】
FUGA ATHLETE(2020年10月発売)

その他、HEALTH(海尔斯)やERKE(鴻星)といった中国ブランドもカーボンシューズの開発中ということなので、製品の詳細が分かり次第以下に追記する。


中国国内での年ごとの各社の売上など

各ブランドの紹介をした後に、以下で各ブランドのスポーツ用品の市場規模をまとめる。

2008年の北京五輪に向けて波に乗ったスポーツブランド各社は2012-2013年の不況を経て成長を遂げている。現時点で香港証券取引場の上場しているのは安踏(ANTA)李寧( Li-Ning)特歩(Xtep)361°の4社であり、匹克は2016年に上場廃止となっている。

【2018年中国スポーツメーカー市場動向】中国ブランドのみ

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(青:売上高・緑:純利益)単位は億元(1元16円程度)

2013-2017年にかけて、中国のスポーツ用品市場の収益は年々上昇。この5年間の年間成長率は7.64 → 9.37%と急速な成長を遂げている。

売上が好調だった2018年の各スポーツブランドの財務報告によると、安踏は、売上高が241億元、純利益が41億300万元で中国ブランド内で不動の1位の座をキープしている。安踏ブランドだけでなくFILAやデサントなどといった主要ブランドを多く持つといったマルチブランド戦略が、安踏の会社規模の大きさを象徴している。

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コロナ禍で中国4大スポーツブランド各社(上場企業)は2020年の第一四半期に減収となったが、2021年の第一四半期には前年の減収分を補足できるほどの増収となった。

2015年、李寧はそれまでの3年間の赤字から初めて利益を出し、その後5年間、すべての経営指標が順調に上昇している。2018年、ニューヨーク・ファッション・ウィークに「China Li Ning」が登場したことで、中国国内でのトレンドが始まり、李寧のブランド力が一気に高まった。
2017年、特歩はそれまでの3年間の戦略的変革を遂げた。小売チャネルのフラット化を図って、特歩専属の総代理店が卸売業者から小売業者に変わり、小売チャネルを完全に管理できるようにインセンティブを与えることで、経営効率を向上させた。2019年、特歩は安踏のようにマルチブランド運営の道も歩み始めた(Saucony / Merrell / K-Swiss / Palladiumの国内販売を開始)。
2018年、361°はブランド再編計画を打ち出し、いくつかの共同ブランド製品が成功したが、全体的な経営状況は一向に改善されずに債務危機が緩和されたのはつい最近のこと。
2019年、安踏はアメアスポーツを正式に買収し、20以上のブランドを直接または間接的に管理している。 その後、中国でのFILA事業の業績が初めて公開され、アンタのマルチブランドの急成長を外部に知らしめた1年だった。その後のデサントなどのブランドは市場での見通しが良いが、一方で主要ブランドの安踏は成長が鈍化している。

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4社のそれぞれの売上高および純利益は増加傾向で特に2017年からの2年間の伸びが顕著。2020年はコロナの影響で減収と純利益の増加傾向が鈍化もしくは減少。

安踏はマルチブランド戦略を本格化させてきており、完全直営ブランドのFILAの売上貢献率はすでに半分に近づいている。

李寧は3年間の赤字を経て2015年にようやく利益を出し始め、現在は業界2位の地位を確固たるものとしている。2018年のニューヨーク・ファッションウィークでは中国の李寧コレクションが注目を集めるなど、李寧のブランド力が急上昇。

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研究開発への投資は各社、年々増加傾向にあり、同じように各社売上も伸ばしているので、研究開発への比率はそこまで大きく変動はない。

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各社の広告宣伝費の比率はそこまで大差はないが、その投資額は研究開発への投資と同様に安踏が4社のうちで最も多く、その会社規模に比例している。

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各社の中国国内での店舗数。コロナ禍で店舗数を減らしているが、非効率な小さいお店を畳んで、大型店舗の出店が加速。また、ECでは新規出店率が鈍化している。

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純利益率は4社で上下。李寧が今最も勢いがあり、4社の中では4位から2位の地位にジャンプアップ。

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赤=ナイキ / グレー=アディダス

2016年にナイキとアディダスの売上高は同程度。安踏が中国企業ではトップでその他のブランド(緑)の合計の比率が45%と高かった。

しかし、2020年にはその他のブランドが縮小し、ナイキと安踏が比率を伸ばしている。


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