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【多様性を認め合う社会のデザイン】トランスジェンダーの性別適合手術は必要か?

私たちが住む社会は元々、マイノリティを尊厳するようにデザインされていなかった。
元々社会に存在していたにもかかわらず、多くの人(マジョリティ)と異なる特徴を持っているために社会からの充分な理解を得られずに、苦しい思いをしているマイノリティが多い。
性的マイノリティであるトランスジェンダーが、法律上の性別認定をするときに必ず求められる「性別適合手術」について問う

多様性とは何か

マイノリティもマジョリティも、互いを受け入れ合い、互いに何も否定せず、互いにアイディアを高め合い、新しい発想やイノベーションにたどり着くような状況や文化、精神のあり方のことを、ここでは「多様性」という。

私たちが社会インフラとして活用しているインターネットやデジタル技術は、サンフランシスコ周辺(シリコンバレーなど)に存在していた、LGBT+やヒッピー、音楽家、ハッカー、外国人や移民、研究者、芸術家、投資家などの多様な文化のなかから生まれたともいわれている(インターネットは米国国防総省の高等研究計画局(ARPA)が1969年に構築した実験ネットワークを起源としている)。

日本で、こうした多様性を認め合う社会のデザインをどうするか?
多様性を認め合う社会をデザインするときに私たちが受け入れるべき状況は「犠牲」なのだろうか?
1回目は性的マイノリティであるトランスジェンダーが、法律上の性別認定をするときに必ず求められる「性別適合手術」について問う。

性同一性障害者特例法

(1)もし未成年なら20歳まで待ち
(2)もし結婚していれば離婚して
(3)もし未成年の子がいればその子が20歳になるまで待ち
(4)子宮卵巣または精巣陰茎の摘出手術を受け
(5)尿道を延長させて陰茎や陰嚢を形成したり自分の性器を切り取ったりする手術を受ける

これらをすべてクリアしないと、トランスジェンダーは法律上の性別認定(戸籍記載変更)を受けることができない。
これを規定する法律を「性同一性障害者特例法」という。

これらの規定をなくすと何が起こり得るか?

(1)例えば15歳で性別適合手術を受けて大人になってから後悔したり
(2)同性婚が生じたり
(3)「女である父」「男である母」が生じて子どもが混乱したり
(4)法律上の男性から子どもが生まれたり
(5)公衆浴場やスパなどに性別適合手術を受けていない人が入ってきたりする

なので、「社会に混乱を生じさせかねない」といったことが法律上の正当化の根拠とされている。

※日本では、公衆浴場組合は戸籍ではなく、身体的な性別を基準として男女を分けているため、男性器がついている人は女湯に入ることはできない。

ここまで読んでいただければ、感情的に短絡的に賛成反対を唱えることができる問題ではないことがお分かりいただけると思う。
意見の対立があると多くの人が感じているテーマであるが、そこに同意点を探し、共通の価値観を形成していくことが求められている。

トランスジェンダーはどのような思いをもっているか?
現に日本にも数多く(把握されているだけで約5万人)いるトランスジェンダーを社会が認めて受け入れるためにはどうすればいいのか?

論点を突き詰めると・・・

・トランスジェンダーの存在を受け入れて多様な文化を生み出していくときに起こり得る状況は(特にマジョリティにとって)「犠牲」なのだろうか?

・生まれもった身体と生まれもった心が異なっていたという、罪のない人びとが、自分らしくありたいと望む自然な気持ちに対して、私たちの社会はなにか犠牲を求めるべきであろうか?

・もしやむを得ずそうであるならば、その犠牲はどのレベルまでが妥当なのだろうか?

性同一性障害者特例法の規定(1)~(5)、特に性別適合手術に対するあなたの考えを教えてほしい

---より詳しく知りたい方のために---


自認する性で生きていくための戸籍記載変更

トランスジェンダーとは、出生時に割り当てられた性別(身体の性)と異なる性自認(心の性)をもち、他性で生きている人のこと。
トランスジェンダーのなかには、法律上の性別認定(戸籍記載変更)を求める人がいる。
誰にとっても、自己の性自認にふさわしい性別記載がなされることは、進学、就職、結婚、パスポート、健康保険、プライバシー権、表現の自由、移動の自由など社会生活を営む上で必須のことである。

