0.アンガスの墓地跡
私の最も古い記憶はアンガスの墓地跡でのことだ。太陽の光と見紛う程ベタついた月の明りに映し出された私の影。そのシルエットをなぞるように意識が輪郭を持ち始めた。その場所はかつて祭壇として用いられた由緒ある土地なのだが、地中に眠るお友達の皆様方はかつて人間であった事が認識できないほどには腐食が進んでおり、大自然と人間とを分かつ境界は既に失われていた。ちなみに、いわゆる魂と訳されるようなエネルギーもとうに消え失せていて、どうやっても皆様方と再び相まみえることはできない。そんな場所だ。