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おいしいエッセイ

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おいしいお店を紹介。平野紗季子さんに憧れた“パクリスペクト”な文章たち。
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2022年1月の記事一覧

おまかせ全部レビュー #冨所

 新年初のカウンター鮨は#冨所。好きすぎて去年の8月から毎月通っています。行く度に更新される感動、今回はどんな体験が待っているのか気持ちを高ぶらせながらコースが始まります。 ➀墨烏賊(すみいか)  初っ端に出てくる墨烏賊が大好き。サクッと×もちっと食感のネタの良さも然ることながら、鮨の命であるシャリ、そしてバチっと効かせた山葵を1番感じられる組み合わせ。その店の根幹を知ってもらうための名刺のような一貫かと(平目の時もたまにあります)。 ②細魚(さより)  トゥルんっと入っ

表参道に行ったらあったiittala #イッタラ表参道 ストア&カフェ

 耳慣れない“イッタラ“はフィンランドのインテリアショップ。メインで扱っているのは食器で、表参道の本店にはカフェが併設されている。ショップを見て回る前にこちらで一休憩。 ラスキアイスプッラ 770円  フィンランド版マリトッツォのような「ラスキアイスプッラ」なるものを注文。マリトッツォよりも上品に盛られたクリームの中でジャムが酸味を輝かせ、ほのかなカルダモンは上品な香水を纏っているよう。北欧ってスイーツもおしゃれなのか。  ハーブティー パラダイスミックス 605円

歌舞伎町の上空でワイン #おうばん

 歌舞伎町で都会の喧騒から離れる。一見すると不可能を可能にしたのがここ、#おうばん 。飲み屋街と風俗街のちょうど中間、混乱の真っ只中にありながらもビルの9階に店舗を構えることでカオスから垂直に距離を取ります。エレベーターは開くと即店内のどこでもドアスタイル。地上の騒音を振り切って足を踏み入れた先は歌舞伎町ではないどこか。ここはどこなんだと一瞬の間を置いて見えてくるのはカウンター数席とテーブル3席の落ち着いた空間。素敵です。  「今日はどんな感じにしましょう」。この店にはメニ

築地の愛と厳しさを噛み締める #さが美

 市場が豊洲に移転してから「築地ってまだあるの?」という声を聞きますが、まだまだ築地には美味しいお店が現役で活躍しています。特にアツいのは場外市場、ではなくその外側で、特に築地本願寺の裏手。鮪から始まる本格派鮨食べ放題の #ぎんざまぐろや 、握りに特化した大きめの漢鮨を出す #鮨桂太 、日本橋蛎殻町すぎたから独立された話題の #鮨処やまと を始め、鮨以外の名店も多く潜んでいます。  今回訪問した #さが美 さんも築地本願寺の裏手、場外市場から少し離れた静かな場所にあります。

定期的に通う奥多摩の天国 #おくたま文庫

 「贅沢な時間」って多分このこと。  余計な事を考えずに、本を通して自分と向き合える空間。物理的・心理的な喧騒から脱するには奥多摩という距離感が大事なのだなと。  常連の多さからも明白な魅力。それはつまり店主の魅力。お店に来るというよりも、店主に会いに行くという表現の方が正しいのかもしれない。店主はスナックのママになりたいと言っていたが、私の目には既にそう見えた。  「話上手よりも聞き上手」とはよく言うが、それをどう測るか。どれだけ人に話しかけられるのかが1つの指標にな

“味な店” in 渋谷 #ミス・サイゴン

 一皿でできるベトナム旅行。現地のカオスが詰まった味と香りで記憶を辿り、コロナ前のあの頃に戻る。私にとって料理はその国へのチケットと同じ。湯気と共に舞うパクチーの香りでトリップしてしまいそう。店内を駆け巡る陽気なベトナム歌謡は異国間を演出しながらも謎の安心感を与える不思議な感覚。国は違えど、時代に貫かれた共通の何かがあるのだろうか。窓際のソファと看板はお揃いのエメラルドグリーン。ベトナムの赤いイメージが変わりつつある。雑居ビルの6階から見下ろすのは渋谷の熱気。上空でゆったりで

表参道でジェノベーゼデビュー #トラットリア・オゼール

 出不精な上に埼玉に住んでいる田舎者の私は、東京をほとんど知らない。そんな私とは正反対の街、表参道。別の用事で来たついでに散歩をしていたら、気になるお店を発見。おじさんがそう言うなら食べるしかないですよ。  1階はカウンターで2階はテーブル。どちらも魅力があって、今回は2階の窓際テーブル席を運良くゲット。ピンと一本のしわなく敷かれた赤いテーブルクロスに冬の真っ直ぐすぎる陽が差し込む特等席。  おじさんに言われた通りジェノベーゼを頼む。上手く写真を撮ってあげられなくてパスタ

