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小型の魚でも威力を発揮!低温調理で作る鱚(キス)の魅力

鱚の代表的な調理法と言えば、言わずもがなで天麩羅でしょう。鱚の繊細な美味しさを引き出す、究極の調理法の一つだと思います。また、昆布〆の仕事を施した鮨についても、独特の魅力がありますよね。酸味のある酢飯との相性が抜群。

しかし!この度、僕が試してみたのは低温調理です。鱚は大型でも20cm強と言う「小型」の魚なので、上手くいくかどうかは食べてみるまで全く不明でした。結論から申し上げますと、「ベスト」ではないまでも、今後の調理のヒントを得ることが出来、鱚の低温調理はポテンシャルがあると実感しました。今回は低温調理のみでしたが、調理法を組み合わせる事でユニークな料理を作れると確信しました。

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ちなみに、鱚の産地については、味に定評がある千葉県竹岡産のものを使いました(御徒町の吉池さんでゲット)。

鱚のタンパク質組成と適切な設定温度について

タンパク質組成については、いつもはゼロから論文検索を行いますが、過去に【穴子の低温調理コンフィ】を作った時に参照した論文にて、シロギスについても調査されていました。 

https://note.com/sushilog/n/neb32b4810aa3

ついては、鱚は筋原線維タンパク質が56%〜69%の魚なので、細胞間の結合が緩む温度50℃の手前の49℃に設定することにしました。
出典:久留安希子, 落合芳博(1994). 茨城県産魚類の筋肉成分組成の季節変化 茨城大学教育学部紀要, 43号109-119

同時に、鱚は水分量がほぼ80%にもなる魚です。そのまま低温調理を行っては、繊維が柔らかすぎる恐れがあります。そこで、自身の強みを活かして鮨の仕事を採り入れることにしました。鮨の仕事×低温調理なんて、「食の変態」として興奮します(笑)

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鱚の低温調理についての詳細

【低温調理機の設定と使用する調味料】
設定温度:49℃
設定時間:20分
調味料:赤酢のみ!

【調理の手順】
1. 鱚のウロコを丁寧に引いて、背開きで一枚におろす
2. 身(の方だけ)に塩を振り、5分ほど脱水する
3. 脱水した鱚を冷蔵庫で1時間半寝かせる
4. 鱚を赤酢と合わせて真空パックにする
5. 低温調理開始、出来上がり

【注記】
1.
※中骨、その他気になる骨、背ビレなども落としましょう
2. & 3.
※これが鮨の仕事の塩〆です
※〆て寝かすことで塩気を浸透させ、鱚の美味しさを引き出します
4. 
※塩は〆の段階で決まっているので、使用せずとも大丈夫です
※酢を希釈することも考えましたが、設定時間が20分と短いので、生酢で調理しました
※赤酢を使用する理由は、旨味を利用するためです

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実食!【鱚の塩〆ビネガー低温調理】

生(塩〆のみ)とも天麩羅とも異なる食感になります。塩〆で脱水した身はむっちりとしていますが、口に入れた途端にホロッとほどけます。そして、食感以外に低温調理の効果を実感したのは、旨味の強さ。淡い味わいである鱚が非常に旨くて驚きました。これは(ちょっと自画自賛くさくなりますが)塩〆と低温調理を組み合わせた効果だと感じます。このような食感と旨味の鱚は初めて食べました。

しかし、課題も発見されました。それは、以下の2点。

1. より柔らかさを追求したい
2. 身を開いた状態で真空パックに入れるべし

天麩羅における鱚の魅力とは、淡雪のような口どけ。低温調理でも更にホロッとした食感を表現できるはずなので、50℃以上でより適切な温度を模索したいと思います。また、身を折りたたんで入れたらくっついてしまったので(笑)、開いて入れた方が美味しいと感じました。


低温調理に関心のある方は、【低温調理器についてのブログ記事】をご参照ください。

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