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「高性能シューズを遅いランナーが履くな!」という人がいるらしいという話

ある日の小雨が降る後楽園。ステップ東京本店でAdizero Adios Pro Evo 1の抽選販売が行われた日に、私は開店前の列に並んでいる人を見渡した。

購入順を決める整理券の抽選で、見事に1番の番号をひいた人は、私の1.5〜2倍ぐらいの体重がありそうな、一見ランナーではない超肥満体型の日本人女性で、その人は希望サイズを聞かれてこう答えた。

「29.0cmで」

最近、Xで「高性能シューズを遅いランナーが履くな!」という人がいるのをチラホラみかける。

おそらく、そういう人は、私がこの日にこの女性に抱いたような気持ちに似たような感情を持っているのかもしれない。

そして、その女性が「自分はランナーです」とか「友達や夫のための代理購入です」とか言い出したらもうキリがない。

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トラックシーズンの陸上スパイクで特に品薄になりやすいのがドラゴンフライとマックスフライだろう。その最新モデルが発売されたとあって、希少価値が高く、Adizero Adios Pro Evo 1のようなプレミアム感も少しある(値段はそこまで高くないが流通量に対しての需要が)

「高性能シューズを遅いランナーが履くな!」というのは、私が思うに、そういうことを書き込んだりする人の大半は匿名であることを前提にしているからこそ明らかにできる嫉妬心からだと思う。

社会人であれば、自分が稼いだお金である程度自分の好きなものを買うことができるので、何を履いて走ってもいいと私は思っている。

一方では自分でお金を稼ぐことが難しい人たち、例えばアルバイトもろくにさせてもらえない、できない学生たちは物を買うにも予算に制限があるわけだ。

そういう肩身の狭い思いをしている学生の中でランナーというか、陸上競技に取り組んでいる人たちなら、おそらく99%が競技的思考であり、記録を縮めたいと思って走っている(競技思考ではない学生ランナーなら、短距離、跳躍、投擲などを除いては中長距離選手でも基本的にはアルバイトをしていると思う)。

だからこそ、その99%の競技的思考で記録を縮めたいと思って走っている、肩身の狭い思いをしている人たちは、希少価値の高い、品薄になるようなスパイクやシューズが買えないことにイラつく(のではないだろうか)。

例えば、そのような「使えるお金に制限があるような人たち」は、フリマサイトで多少値上がりしているものを定価よりも高く購入したり、海外から輸入するようなコストをかけることがしにくい。品薄であるという問題を「金」で解決できない人たちである(でも、自分も学生の時はそうだった)。

そういうガチな人からすれば、ファンランの人、全く走ってないような人やコレクター、転売目的の人などが、品薄のシューズ(今で言えばナイキの最新スパイク)などを購入することに対して嫉妬心が生まれるかもしれない。そう、それを「自分が買えるチャンスや確立」が少し減るからだ。

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それは、Adios Pro Evo 1の購入時に、私が店頭で抱いたような気持ちに近いかもしれない。購入順を決める整理券の抽選で明らかにランナーでない人がそこにいたように、私は「もしかしたら自分が買えないかもしれない」という不安と葛藤していたのである。

今の時代は、昔とは違って流通チャネルが多岐に渡る。したがって、情報社会であり品薄商品の購入は「情報戦」である。

エリートレベルの競技者ならメーカーからドラゴンフライやマックスフライの最新モデルの提供を受けることができるかもしれない。しかし、それ以下のレベルのランナーは皆同じラインにいて、言ってしまえば5000m14分台だろうが、22分台だろうが関係ない。

「どこのお店に入荷した」「どこのサイトで買える」「あのサイトは偽物を売っている」などの情報を取捨選択し、確実な購買に繋げることが重要で、そこは走力ではなく情報収集能力が重要となる。

私はいまでこそ、5000m15分台、マラソンサブ2:30で、競技者といえるかもしれないが、その記録を出すまでに陸連登録をしていないから競技者とはいえないかもしれない。

また、5000mが18分台、マラソンが3時間30分台で走っていた4−5年前もカーボンシューズをたくさん買って、品薄の商品もたくさん買い込んだ。基本的に自由であるが、「アイツは走ってないからそんなにたくさん買っていてムカつく」とか思われていたかもしれない(そんなにたくさん持っていて羨ましいとはよく言われるが)。

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話を最初に戻すと、私はAdizero Adios Pro Evo 1を購入するに相応しいレベルのランナーなのだろうか?購入時のマラソンの記録は2時間40分台。その後、別のシューズで2時間28分で走ったが、サブスリーだったらとか、サブ2:30だったら「Adizero Adios Pro Evo 1を履くのにふさわしい」とかあるのだろうか?

私がいつも願っていることとしては、ナイキをはじめ「プレミアム感を保つような品薄商法」をやめてほしいということだ。多くの人が手に取れるように、そしてシューズの全体的な値上げの傾向も基本的には歓迎していない。

流通量が多くて、安くて。そのようなことが徹底されていれば、ランナーじゃない人がランニングシューズやスパイクを買っても何も思わない。フリマサイトで定価以上で流通することもなくなるだろうし、嫉妬心もなくなるんじゃないかと思う。

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【参考記事】


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