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すしログ江戸料理帖【タコの江戸煮】

「すしログ江戸料理帖」は今や絶滅危惧の「江戸料理」の魅力を伝えるレシピ紹介マガジンです。僕に「江戸料理」の魅力を伝えてくれたのは「江戸前芝浜」の海原親方です。この方は凄い料理人で、江戸時代の文献を読んで江戸料理を現代に復活させている偉人です。

そして、僕も江戸料理の人気向上のために貢献したいと思い、本マガジンを始めました。江戸料理の魅力を簡単に挙げると以下のとおりです。

  • シンプルで手軽

  • 季節や旬を感じられる

  • ヘルシー

  • 日本酒との相性が抜群

江戸料理の魅力が伝われば幸いです!
さて、前回は江戸料理【鰹の浅草煮】を紹介しました。

今回紹介するレシピは【タコの江戸煮】です。
これは「桜煮」とも呼ばれる料理で、今でも江戸前鮨店で頻繁に作られています。しかし、江戸時代のオリジナルはレシピが違う!
日本酒とお茶で煮て、甘味を付けないのが江戸料理のタコの煮方です!
しかも、お茶はほうじ茶ではなく煎茶なのが面白い。

【タコの江戸煮】

【タコの江戸煮】は1730年に刊行された『料理網目調味抄』で紹介されています。と、料理の説明に入る前に、ちょっと面白い話をします。江戸時代には化け物のような大タコが目撃されていて、下記のように報告されています。

八・九尺から一・二丈(約2.4m~約6m)に及ぶものがあり、長足で人を巻き取り、海中に引き入れて食らう。

『本朝食鑑』元禄10年(1697年)

え…、怖すぎです(笑)
さらには…

越中富士滑川の大蛸は牛馬を取喰い、漁舟を転覆させて人を取れり。これを捕らえる術はない。

『日本山海名産図会』寛政11年(1799年)

滑川は現在、日本で最も有名なホタルイカの産地です。そんな場所に人食いタコがいたとは…

これらの書籍は権威性が高い有名な名著です。よって、江戸時代には巨大な蛸が存在して、被害を及ぼしていた模様です。幸いにも現代には目撃されておらず、我々はタコを美味しく頂くのみ。いやはや、しかし、恐ろしい大ダコがいた時代から美味しく調理して食べてしまうとは…日本人の食欲は昔から強いようです。

なお、世界的にタコを食べる民族は少なく、日本以外だと、スペイン、イタリア、ギリシャなど地中海の国が挙げられます。

使用する材料・調味料

大人2人分の材料です。

  • タコ:足1~2本

  • 煎茶:カップ1

  • 日本酒:カップ1

  • 醤油:適量

  • 柚子(輪切り):適量

かなりシンプルな調味料です!

レシピ(作り方)

  1. タコをぶつ切りにする。

  2. 日本酒と煎茶にタコを加えて弱火で煮込む。

  3. 柔らかくなったタイミングで醤油と柚子を加えて、さらに10分くらい煮詰めて完成!

・タコの茹で加減は好みです。ぷりっぷりな食感、しっとりな食感、ホロホロな食感、それぞれ魅力があります。個人的には表面はトロッとしつつ、中はぷりぷりとしっとりの間くらいが最も好きです。

・タコは長時間煮込まないと美味しくない、と思われがちですが、短時間は短時間で魅力があります。

最後にひとこと&お酒とのペアリング

煎茶を使うことでタコの香りと旨味が活きます!旨い!!

そして、柚子の上品な酸味がふんわりと漂い、実に爽快です。「これは旨いな…」と2回口に出ました。

タコの旨味を余すところ無く楽しめる秀逸な料理です。甘味をつけないとここまで味わい深いとは…と、しみじみ感じました。タコは砂糖を加えて煮ることが現代においては多いですが、時には控えてみると面白いです。

この料理に合うお酒については…

  • 樽酒の冷酒!

樽香が付いた日本酒を冷たい状態でクイッと飲むのが夏に良いです。冬に水ダコで作る方は、燗酒にすると季節に合うでしょう。


また次回を楽しみにして頂ければ幸いです。

励ましの「スキ」を頂けると、次のレシピを書く原動力になります!


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