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低温調理の新たな可能性を示唆する食材、穴子

さて、今回のテーマは穴子(アナゴ)です。

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梅雨から夏が旬の魚で、日本人にはお馴染みの魚ですね。煮ても焼いても美味しい穴子は、さばくとなると結構面倒ですが、スーパーでもさばいたものが売られているので、実は結構調理しやすい魚だと思います。

そこで、今回は旬の穴子を入手して、低温調理の可能性を模索してみました。結果的に、既存の調理法では表現できない火入れを実現することが出来たので、低温調理の食材として強くオススメしたいと感じました。
ちなみに、穴子の旬については、ブログ(すしログ)に記事を書いています。もしよろしければご参照ください。

穴子のタンパク質組成と適切な設定温度について

今回、穴子の低温調理を行うにあたり、まずは穴子のタンパク質組成についてリサーチしました。そこで得た結論は以下の通りです。

・穴子は季節によりタンパク質の比率が変化する
・夏に筋形質タンパク質の割合が高く、秋に低くなり、筋原線維タンパク質の割合はこれとは逆に秋に高く、夏に低くなる

出典:久留安希子, 落合芳博(1994). 茨城県産魚類の筋肉成分組成の季節変化 茨城大学教育学部紀要, 43号109-119
論文のダウンロードはこちらから可能です(※ブラウザで開かれずローカルにDLされるので注意)。

上記の論文、結論から見出した温度はズバリ、64℃。「アナゴおよびシロギスでは,夏に筋形質タンパク質の割合が高く」と結論付けられていたため、調理時期は筋形質タンパク質に合わせ、凝固温度の65℃を切る温度で設定しました。
→しかし、のちほど読み返して、結論は「年間を通して筋原線維タンパク質の割合が最も高い」事が分かりました。当該論文の日本語はちょっと分かりづらい…。まあ、美味しく出来たので良しとしますが(笑)

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穴子の低温調理についての詳細

【低温調理機の設定と使用する調味料】
設定温度:64℃
設定時間:30分
調味料:太白胡麻油、実山椒の醤油漬け、塩

【調理の手順】
1. 流水で穴子のヌメリを取る
2. 両面に塩を振り、20分ほど冷蔵庫で寝かせる
3. 流水で塩を流し、水気をふき取る
4. 穴子を太白胡麻油、実山椒の醤油漬けと合わせて真空パックにする
5. 低温調理開始、出来上がり

【注記】
1.
※ヌメリが臭みの原因なので、丁寧に取ります
2.
※脱水して旨味を凝縮するとともに、塩味を付けます

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実食!【穴子の低温調理・和風コンフィ】

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いやあ、これには感動しました!煮穴子、焼き穴子、西洋料理のソテーなど、今までに食べた料理とは完全に異なる食感で未体験ゾーン。低温調理器を持っている方は、是非とも試してみた方が良いです。

今後は美味しさに加えて、タンパク質組成と調理法の組み合わせを検証しながら、料理の味覚的精度を上げていきたいと思います。


低温調理に関心のある方は、【低温調理器についてのブログ記事】をご参照ください。

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