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【小説】服に痛覚がある人間(1194文字)

「うぎゃあああ!!!」
 自分は昔から服にも痛覚があるので、脱いだ服を洗濯をするとあと絶叫を上げて、その場でのたうち回ってしまう。
 だから洗濯機での洗濯はできない。

「ふーっ、こそばゆい…」
 そして洗濯はというと自分が手洗いでお風呂場でやっている。洗剤をつけて優しくゴシゴシと洗っているのだ。
 こうして、この痛覚がするという問題は解決された。だが、痛覚があると友達と遊ぶときも大変だ。

「うぎゃあああ!!!」
 友達が一緒に遊んだ時、自分の服を引っ張っられて痛すぎるあまりに絶叫してしまった。
 そのまま、痛さのあまりに泣き叫んでしまった。友達には頭のおかしい奴と思われているかもしれないが、自分は他の人とは違うんだからしょうがないじゃないかと思った。
 もちろん友達には自分の服に痛覚があるなんてことは分かってもらえないのだ。だってほとんどの人の服に痛覚なんてないのだから。
 とりあえず服に痛覚があるといろいろと大変なのだ。例えば、鬼ごっこなどをして転んだとしよう。

「うぎゃあああ!!!」
 そしたら、服を着たまま転んでも痛覚があるので、皮膚が剥き出しの状態みたいな感じなのだ。
 なので転んだら痛さのあまりに絶叫してしまう。その場でのたうち回って泣き叫んでしまうのだ。
 そしてそれを見た友達は不思議そうに思う。

「お前今日もどうしたん?」
 そう言われる。

「今日どうしたんじゃねーぞこの野郎! こっちは痛すぎて死にそうになってるっていうのに!」と心でそう思う。
 友達にはこの痛みが分かってもらえないのがなかなか辛いところなのだ。この前は保育園でボランティアに行った時のことだった。
 小さい子供に群がられて服をたくさん引っ張られてしまった。

「うぎゃあああ!!!」
 またしても絶叫してしまった。その姿を見て子供達はびっくりしてしまった。

「うわあああん!」
 子供達はみんな自分に怯えて泣いてしまう。

「もうあんた帰りな! 邪魔なんだよ!」
 と、保育園の人にめちゃくちゃ怒られてしまった。自分一人だけが帰らされてしまった。
 他の同級生たちはまだみんな保育園に残っているので、一人だけ寂しく帰ることとなった。
 この特異な体質を誰にも分かってもらえないというのは本当に辛い。先生からも白い目で見られてしまった。

「お前、もうとにかく学校に戻ってなさい」
 先生にその一言を言われて泣きそうになった。保育園から学校に1人戻る道はとても寂しくて悲しかった。
 なんていうかみんなには自分のことを分かってもらえず心が痛くてどうしようもなかった。
 学校に戻る途中は誰にも服を引っ張られていないのに痛くて泣き出してしまった。服が痛いんじゃなくて心が痛いのだ。

「ぱくぱく…」
 そして学校で一人でお弁当を食べることになった。こんな自分はいつか誰かに理解される日が来るのだろうか?
 おそらくみんなと同じような人生を歩むことは出来ないだろう。

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