おまかせ全部レビュー #鮨桂太

 1月も下旬。今更ですがご報告させてください。  2021年の鮨納めは #鮨桂太 さん。親方の握りを一言で表すなら"オシャレ漢鮨"。ご親交の深い御成門の #冨所 さんが"The 漢鮨"と言われているが故、兄弟のように考えています。握りの大きさでは冨所を圧倒する兄貴サイズ。薬味の使い方は兄よりもオシャレな弟のよう。寡黙に握る冨所の佐藤親方に比べ、一見にも愛想よく振舞う青山桂太親方の人柄は弟的でしょうか。  年末なので特別につまみから握りのフルコースをいただきました。青山桂太

天国は奥多摩にあった #おくたま文庫

 2021年最大の発見。自分の求める全てを兼ね備えた場所は奥多摩にありました。自然の中の静寂×選書された古本×ふかふかのソファ×旅館の中の喫茶店。ここが気に入らない人とは友達になれないってくらいストライクゾーンど真ん中で、もしかして自分のためにあるお店?と錯覚してしまうほど。そんなお店も契約期限満了で、今の場所で営業できるのは3月までとのこと。お店が無くなるわけではないけれど、今のおくたま文庫を超えられるのかなって思う位に総合点が高い。  奥多摩の渓谷と森に囲まれた場所で、

早稲田と言えば油そば #図星

 早稲田生たるもの、油そばを避けて通ることはできません。というのも、大学周辺には油そば屋が5店舗あって、駅からキャンパスに向かう途中で必ず目にするように仕組まれているから。このように油そばとずぶずぶな早稲田の街で4年間を過ごした私がおすすめするのが #図星 。  油そばなのに(?)見た目が美しい。レアに仕込まれたチャーシューのピンクに、姫筍の控えめな緑、ゴールデンな鰹節に白葱と海苔のモノクロコンビ。その下にはお待ちかね、油にまみれた太めの誘惑が!唇をテカテカにさせながら食べ

水戸でスリランカ留学 #コジコジ

 カレーの世界は広くて深い。食べ慣れた欧風や本場インドのカレーがあると思えばエチオピアやネパールに飛び、更にはインドでも南インドは別の個性があるらしい。ナンが出てくるだろうと思えば全く聞き覚えのない"ナンのようなもの"を渡されて大混乱。英語が世界各地でローカライズされるように、カレー語も世界各地で様々 な形と名前があるのですね。料理は最も簡単にできる異文化交流!  今日のお相手はスリランカ in 茨城。世界史で習った「セイロン島」というワード1つ以外の予備知識を持たずにお店

究極のまぐろ丼は築地に #海玄

 「寿司が食べたい」を「鮪が食べたい」とほぼ同義で使っている人は多いのではないだろうか。その後に続くのが「コスパよく」という言葉。何かを安く買いたいときは小売店を通さずに買える直販や業務スーパーでの大量購入をするのが定石。だから鮪にもこれを適用すればいい。#海玄 は鮪仲卸界の巨人"やま幸"が運営する鮪丼専門店。その名はもちろん寿司界にも轟いていて、銀座の有名店もこぞって取引しているほど。直営だからこそ高級鮨に卸すような鮪をお手軽に食べられる。  一番人気は「究極の海玄まぐろ

奥多摩×クラフトビール #VERTERE

 東京から青梅線で2時間は遠すぎる。だから、ドライブと銘打って奥多摩まで赴く人が多いのだと思う。私もそう。でも次回は電車で来ようと思わされたきっかけがここ、#VERTERE 。素敵なビアカフェがあると知っていたら、電車の選択肢も出てくる。  駅から100メートルも離れていないのに、事前情報なしで探すのは難しい。それもそのはず、すれ違うのも一苦労な路地の中にあるためだが、見つけてしまえば後は吸い込まれるだけ。「青山居麦酒醸造所」の看板をくぐって入城すると、厳かな外観とは違って

まぐろを食べに大洗へ #悠久

 穴場観光地・茨城。春は偕楽園の桜、夏は大洗サンビーチの海、秋はひたち海浜公園のコキア、冬は大洗のあんこう鍋。。実は1年中楽しめる場所です。その中でもおすすめなのが大洗の #悠久 。  大洗漁港周辺の飲食店街とは道路を跨いで反対側。街中にポツンとありますが、昼時はいつも行列なのですぐに見つかります。ここで食べてほしいのが鮪。 ☆まぐろ丼 (1880円) 赤身、中トロ、中落ち ☆まぐろ浜ずくし(2280円) 赤身、中トロ、大トロ2貫ずつ、他3貫 ※ネタの価格高騰により2