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今年の東京マラソン海外招待選手から学ぶ1週間前からの調整練習

(トップ画:ライアン・ホールのことに関する記事なのでマッチョの人が走っているイラストにさせていただきました。笑)

こちらの記事でも触れたが、今回の東京マラソンの海外招待選手は1週間前に入国。東京五輪マラソン出場選手の練習会場が札幌市の真駒内スケート場やその周辺に限定されたように、東京マラソンの主催者も今回の海外招待選手にはバブル(隔離)方式を採用している。

その結果、海外招待選手たちは、ライバル選手たちが1週間前からマラソンに向けてどういう調整練習をしているかを間近で学ぶことができる。レースに集中している選手はともかくとして、コーチにとってはこれがコロナ禍でのメリットの1つかもしれない。

特にマラソン世界記録保持者で五輪王者のエリウド・キプチョゲ、同じく女子の世界記録保持者のブリジッド・コスゲイの1週間前からの調整練習をジックリと見れる機会など、またとないことだからだ。

東京の翌週の名古屋ウイメンズに出場するサルピーターも入国し、同じように千葉県でのバブルに入った。

東京マラソン海外招待選手のサラ・ホールのコーチであるライアン・ホール(ハーフマラソン全米記録保持者)はインスタグラムに他の海外招待選手の調整練習の様子と、自らの経験や理論を踏まえてマラソン練習での1週間前からの調整練習の考えを記載している。

彼はスタンフォード大学時代からの試行錯誤の末、マラソン前の最後のワークアウトとして
・2マイル(3200m)のマラソンペース走+4×200m(マイルペース)
“two-mile threshold at marathon pace plus 4 by 200 at mile pace”
と、ボリュームは多くない。

このメニューをサラ・ホールは木曜日(マラソン3日前)に消化。

そして、もう1パターンのライアンが推奨する最終調整メニューは
・20分ファルトレク:10(1'/1')
“10 by 1 minute hard/1 minute easy”
疾走区間は計3km弱で同じくボリュームが多くない。

このメニューを偶然にもブリジッド・コスゲイがサラ・ホールの練習中に行っていたそうだ。

“Last fartlek before Tokyo marathon”

そして、ライアン・ホールがみたところ、五輪王者のキプチョゲはマラソンの1週間に最終調整練習を終えていたという。そして、彼のインスタグラムでの投稿では最後に以下の考えが綴られている。

【最終調整練習に関して】

1. 自分がやっている練習や調整過程を信じることが重要であり、レース前に自信を持つことが最も重要なこと。

2. 自分に合う調整方法を追求すること。それがどういうやり方であるかを知る唯一の方法は、自分の体で試行錯誤することである。ワークアウトを消化するタイミングや、トレーニングの構成要素に工夫を加える。

3. レース前の1週間は、自分の調子が良いかどうかを確かめるような練習は必要はない。それをしようとすることが最も多い間違いである。イージージョグであれなんであれ、重要なのはトレーニングで消耗してしまうことではなく、フレッシュな状態でスタートラインに立つこと。

4. もし、調整練習で何をしたらいいかわからない場合は、レースの3日前に閾値走を“長い距離”(おそらく1000mや2000mの刺激走ではなく合計10-20分程度の閾値走の意味)を走ることをオススメする。ほとんどの選手は、VO2maxインターバルよりも、閾値の強度で調整するのが良い状態を保てるということを知っている。

ライアン・ホールのインスタグラムより引用

レース前の1週間は流しなどで良い動きを保ったまま、グリコーゲンをなるべく失わない強度(中強度のテンポ走やファルトレク)やボリューム(多すぎない)でとどめておくと良いということだろうか。

調整過程で「調子を確かめるために」新しいトレーニング刺激を入れてしまうことや、前日に1000mを速いペースで疾走することなどの重要性はあまり感じられない。

ライアン・ホール:2007年のヒューストンハーフで59分43秒の全米記録を独走で樹立。マラソンでは五輪で2大会連続の全米代表(2008年北京五輪全米選考会優勝 / 2012年ロンドン五輪全米選考会2位)また、2011年のボストンで2時間04分58秒で3位。ボストンは片道の非公認コースのため公認記録ではない。公認コースでの自己記録は2008年ロンドンでの2時間06分17秒。2016年1月に33歳での現役引退を発表。その後は妻のサラ・ホールの指導に専念。その期間にウエイトで体重を58 → 75kgに増やしマッチョになった。


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