法律上の性別認定のためのハードル

トランスジェンダーのなかには、自認する性と身体的な性を一致させるための外科的手術(性別適合手術)を望む人も、外科的手術までは望まない人もいる。
しかし、法律上の性別認定、つまり戸籍上、性別を変更したい人は、2名の精神科医による診断書に加えて、外科的手術を含む次の5要件のすべてを満たすことが求められる。
その上で、家庭裁判所に性別の取扱いの変更を申し立てて審判を求めることができる。
これを規定する法律を「性同一性障害者特例法」という。

1. 年齢要件「20歳以上であること」(成人年齢の変更とともに、2022年4月から18歳に改められる)

2. 非婚要件「現に婚姻をしていないこと」

3. 子なし要件「現に未成年の子がいないこと」

4. 生殖不能要件(いわゆる断種要件)「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること」(つまり卵巣または精巣の摘出)

5. 外性器近似要件/外観要件「その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること」

外性器近似要件はマジョリティにも直接的に関係する要件

法律上の性別認定のために、トランスジェンダーは、自分の性器の外から見える部分に、心の性と同じ性のマジョリティの性器と似たような外観を備えていることが求められている。
つまり、子宮卵巣または精巣陰茎の摘出手術を受け、尿道を延長させて陰茎や陰嚢を形成したり自分の性器を切り取ったりする手術を受けないと法律上の性別認定を受けることができない。

この求めに対して、「トイレ、更衣室、公衆浴場などの施設については、使用目的に沿った対応が可能であり、トランスジェンダーの性自認に則した使用を保障する設備や環境の整備が優先されるべきである」という反対意見がある。
外国では、スパを利用した女性客が、トランスジェンダーの女性が女性専用エリアで男性器を露出しているなどと苦情を申し入れたことから、スパの対応に反発する人たちとトランスジェンダー差別に反対する人たちが衝突し、暴行も発生して流血騒ぎになっている例もあることから、「使用目的に沿った対応」や「設備や環境の整備」の具体的な中身は、マジョリティも受け入れることができる内容であることが重要であるといわれる。

なお、「公衆浴場などで、社会生活上混乱を生じる可能性がある」ということについては、Surfvote上で、
【トランスジェンダー】温泉や浴場、スパなど裸になる空間へのアクセスをどう考えるか?
というイシューを取り上げており、回答者の約83%(12月3日時点)が、
「温泉や浴場、スパのように裸になる場所で性別適合手術を受けていない人が入るのは許されない」
と答えている。

※(再掲)日本では、公衆浴場組合は戸籍ではなく、身体的な性別を基準として男女を分けているため、男性器がついている人は女湯に入ることはできない。

「性同一性障害者特例法」各要件の理由と指摘されている問題

1. 年齢要件「20歳以上であること」(成人年齢の変更とともに、2022年4月から18歳に改められる)

■理由:
・性別はその人の人格にかかわる重大な事柄であり、手術による性別の変更が不可逆的であるので、慎重に判断する必要があるから。
・手術のインフォームド・コンセントは重要であるから。

■問題:
・トランスジェンダーの60%~90%は思春期に性別違和感を自覚し始めている。

2. 非婚要件「現に婚姻をしていないこと」

■理由:
・婚姻しているトランスジェンダーに性別取扱いの変更を認めると同性婚の状態が生じてしまうから。

■問題:
・配偶者が、相手方がトランスジェンダーであることを認識、理解し、その性別変更に賛成するとともに、双方とも婚姻の継続を望んでいる場合には、非婚要件は、当事者に離婚して性別取扱いの変更を申請するか、婚姻継続のために変更をあきらめるかの二者択一を迫ることとなる。

3. 子なし要件「現に未成年の子がいないこと」

■理由:
・「女である父」「男である母」が生じることになると、「父=男」「母=女」という図式が崩れ、子に心理的な混乱や不安などをもたらしたり、親子関係に影響を及ぼしたりしかねないから。

■問題:
・家庭内に「女である父」や「男である母」がいないと子どもに心理的混乱をもたらすという理由付けには根強い「無意識の偏見」が内在している。
・トランスジェンダーの人びとがもつ、私生活と家族生活の尊重を受ける権利を侵害する。

4. 生殖不能要件(いわゆる断種要件)「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること」(つまり卵巣または精巣の摘出)

■理由:
・性別取扱いの変更後に、残存する元の性別の生殖機能により子が生まれるならば、さまざまな混乱や問題が生じる可能性があるから。

■問題:
・性別変更後に、残存する生殖機能によって子が生まれると、さまざまな混乱や問題が生じる可能性がある、という非常に例外的なケースを排除するために生殖機能の剥奪という重大な身体的侵襲を正当化することはできない。
・外科的介入の義務づけは強要に該当する。

