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【Monthly Funding Report】2023年1月アメリカ建設不動産領域

今回から遂に2023年のファイナンス分に突入していきます!
それに合わせて、このnoteのまとめるフォーマットやスタートアップの対象範囲もガラッと変わっております。

前回のnoteの後半でもご紹介したんですが、主な変更点は以下の3点です。

①Pre-Seed~Pre-IPOまでの全ステージをカバー
②その月のファイナンスにおける著名VCの投資先を一覧でご紹介
③ピックアップ企業から1社を深堀してご紹介

これまで数が少ないと言い続けてきたんですが、ステージをがっつり広げますので、数は急激に増加します(笑)

また、ピックアップする企業以外にも、著名VCや日系企業が入った案件は(めちゃくちゃ簡単にですが)事業概要とラウンド概要を画像でまとめますのでもしご興味ある企業があればご自身で見てみてください!

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リサーチの範囲

これまでは、基本的にPreSeed、Seed、SeriesAのみを範囲としていましたが、新フォーマットからはPost-IPOでエクイティがらみであればすべて見るような形にしています。

なのでPEも含めていますが、明らかにスタートアップではない所は少し外したりしております。

また対象領域についてはこれまであえて外していた領域(住宅向けの消費財とか造園とか)もすべて入れています。なので、次でお示しするグラフは過去にweeklyで書いている数字と違うものになってますので、悪しからず….

今月のサマリー

今月に関していうと、全体的な調達件数は増えているものの著名VC比率は低下していて、PE案件が心なしか多いなぁというのが今月の印象でした。

昨年のQ4の数字も入れてみたんですけど、やっぱり毎年この傾向なのかなと思わされるグラフになってますね。

上半期いっぱいにかけて案件数が多い状態で、下半期に案件数が減っていくような右肩下がりのグラフになっていくんだろうと思います。

今月の著名VC投資先一覧

緑色の文字になっているのが(建設不動産に限らず)領域やテーマ特化のVC、黒文字になっているのがオールジャンルで投資をしているVCになります。

今月で行くと1/10が著名VCの投資案件ということになりました。

スライドの頭にも書いているのですが先月は著名VCが結構多くて調達総数30社に対して9社著名VCあ入っていたんですが、今月はぐっと数が減っています。(特化VCが多かった)

先月はSafe AIのSeriesBもあり、Brick&Mortarが2社、Builders VC、Building Venturesがそれぞれ1社ずつと建設系VCがかなりアクティブに動いていた1ヶ月でした。(Buildersが建設特化か?と言われれば厳密には違いますが….)

余談ですがTwitterで起業家が選ぶVCランキングを見てたんですが、今月各VCを見てみると
Khosla Ventures:1位
Accel:12位
M13:109位
(そのほかは圏外)
という結果でした

今月のPick up

基本的にはファイナンスをした企業すべての中から気になった企業を数社という形にしようと思っているので、ステージや出資したVCの名前に関わらず選んでいこうと思うのですが、今回取り上げる2社はたまたま、前でお示しした著名VC投資先になります。

【SKILLIT】熟練建設技術者向け採用プラットフォーム

ステージ:Seed

ファイナンス履歴
見方:ステージ リードVC等(ファイナンス時期)
Pre-Seed Takeoff Capital(2019年3月)
Seed Building Ventures 他(2022年8月)
Seed Building Ventures(2023年1月)

サービス概要等
大工やゼネコンを経験している創業者により設立されたスタートアップ企業で、熟練建設技術者のデータをもとにした採用プラットフォームを提供しています。
形式としては雇用主が職人に対してオファーを出すタイプの採用形式で、雇用主側では採用基準などを登録することで自動スクリーニングや採用が可能になっており採用にかかる時間の削減等にも貢献しています。

技術者のプロファイルもかなり丁寧に作られているのが印象的でした。

直近の事業等数値
開示なし

【Doorstead】家賃保証とフルサービスの物件管理

ステージ:Series B

ファイナンス履歴
Seed M13 , Silicon Valley Date Capital(2019年10月)
Series A Madrona(2021年4月)
Series B Avanta Ventures(2023年1月)

サービス概要等
Uber出身のメンバーによって創業された不動産管理サービスで物件のリース準備、テナント審査、家賃交渉、物件管理など一般的な管理に加え家賃保証のサービスも提供しています。
どちらかというと肝になっているのは家賃保証のサービスで独自のアルゴリズムをもってやっているようです。
料金設定は業界標準的で、管理費として賃料の8%、客付けの報酬として賃料の半月分で設定される

直近の事業等数値
管理物件:10億ドル相当
管理物件数:30,000+
展開エリア:California、WashingtonD.C.、Massachusetts
上記が2023年1月のファイナンス時点での取材記事のデータで、その前で捕捉できてるのが2021年4月(Series A)のデータなんですが、それぞれ100倍ほどの数字になっていて、すさまじい成長なのが見て取れます。

north of $1 billion worth of properties under management.
とのことだったので、賃料という意味で取ると$1=125円換算で管理料収入だけで100億円程度の売り上げが上がっている計算になりますね…

