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『Allbirds』蓑輪光浩さん | ビジネスの力で、気候変動を逆転させる。ひとつのスニーカーから伝う、社会へのメッセージ

サステナビリティを継続的に学ぶラーニングコミュニティ「Sustainability College」。月に2回の授業のうち、1回は多種多様なフィールドで活躍されているゲストをお招きした「講師回」、2回目は生徒同士の交流や知恵を交換し合う「ゼミ回」を行っています。

「#サスカレ授業参観」では、講師回のダイジェストをお届け。講師による45分間の講義とそれを受けた生徒たちからとめどなくあふれる質問たち...。「Sustainability College」が普段どんなふうに学びを高めているのか、その様子をレポートしていきます!

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10月講師回にお越しいただいたのは、『Allbirds』の蓑輪光浩さん。「ビジネスの力で、気候変動を逆転させる」というミッションのもと、自社のカーボンニュートラルの達成に留まらず、独自のカーボンフットプリント算出キットを公開など、オープンソースによる世界全体でのイノベーションを促す取り組みも行っています。また、11月3日、米ナスダックに新規上場したことでも話題となりました!

どこを切り取っても、“矛盾の無さ”に驚かされる『Allbirds』。その出発点は、「ロゴを無くしたシンプルな靴が欲しい」「再生可能な素材を人々に求められるプロダクトとして届けていきたい」という、ふたりの創業者の願いからでした。

サステナビリティに注目が集まる現在、全世界の路面店の中で、なんと日本の原宿店が2020年の売り上げ一位に! サスカレの中でもファンが多くサステナブルファッションを代表する『Allbirds』だからこそ、「ぶっちゃけどうなの?」といった、こぼれ話に期待が集まる回となりました。

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Allbirdsマーケティング本部長 蓑輪光浩さん

1997年NIKE JAPAN入社。ワールドカップ、箱根駅伝、NIKEiDをはじめとしたマーケティングに携わる。2008年にNIKE EUROPE赴任。2011年よりユニクロにて、錦織圭らトップアスリート契約、PR広告戦略、商品開発に携わる。2016年よりレッドブル入社しフィールド・マーケティングを統括。2018年にビル&メリンダ・ゲイツ財団 東京オリンピック プロジェクトマネージャー就任。2019年より現職。

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Q1. 『Allbirds』の靴は、その商品の生産過程でどれくらいのCO2が排出されたかがひと目でわかるように、カーボンフットプリントが記されています。

『Allbirds』全体では、カーボンニュートラルを実現しているということですが、オフセットする取り組みにはどんなものがありますか?

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各プロダクトに記載されたカーボンフットプリント

カーボンネガティブな素材もあるんですけど、社会活動をするとどうしてもCO2を排出してしまいますよね。そのため、出してしまった分を会社全体でオフセットしています。ブラジルの熱帯雨林を再生させるプロジェクトやクリーンエネルギーなど、主に南米やアメリカの「土地」「エネルギー」「空気」の3つの分野ですね。私たちが心から信頼できるところをサポートしています。

また、『Allbirds』の公認アンバサダーがイベント出演などで移動する際に出るCO2を計算し、そのオフセットにかかる費用が500ドル以内であれば、カーボンフットプリントゼロで移動できる仕組みにしています。他に聞いたことのない例ですよね(笑)。

そういったカーボンフットプリントの計算は、本社にいる少人数の女性社員がやってくれているんです。全部算出するはなかなか骨の折れる作業ですが、リーダーのHANAさんという人のスキルは本当に誇らしくて、「サステナビリティマフィア」と呼ばれているくらいです(笑)。Adidasとのコラボレーションでも重要なパートを担っている方なので、いつか日本にお呼びたいなと思っています。

Q2. 『Allbirds』ではターゲットとなる人たちを「チャーリー」と呼んでいます。改めて「チャーリー」とはどんな存在なのか教えてください!

