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カッピングとテイスティング。

こんにちは。

前回の、コーヒーのいらんやろ情報の話しで、消費者側の意見としてお話しさせてもらってましたが、

今回は、コーヒーを見極めるプロとして、お話しさせていただきます。


まず、カッピングとテイスティングの違い。よく聞かれます。
味見は味見なのですが、実は目的が全く違うものです。

「カッピング」とは、その生豆が持つポテンシャル(潜在能力が持つ可能性)を確認するためのテストです。
カッピングスプーンという専用のスプーンを使って、2〜3cc勢いよくすすって、口内に霧吹き状に広げてフレーバーや味を見極めたのち、その液体は吐き出します。
豆の焙煎度は浅いです。


テストロースターでカッピング用の豆を焙煎中



もちろん、美味しいコーヒー豆を探し出すためのものでもありますが、ディフェクトを見逃さないようにすることも課題にはなって来ます。

セレクトした後は、ポテンシャルをどう引き出すとかではなく、どう仕上げるのか、どう扱うか、どう売るのかを決めて、焙煎プロファイルを決める。
これはロースターの仕事。

基本的にカッピングは、抽出者、カウンターマン、バリスタの仕事ではないと思っています。というか必要ないと思います。
やりたいならやればよいとは思いますが、焙煎したくなるだけです。
果ては、産地から買い付けたくなるだけです。
そして、沼。笑

すでにロースターや生豆の仕入れを兼ねてらっしゃる方々は別ですが。

カッピングは、生豆の買い付け、仕入れをする人と、ロースターだけの大切な仕事です。

コロンビアの村の農協でのカッピング



対して、「テイスティング」とは。
これは、それぞれのお店の焙煎プロファイルがほぼ確定し、そのお店でお客様に提供するときと同じ抽出器具、同じカップを使って普通に飲む。
一般のお客様に飲んでいただくための、完成された「プロダクト」の最終確認がテイスティングです。
焙煎の良し悪しとか、抽出の良し悪しを確認する。これがテイスティングです。

この「プロダクト」となったコーヒー豆をカッピングしても、あまり意味はありません。
もう、すでに商品ですので、お客様と同じ条件下で「飲む」のがテイスティングです。

お客様はカッピングのように「すする」ようなことしません。

文字通り、「味見」以外のなにものでもありません。

しかし、コーヒー屋としてはどちらもとても大切。
それでも、プロダクトとしてカップに完成されたコーヒー液をカッピングするのはかなり違和感があります。

カッピングを覚えたての人が、たまに他人の店でマイスプーン(カッピング専用のスプーンがあります。)を持ち込んで、「チュチューっ」て、やってる恥ずかしい場面をたまに見ます。笑

あれは、見てるこちらが恥ずかしいですし、かなり滑稽です。他のお客様にとって迷惑でしかないので、やめていただきたいですね。


バリスタとして、どちらが大切かと言えば、断然「テイスティング」です。

なぜなら、カッピングをしたところで、生豆を選び直せるところまで、遡れないので。
焙煎の良し悪しを判断するならやはりテイスティング。

バリスタは、メッシュや湯温、湯量、タンピング圧などをしっかりと調節することに集中すべき仕事です。
あ、接客が一番大事な仕事ですが。。

ただし、ロースターと抽出者の信頼関係はとても大切で、テイスティングなどの調整をロースターにフィードバックし、それをロースターが改善する。
逆もしかり。

ロースターが、今回の生豆の特徴とそれに対してどう焙煎して仕上げたか、そしてどういう味になる傾向にあるから、抽出ではどう気をつけるべきかなどの情報は最初に伝えるべきです。

「いつもと同じに焙煎しているから、味がおかしいのは抽出のせい」というロースターは失格です。
何をもっていつもと同じと言っているのか、、日々生豆の水分量や焙煎室の環境が変わる中で、同じことを繰り返している方が、仕上がりにブレが生じてしまいます。
そのあたりの変化を抽出者に伝え、一緒に考えてくれるロースターこそ信頼できると思います。