5. 外性器近似要件/外観要件「その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること」

■理由:
・公衆浴場やスパなど裸になる空間で、社会生活上混乱を生じる可能性があるから。

■問題:
・費用負担、年齢や体質など身体的な理由、身体にメスを入れたくない思い、医療事故のリスクなど、さまざまな事情で手術を受けることのできない人がいる。
・「身体への侵襲を受けない権利」は、憲法13 条が保障する人格権であり、目的(戸籍上の性別変更)と手段(性別適合手術)があまりに不均衡である。
・トイレ、更衣室、公衆浴場などの施設については、使用目的に沿った対応が可能であり、トランスジェンダーの性自認に則した使用を保障する設備や環境の整備が優先されるべきである。
・外科的介入の義務づけは強要に該当する。
・トランスジェンダーの人びとに対する広範な偏見を助長している。

特に、「生殖不能要件」と「外性器近似要件/外観要件」は、法律上の性別認定を求めるトランスジェンダーに、長期・高額で、侵襲的かつ不可逆的な医療処置を要求している。
性別適合手術は、2018年4月に保険適用され、70万円~200万円にもなる手術費用が原則3割負担で済むようになったものの、大半の患者は手術前に保険適用外の自由診療であるホルモン療法を受ける必要があるなど、金銭的負担も大きい。
また、戸籍上の性別を変更するために性別適合手術を受けたにもかかわらず、自身が性別不合ではないことにあとから気づく例もある。
しかし、一度変えた戸籍の性別を再度戻すことを戸籍制度は想定しておらず、かなり難しいものとなっている。

性同一性を求める人は障害者なのか

法律上の性別認定のために、性同一性障害者特例法が求めるこのような要件は、性同一性障害者特例が「精神疾患」の診断・治療をベースにした「医学モデル」の法律であるからという指摘がある。
身体の治療に主眼をおく「医学モデル」から、本人の性自認のあり方に焦点をあてた「人権モデル」へ移行することが求められている。
精神疾患の国際的な診断基準やWHOの国際疾病分類では、トランスジェンダーを精神疾患から除外し、「性同一性障害」の概念をなくす(「性別違和」「性別不合」と表現する)ことが決まっている。

性別取扱いの変更審判

トランスジェンダーとして把握されている人は、全国で約4万6千人と推定されている(2018年時点)。
しかし、性同一性障害者特例法施行後、2018年までに性別取扱いの変更審判を受けた人は、8,676名であり、トランスジェンダー推定数の2割弱にとどまり、手続の利用者は少ない。

「性同一性障害者特例法」に対する反対意見の要約

法律は人びとに対し、自らのあり方を反映していないアイデンティティ表記をもつことを強制すべきではない。
トランスジェンダーの人びとに対し、性別認定を得るために、あるいは性別認定に伴ういかなる権利を得るためにも、望まない医療処置を受けるよう強制すべきではない。

世界の状況

欧州諸国をはじめ、トランスジェンダーの権利保障が着実に進められている国もある。
欧州諸国の中では、法律上の性別変更手続に医師の診断を必要としない国が9か国存在する。
しかし、世界では、トランスジェンダーなどへの嫌悪や偏見が多く、トランスジェンダーに対する殺人・暴力事件はあとをたたない。
また、また、ジェンダー抑圧構造を問題視してきたフェミニストの一部からも、「トランス女子がスポーツ競技に参加することは女子選手の入賞機会を奪う」など、トランスジェンダー排斥の動きがある。
LGBの人たちの中には、T(トランスジェンダー)を含んでほしくないという意見もみられる。

スポーツ競技

女子スポーツ競技においては、国際オリンピック委員会(IOC)が2015年に、トランスジェンダー選手の出場について、男性ホルモンのテストステロン濃度が所定期間にわたり一定値以下であるなどの条件を満たせば女性として競技することを認めるとするガイドラインを策定しているが、
「男性として第二次性徴期を過ごした人は、骨密度や筋肉量が女性より高くなるなど、生物学的に有利で不公平である」
「思春期を男性ホルモンシステムのもとで生きたことが、女子スポーツにおいてどれほど有利になるか」
「ホルモン治療は選手にドーピングを許すようなものだ」
などの反対意見がある。

