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ヴィーガンしたくても大豆自給率わずか6%!自給率と海外で主流の遺伝子組換え大豆について

前回、日本の食卓に並ぶ食材の自給率と日本農業を応援する方法について書きました。この記事で大豆の自給率が6%と書いたのでショックを受けた方もいるかと思います。これには少々からくりがあって、我々がたんぱく源としているものはこれ程少なくないので、このページで詳しく説明させていただきます。

大豆の2/3は油用!

この図1) でほぼほぼ全てを物語っていると思いますが、大豆の消費の2/3は油を取るために使われます。この用途は大豆の味や、たんぱく質の含有量、色や形などの外観等の大豆の品質があまり問われません。また、遺伝子組換え大豆か否かすら問われていません。このため、大豆油のための大豆は全てが海外産になってます。

国産大豆

大豆油の用途としては、天ぷら油、サラダ油(マヨネーズやドレッシング)、ショートニングの原料となります。スーパーで「キャノーラ油」として売られているのが菜種油で、「サラダ油」として売られているのが大豆油メインに菜種油を配合したものになります。
大豆を搾ったあとの粕が大豆油かす(大豆ミール)になります。「大豆油かす」は名前に油という文字はありますが、中身には油がほとんど含んではおらずたんぱく質の含有量が高く、家畜の飼料、発酵(味噌や醤油の原料)となります。多くの家畜がコーンを炭水化物源に、大豆油かすをたんぱく源に育てられています。

食用大豆は25%が国産!

油は100%が海外産でしたが、豆腐などになる食用の大豆では25%が国産です。これは業務用(食堂や居酒屋で使われるもの)や加工用(更なる加工食品になるもの)も合わせた数字ですので家庭用(我々がスーパーで買うもの)はもっと国産大豆を用いた商品が多くなっていると推定されます。実際にスーパーでの大豆商品にはけっこうな割合で国産大豆と書いてあります。
食用大豆の内訳は半分以上が豆腐で、次に納豆、煮豆総菜、味噌、醤油と続きます。いずれも古くから日本の食生活には欠かせない食べ物たちです。大豆をたくさん食べようとするとどうしても食品包材が多くなってしまうのがエコではないのですが、包材を差し引いても肉を食べるよりは大豆を食べた方が圧倒的に環境に優しいと筆者は考えています。また、肉の自給率は50%ですが飼料の75%を海外に頼っていますので肉を食べるよりは大豆を食べた方が国内農業を応援することになると思います。
しかし、食材としてみた場合は、食用とはいえ原型のまま食べる用途が煮豆くらいで残りはあまり原型を留めていない加工食品がほとんどというのが大豆の食用の特徴です。これは大豆(というか豆類全般)が物理的に固い上にタンパク質が消化しにくいため、伝統的にそのまま食べることよりも様々な形で加工されて食べやすく、消化しやくして、食べられてきたという経緯があります。

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しかし、加工原料としての大豆は野菜や果物のように新鮮さで勝負することができません。他の国産の農作物が差別化要因としている味、見た目の良さ等での高付加価値化が難しく、国産品も価格競争に巻き込まれています。価格競争になると耕作地面積の狭い日本では厳しい戦いとなります。
なるべく国産大豆と書いてある製品を買って日本の農業を応援して頂けると幸いです。

国産大豆の生産地

厳しい状況の国産大豆ですが、国内ではどこで生産されているのでしょうか。都道府県別のランキング2) を見てみますと

北海道 93000t
宮城  18800t
福岡  10300t
佐賀  10100t
秋田   8650t
滋賀   8070t
青森   6050t
新潟   5890t
岩手   5660t
山形   5550t

となっております。主な産地が日本の北と南に分かれているのはたばこや麦と傾向が似てますね。これは大豆が乾燥させたものを流通させていることや栽培期間が長くて面積が広い方が有利であることと関係があるのかもしれません。しかし、このいずれもが海外の農業と競争した場合には日本の農業にとって不利に働いております。加えて遺伝子組換えの問題があります。

大豆の単収と遺伝子組換え

農地10aで収穫した大豆の量(kg)を大豆の単収(kg/10a)と言います。大豆の単収を比較する2) と

アメリカ:358 日本:166

となっております。なんと!アメリカでは同じ耕作地から日本の倍以上の大豆が収穫できます!アメリカでの大豆はほぼ遺伝子組換えで日本の大豆は遺伝子組換えではありません。日本人の倍以上に肉を消費するアメリカで遺伝子組み換え技術が無かったら今以上の畑が必要になるので、このような観点から見ると遺伝子組換え技術は地球に優しいと言えます。
また、遺伝子組換え作物は除草剤耐性を持つものがほとんどです。除草剤耐性があると耕さずに種を植えて除草剤で除草するというものすごい省力化された農業が可能です。詳細はこちらもご覧ください。

大豆の競争力の観点からするとアメリカの様に日本も遺伝子組換え技術をばんばん使って単収を上げて省力化して安く大量に生産していくべきだという考え方もあるかと思います。しかし、日本の農地は狭いため、例え遺伝子組換え技術をつかっても米国産大豆との価格競争には絶対に勝てません。一方で、ほぼ遺伝子組換え大豆生産になった米国でも非遺伝子組換え作物のニーズが高まっています。日本産大豆の世界での生産量は本当にごくごく僅かなので、むしろ希少な非遺伝子組換えで美味しいものを作って高く売る戦略の方が正しいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

1) 農林水産省「大豆をめぐる事情(平成29年)」http://jsapa.or.jp/pdf/soy_info/index-23.pdf

2) 農林水産省「大豆をめぐる事情(令和2年)」
https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/daizu/attach/pdf/index-143.pdf



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