今月の深堀

今回はSkillitの方を、もう少し日本での可能性について深堀してみていこうと思います。

取り上げてみようと思った背景はやはり建設業界における熟練技術者さんの人手不足というトレンドがある一方で海外と比較すると単価や収入が低いとされているので、日本でもこのあたりを変えれると今のトレンドが変わる可能性もあるのかなと思ったからです。

国土交通省 最近の建設業をめぐる状況について(R3.10.15 不動産・建設経済局)

スクショなので大変見づらく恐縮かつもうほとんどの方がご認識の通りの話で申し訳ないのですが、上記は建設投資額の推移と就業者数を示したグラフになります。

建設投資がピークだった時期と直近データのR2を並べてみますと

ぱっと見、思ったよりも建設投資減少率と人口減少率の乖離はないなと思ったんですが、どちらかというとやばいのはこれから先の話で「2024年問題」「2025年問題」によるインパクトなんだろうと思います。
(乖離自体はそこまで大きくないように見えてしまうんですがすでに出てきている働き方改革的な文脈など社会変化も考えてみるとこの数%のインパクトは大きいと思う)

24年問題というのは、働き方関連のもので労働時間上限に関する規制、残業時間に関する規制などなどがいよいよやってくる(猶予されていたもの)という話で、25年問題というのはベテラン世代が大量退職する時期が来るという話です。(詳しく現状の数字を見てみたい方はこちらのP6をご参照いただければと思います)

そんな中において、もちろん担い手が少なくても現場が動ける仕組みを作ろうというのはもちろんですが、技術開発に当然時間がかかるので、足元はいかに担い手不足を解消するかが論点ということで、国内だと建設キャリアアップシステムというものが国交省主導で動いております。

目指している方向性としては

「建設キャリアアップシステム(CCUS)」は、技能者が、技能・経験に応じて適切に処遇される建設業を目指して、技能者の資格や現場での就業履歴等を登録・蓄積し、能力評価につなげる仕組みです。若い世代の技能者の方がキャリアパスや処遇の見通しをもてる、技能・経験に応じて給与を引上げる、技能者を雇用し育成する企業が伸びていける建設業を目指し、国交省と建設業団体で連携して普及・利用促進に取り組んでいます。

国交省建設キャリアアップシステム ポータルサイトより

といったところになっています。

Skillitとはちょっと目指している方向性は異なりますが、蓄積しているデータ自体は結構近しいような印象を持っています。(方向性が違うので項目ごとの粒度の差はあると思いますが)

数年前までは、割と普及させることに苦戦しており、大きな赤字が続いた結果、20年10月に登録料などを値上げコストカットに踏み切り21年度決算で6億円の黒字に転換していて、利用者数も着実に積みあがってきているようで

データを見ると、システム利用者の賃金は全体平均より上昇していることがわかります。

国交省建設キャリアアップシステムの推進に基づく処遇改善の取り組みについて

パッと見た感じ、データを蓄積して、高い単価で採用につなげるというのを丸っと新たにやっていくってのは日本においては筋がよくないのかもしれないなぁと思いました。

一方で引き続き採用に苦戦していたり、採用後の定着に苦戦する建設会社さんの話は、N数多く聞けてないですが、地場の建設会社の方とお話しすると出てきており、この辺に関しては効率化や仕組が求められている気がしていて、そこへのアプローチの一つとしてキャリアアップシステムのデータを活用しながら、新規でユーザーからもらう情報を最小限に、やっていくというのは、あるのかなぁと思っています。

ここから先はデスクトップ調査ではどうにもならない所ですが、キャリアアップシステムを使っている人の賃金はなぜ平均より上がっているのかなど採用・定着と賃上げの関係性や現在の既存行動についてなどについて建設会社さんにいろいろお話を聞いてみたいところです。(表面的なデータだと正直なんとも判断できないなと思ったデータもあったので、実際のところを聞いてみたいです。)

ちなみに、Skillitも建設キャリアアップシステムと同様に業界団体と議論を行っているようで、スタートアップとしてやっていく上でまずは数社としっかり仮説検証させてもらうのはもちろんですが、スケールさせる上では、実績を作りつつ業界団体を巻き込んでいくというのがスピードを上げるために重要なんだろうなぁと思いました。

編集後記

釈迦に説法みたいな内容も結構多くてすみません。

今回からフォーマットを変更してのnoteとなりましたがいかがでしたでしょうか?

今までよりも範囲を広く見るようにしたので、実施に数字も出てるスタートアップが見れたのは個人的に面白かったです。(仮説というより一定ニーズの証明がされているので)

また、今回でいうとキャリアアップシステムですが、これまでなんとなく知ってたけど、詳細や現状までちゃんとキャッチアップできていなかったものを改めて調べられたのはよかったです。(キャリアアップシステムは苦戦してるイメージだったんですけど、好転してる感じあったし。)

建設不動産に関しては、このnoteと別に著名VCが入った企業をすべて事業内容、独自性・改善インパクト等の観点でまとめたパワポ資料を作成するようにしてるので、そのうち量がまとまってきたときにでもTwitterでフォロワーさん向けに共有するのとかやってみようかなと思っております。

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