チャーリーは、ブランドを体現してくれて、生き方に共感できるような人たち。世界中のマーケティング担当者が集まって、各国のチャーリーがどんな人たちなのかプレゼンするんです。情熱的で楽観的で、家族を大事にして、社交的で健康に気を遣っていて...などなど。各国で出し合った上で、すり合わせていきます。そこから見えてきたチャーリーは僕らの北極星のようなもの。全ての商品はこの北極星に向けて作られています。

100%そのチャーリーに当てはまる人はいないかもしれません。住む場所によって年収や環境は違うし、全世界で合わせるのは至難の業です。細かく決めていくというよりかは、会社全体で共通認識を持ち、呼称をつけてみんなで愛着を持つことが大切です。

「ペルソナ」や「インフルエンサー」って呼ぶよりも「チャーリーさん」って呼んだほうが、なんだか可愛いじゃないですか。ウィットに富んでいるところが僕も気に入っています。

Q3. 店舗に行くと、店員さんのプロダクト愛をひしひしと感じさせられます。サステナブルな商品を作るとき、現場のスタッフがその魅力をしっかり説明できることは大切なことだと思うのですが、蓑輪さんがコミュニケーションをとる際に意識していることはありますか?

そうですね。お店のスタッフのことはすごく大切にしています。週に2〜3回はお店に通うようにしていて、「今日は天気悪かったけど、どうだった?」「どんなお客さんが来た?」といったことをよく聞いていますね。逆にスタッフ側は、僕らマーケティング担当が考えていることを引き出してくれます。

意識していることは、本社側から「これをやって」と指示するのではなく、ヒントを与えながら、みんなが自ら動きたくなるように焚き付けること。スタッフの子たちが動いてくれた時には、バチっとこちらで資料を作って全力でサポートするようにしていますね。

もちろん教育も大切ですが、空き時間でのスタッフ同士のコミュニケーションが肝なんです。「ここのヴィーガンレストランがおいしいよ」という世間話から、実際にイベント開催につながるような意見が飛び交うこともあります。

あとは、『Allbirds』に入る前から、会社で知り合ったネットワークをすごく大事にしていますね。20代の頃に出会った同世代は、僕も含めてみんな当時はペーペーだったけど、今はそれぞれの場所で活躍している人たちばかりで。同世代と仲良くしておくと、いずれその関係が熟成されて面白い業界になっていきますよ。

Q4. カーボンフットプリントの算出キットの公開や生産工程の透明化など、オープンソースはすごく聞こえがいいし、取り組みとしては素晴らしいと思います。

しかし、サステナブル事業が広がっていくほど『Allbirds』ブランドとしての特異性を維持していくことが難しくなっていくのではないかと感じています。オープンソースをしていくその裏で、実はブランド確立のために行っている戦略があったりするのでしょうか?

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まず、オープンソースによる不利益みたいなことは全く考えていないです。靴業界の中で、『Allbirds』のシェアは0.1%を切るのが現状。他社との競争をがんばるよりも、情報をオープンにすることでどんどんイノベーションを後押しして、最終的に材料コストが下がっていくほうが僕たちにとっては重要です。

3〜5年後には、「サステナブル」という言葉はもう使わない気がしていて。サステナブルであることがスタンダードになる時代をいかに早く迎えられるか。そこに注力する限り、今は競合を考えている余裕はないですね(笑)。

僕が初めて『Allbirds』の靴を履いた時、あまりの気持ちの良さに驚きました。創業してたったの3年でこんなにいい靴が作れるのであれば、10年後、時代を代表するプロダクトを作れるはずだという期待を胸に入社したんです。『Allbirds』の靴は、気候変動にとって勝負となるこの20〜30年の間に「みんなの叡智を集結して逆転させよう!」というメッセージそのものですし、この時代のシンボルでありたいと思っています。


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「Sustainability College」の講師回では、毎回講師からの宿題が出されます。今回は、こちら!

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自社の商品やプロジェクトのチャーリーを想像しながら、どんな哲学を持ち、どんな商品やサービスを世の中に届けていくのか、各自考えてくることが宿題です。(サスカレの宿題は強制ではありませんよ^^)

ぜひこの記事を読んでくださったあなたも、『Allbirds』の取り組みをヒントにしながら、考えてみてくださいね!

次回の「#サスカレ授業参観」では、サステナビリティ研究者の石原祥子さんの回をお届けします!お楽しみに。

今後のサスカレの予定

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【おまけ】今月のサスカレニュース
サスカレに参加している生徒や学級委員長の近況など、ちょっとしたニュースを毎月お届け!

▼株式会社浜田とNPOザ・ピープル「いわきリサイクルコットンプロジェクト」開始
https://greenz.jp/2021/10/20/iwaki_the_people/

▼グリーンズが映画「ザ・グリーン・ライ」の上映会を開催
https://greenzcinema2021.peatix.com/

▼SOLIT株式会社 ”やさしい株式”による資金を調達を開始
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000070106.html

執筆:佐藤 伶

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