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能楽師、観世栄夫氏の言葉「演じる時、役の血流を考えろ」の巻

観世栄夫先生(観世流シテ方能楽師、俳優、演出家 1927-2007)の演出された舞台に出させていただいたことがあり、その時に教えてもらった言葉です。

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それ以前に能舞台で、やはり能楽師であり、俳優でもあるN氏との「山月記」を観劇する機会がありました。

その舞台で、お二人の違いをはっきり見ました。
N氏の朗々と出てくる気持ちのいい言い回しに比べて、観世氏の語りがとってもよく理解できたのです。

片方は、音として聴こえ、片方は、意味がとれたのです。
明らかに違ったものとして受け取れました。

観世先生は、何も派手なことはなく、淡々とした物言いでした。が、その地味な語りの中に、情景が見えるし、心情が痛いほどわかるのです。

深く理解し、自分の体験のように語られていたのだと思います。でも、どういう風にしているのか、とても知りたいとその時に思いました。

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なので、こんなに近くにいらっしゃる時を逃したくなく、思い切って稽古の休憩時間にそばに行き、勇気を出して聞きました。

後で周りの人から、先生に直接、話を聞くなんて、とてもできないことだから、みんな耳をダンボにしていたわよ、と言われ、私はそんな大それたことをしてしまったのか、とちょっと後悔しました。


そこで、いただいた言葉が、タイトルの「その役の、その時、その時の血流を考えなさい」でした。絶えず反応し、心の変化が起き、その都度血の流れも変わるはずだから、と。


心の変化によって、筋肉が変わることは意識していたけれど、血にまでは考えが及ばなかったので、すごく驚いてしまいました。


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高校3年生から、NHKのラジオドラマに何本も出させていただき、数多くの俳優さんと共演する機会がありました。


その中で、本当に素晴らしいと感動した方がいます。その方が話しだすと、もう何もかもが目の前に立ち現れるのです。

本読みの時から、私はびっくりして、いったいどうやっているのかしらと、本番では、ずっとその方に集中していました。が、つかめません。

そして、収録後、その方の後を追ったのです。
NHKの廊下を走って追いかけたのです。


「すみません、教えてください。佐藤さんがお話なさると、全部見えてくるのです。どうすれば、そんなことができるのでしょうか?お願いします。」


今でも、はっきりとこの時のことを思い出せます。


佐藤慶さんは、「何もかも全部を出来る限り、具体的にすることだよ。」と教えてくださいました。

         
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具体的にすること、そして、それは目に見えるものだけではないのでした。

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