英国ではラグビーのレフリーが、トランス女性が女子チームで自在に力を発揮する試合を受け入れることができずに辞める人が続いた。
「スポーツは女性を解放し、地位を向上させ、女体の柔軟さや美しさ、力強さをもって少女たちに勇気を与えてきた。その女子スポーツが無残にも蹴散らされている様子を見るのは胸が痛む」という意見もある。

SNS上のアンチ・トランスジェンダーの言説

SNSでトランスジェンダー関係キーワードで検索すると、トランスフォビアやアンチ・トランスジェンダーの言説が拡散されていることがわかる。
拡散するのは主にストレート(キーワード【ストレート】参照)の人びとであると思われる。
トランスジェンダーの権利を擁護する書込みもある。
アンチ・トランスジェンダーが抱く違和感の論点は、自認(性自認)が主観的ではないか、ということであると考えられる。
性同一性障害の診断を受けて診断書を提示することで解決される問題があるとする意見や、その基準に対する不信や不理解もある。

性的マイノリティの尊厳のために

性的マイノリティ(LGBT+)の尊厳を保障するために以下が提言されている。

1. 性同一性障害者特例法廃止とそれに代わる新法の制定
2. 性的マイノリティに特化した人権保障法の制定と実効性の高い政策の実施
3. SOGI差別(=性的指向・性自認にもとづく差別)の解消に向けた法整備


なお、Surfvoteは中立的なプラットフォームなので、多様性を認め合うべきではないという意見があればその理由や思いも共有していただきたい。

キーワード

【多様性(ダイバーシティ)】
いろいろな種類や傾向の属性や特徴があること。変化に富むこと。幅広く性質の異なる群が存在すること。
属性や特徴とは、性別、人種、国籍、年齢、SOGI(性的指向・性自認)、障害の有無、価値観、宗教、経験、嗜好、第一言語、受けてきた教育、コミュニケーションの取り方など。
ここでは、マイノリティもマジョリティも、互いを受け入れ合い、互いに何も否定せず、互いにアイディアを高め合い、新しい発想やイノベーションにたどり着くような状況や文化、精神のあり方のことを「多様性」という。

【性的マイノリティ/LGBT+】
「性的指向」「性自認」「ジェンダー表現」「性的特徴」のいずれか、または複数において、マジョリティとは異なる多様な性を生きる人びと。
性別二元制(人間は一貫して男性と女性に明確に分けられる存在であり、また分けられるべきだと考えること)および異性愛中心主義(男性と女性は性的・感情的・情緒的に惹かれ合う存在であり、また惹かれ合うべきだと考えること)とは異なる生き方をする人々を総称する言葉。
なお、LGBT(LGBTQ+)の割合は、日本では株式会社LGBT総合研究所(博報堂DYグループ)(PDF)、日本労働組合総連合会(PDF)、電通ダイバーシティ・ラボなど複数の調査結果があるが、2019年以降の調査では約8%~10%(10人から13人に1人)という結果が得られている。
欧米では、アメリカは約4.5%(2017年)、イギリスは約6.5%(2016年)という調査結果がある。

【LGBT+】
レズビアン(Lesbian)・ゲイ(Gay)・バイセクシュアル(Bisexual)・トランスジェンダー(Transgender)という4つの主体概念を並べた言葉である「LGBT」が、現在では他の主体概念(クィア、クエスチョニング、エイセクシュアル、パンセクシュアル、Xジェンダー、トランスセクシュアル、ノン・バイナリー、ジェンダー・ノン・コンフォーミング、インターセックスなど)を含む広い概念として用いられている。
4つの類型以外が含まれることを明確にする目的で「LGBTQ」「LGBTQIA」「LGBT+(LGBTプラス)」などと表現される場合もある。

【性的指向】
異なるジェンダーまたは同一のジェンダーまたは一つ以上のジェンダーの個人に対する、一人ひとりの深い感情的、情緒的および性的な関心の対象範囲、ならびに、それらの個人との親密なおよび性的な関係性。

【性自認】
身体に関する個人の感覚、ならびに服装、話し方および動作などのその他のジェンダー表現のような、一人ひとりが心底から感知している内面的および個人的なジェンダー経験。
出生時に与えられた性と合致する場合もあれば合致しない場合もある。

【ジェンダー表現】
個人の服装、髪型、装飾品、化粧を含む身体的外観、および動作、話し方、振る舞い方、名前および身分証明による自己のジェンダーの表象であり、ジェンダー表現は個人の性自認と一致する場合もあれば一致しない場合もある。