バリスタが焙煎もカッピングも全てをできる必要はないと思いますが、ロースターは、抽出の技術もカッピングの技術も絶対に必要です。
そして、それ以上にロースターも接客現場をよく知ることが重要です。


私は、そもそもカフェのカウンターマンですので、抽出から始まりました。
その後、焙煎、生豆の買い付けなどをしてきてますので、たまたま全てをやっておりますが、全てに手を出すと本当に大変です。



当然、私もカッピングしている時は、「商品としてのコーヒー」を楽しんで味わう立場ではなく、目利きのプロとして、酸味の質、フレーバーを「ベリー系」やら「柑橘系」やら、「プラム」やらの表現を使って、生豆のポテンシャルを評価します。

先日お話ししたとおり、この表現は現場でお客様に対しては、使用しません。
そのあたりのコントロールのように、生産者側の脳と、架け橋の脳と、消費者側の脳の使い分けがとても忙しい。笑

しかし、沼にハマっている人はそれが楽しいのです。


味覚は、鍛えると育ちます。
ですから、最初から分からなくても大丈夫です。
プロを目指す人は諦めずに、トレーニングして欲しいなと思います。

私は、幸いなことに、子供の頃から母が手作りの料理しか作らない人でしたし、基本的に薄味だったため、冷凍食品や既製品のお惣菜などの味を知らずに育ちました。
多分、とても幸せなことなんだと思います。


昔から、料理人や飲食店の経営者から、新メニューの味見をお願いされることが多く、私が「美味しい」と言った商品は売れるからと言われていました。

今でも、店で提供するメニューの商品化最終ジャッジは私です。
今、私の最終ジャッジに頼ってくれるのは、妻です。
ドリンクもお菓子も、「絶対売れるから」という理由です。

はい、実際に売れてます。笑

私には、ちゃんと売れる味の基準があります。

味覚とは、「記憶」でもありますので、味の再現性は、いつも変わらない条件下で同じ物を口にすることで、より鍛えられるのだと思います。

タバコを吸う人が味覚がブレるのはこのためで、タバコ自体が味覚を壊してしまうことはあまり無いそうです。
タバコを吸った直後のコーヒーと、吸わずに飲んだコーヒーは全く別の味がします。
タバコに限らず、めちゃくちゃ辛いカレーを食べた直後のコーヒーとかもね。。

辛いは、味覚じゃなくて痛覚なので、辛すぎるものは、絶対に食べないようにしています。

あ、通常のカレーは大好きですよ。一週間3食カレーでも良いくらい。笑
カレーとコーヒー、合いますよねぇ。辛すぎなければ。
辛いと、飲み物の温度が熱く感じやすいので、特に猫舌の人がカレーと合わせるときは、ぬるいコーヒーかアイスコーヒーがおすすめです。



だから、ペアリングはとても大切なのです。

それぞれ単品ならとても美味しいのに、合わせ方を失敗すると、どちらも不味く感じてしまう。


おっと、カッピングやらの話だった。。失礼!


ということで、カッピングも大事だけど、消費者と生産者を繋ぐ架け橋として、お客様のお口へ入る前の最後の仕事をしている私たちには、「テイスティング」がもっとも重要です。


というお話でした。


次回は、焙煎の話でもしましょうかね。

焙煎に合わせて、抽出方法を研究するのではなく、抽出方法に焙煎プロファイルを合わせるという考え方。

サイフォン用の焙煎
円錐ペーパー用の焙煎
扇形ペーパー用の焙煎
エスプレッソ用の焙煎

抽出温度に合わせた焙煎などなど。

んー
サイフォンひとつとっても、目的の味によって、撹拌やお湯の上げ方、落とし方が違うので、それだけでもそれぞれに焙煎を合わせないといけません。
サイフォンは、湯温はコントロールできないので、高温抽出向けのローストが必要ですね。


焙煎の話は、とてつもなく長くなりますので、順を追って数百回にわけましょう。


今日もたくさんお読みいただきありがとうございます。

では、また。

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