【性的特徴】
性器および他の性と生殖に関する解剖学的構造、染色体、ホルモン、思春期以降に生じる第二次性徴を含む、性に関連する個人の身体的特徴。

【トランスジェンダー(トランス女性/トランス男性)】
出生時に割り当てられた性別とは異なる性別の性自認(自らの実感や周りが考えるジェンダー)・ジェンダー表現のもとで生きている人々の総称(性同一性障害者を含む)。
出生時に割り当てられた性別は女性であり、男性として生きている人を「トランス男性(Trans-man)」といい、出生時に割り当てられた性別は男性であり、女性として生きている人を「トランス女性(Trans-woman)」という。

【性別適合手術】
性自認に合わせて外科的手法により形態を変更する手術療法のうち、内外性器に関する手術を指す。
以前は「性転換手術」と呼ばれていた。
トランス男性に対する乳房切除術、子宮付属器切除術、尿道延長術、陰茎形成術、トランス女性に対する除睾術、陰茎切断術、造腟術などがある。
1998年10月に埼玉医科大学において日本で初めて公に性同一性障害の治療として性別適合手術が施行された。

【SOGI】
性的指向(Sexual Orientation)と性自認(Gender Identity)の英語の頭文字をあわせた用語。
性的マイノリティ/LGBT+のような主体を表す言葉と並行して、性に関する個人の属性や特徴をあらわす言葉の総称として用いられる。

【ストレート】
身体的性と自分で認識している性が一致しており、かつ異性に対して恋愛感情をいだくセクシュアリティのこと。

【トランスフォビア】
トランスジェンダーなどへの嫌悪や偏見。
トランスジェンダーの人や性別二元制(人間は一貫して男性と女性に明確に分けられる存在であり、また分けられるべきだと考えること)、異性愛中心主義(男性と女性は性的・感情的・情緒的に惹かれ合う存在であり、また惹かれ合うべきだと考えること)に当てはまらない人に対する不寛容、否定的な態度、言動、嫌悪を意味する言葉。

【性同一性障害の診断と診療】
性同一性障害の診療はジェンダークリニックで行われる。
初めに精神科医が本人や家族から、現在の状態や成育歴を聴取して「心の性」を確定し、不安やうつなどの精神状態、学校や職場などにおける社会的適応の状態などを考慮して、ホルモン療法や手術療法などの身体的治療のスケジュールをコーディネートする。
産婦人科医や泌尿器科医は,性器の形態などを含めた身体的診察、性染色体の検査、ホルモン検査などにより「身体の性」を確定する。
この段階で心の性と身体の性とが一致していなければ、性同一性障害の診断がなされる。
外部施設の第三者の委員の加わった適応判定会議にて承認されれば、ホルモン療法、手術療法へと進むことができる。

【性同一性障害者特例法 第三条】
(性別の取扱いの変更の審判)
1 家庭裁判所は、性同一性障害者であって次の各号のいずれにも該当するものについて、その者の請求により、性別の取扱いの変更の審判をすることができる。
一 二十歳以上であること。
二 現に婚姻をしていないこと。
三 現に未成年の子がいないこと。
四 生殖腺せんがないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。
五 その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。
2 前項の請求をするには、同項の性同一性障害者に係る前条の診断の結果並びに治療の経過及び結果その他の厚生労働省令で定める事項が記載された医師の診断書を提出しなければならない。

主に参考にした資料

「提言案性的マイノリティの権利保障をめざして~トランスジェンダーの尊厳を保障するための法整備に向けて」(日本学術会議・幹事会・内閣府)
「尊厳を傷つける法律」性同一性障害者特例法改正に向けた気運の高まり(ヒューマン・ライツ・ウォッチ)
「What the Dormouse Said: How the '60s Counterculture Shaped the Personal Computer Industry(60年代のカウンターカルチャーはどのようにしてPC業界を作り上げたか)」(John Markoff/The New York Timesのシリコンバレー担当記者)
「アジア女性資料センター2019『女たちの21世紀』No.98(特集:フェミニズムとトランス排除)」(アジア女性資料センター/夜光社)
「性同一性障害の診療の流れ」(公益社団法人 日本産婦人科医会)
「性同一性障害者特例法における性別取扱いの変更と生殖腺除去要件の合憲性」(『新・判例解説Watch、憲法N.156』濱口晶子)
「社会の多様性とは? 「9割が勘違い」する本当の意味」(altea運営チーム)
「多様性ってそもそも何?その必要性を考える」(IDEAS FOR GOOD編集部)
「Wikipedia」(ウィキメディア財団)

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