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【小説】今日からお前は馬だ

「おまえは今日から馬だ! 馬になれ!」
「えっ?」

 自分は急に今日から馬になれと言われたのであった。どうやら拒否権はないらしい。分からないけど急にそうなったからだ。

「おい! お前人の言葉を喋るなよ! お前は馬なんだから」
「で、でも…!」
「だから人の言葉を喋るなと言ってるだろぉ!」
「ひ、ひひーん(泣)」
「分かればいいんだ。これからは俺の馬としてお前を飼っていくから覚悟しておけ」
「ひひーん…」

 あぁ、どうしてこうなってしまったのだろうか。自分は馬になるために人間をやっているんじゃないのに。

「あっ、お前馬だからもちろん食事も馬と同じにしてあるからな」
「えっ…」
「おい、えってなんだよお前。馬だろ」
「ひひーん!」

 こうしてご飯も馬と同じものを食べるようになった。

「ひひーん(泣) ムシャムシャ」

 なんかよく分からないけど、稲の塊みたいなのを食べている。あぁ、お米食べたいなぁ…。ものすごい惨めな生活を送っていた。

次の日…
「おい! 馬が脱走してるぞ! 捕まえろ!」
「はぁはぁ…! あんなところで生活をするなんて絶対に無理だ! 自分は人なんだから!」

 自分は馬のようには速く走れない。やはりどこまで行っても人なのだ。だから人間らしく生きようじゃないか。

「クソッ! ずる賢い馬め! 器用に手を使いやがって! 馬として生きろと言ったのに!」

 なんとか脱走に成功したようだ。しかしこれからどうやって生きていこうか悩む。何せ何も持たずに馬小屋を脱走してきたのだ。

ぐぅぅぅぅぅ…
「あっ、お腹減ってきた…」

 しかし、食べ物も近くになさそうだ。それにお金を手に入れる手段もない。さて、どうしよう…。

……………

「ひひーん!」
「そうだ、それでいいんだ! よくぞ、戻ってきた我が馬よ」

 結局食べるものもないので諦めて馬小屋に帰ってきました。ここならとりあえず馬をやってなければいけないけど飢える心配はなさそうだ。
 そして次こそは完全な逃亡をしてみせるときめた。そのためにはお金をせっせと貯めておく必要がある。
 飼い主にバレないようにコツコツと貯めていこう。

「さて、飯の時間だぞ!」
「ひひーん(泣)」

 やはり今日も稲の塊みたいなやつを食べるみたいだ。最近ずっと肉を食べていない。そろそろたんぱく質が欲しくなってきた。

「ひひーん、じゃなくてやっぱり肉は最高ですね」
「どんどんお食べ」

 そして夜な夜な馬小屋を抜け出しては肉を食べていた。お金はなんとかお手伝いなどをして、それを食べ物にあてていた。

「ひひーん…」
「お前、最近起きるの遅いなぁ…。なんかこそこそやってないか…?」
「ひひーん!」
「そうか、次に脱走したらお前はもう食用肉になるしかないからな」
「ひひーん(泣)」

 怖すぎる。もう次がラストチャンスだ。失敗したらどうやら自分は肉にされてしまうらしい。でもお金もコツコツと貯めていたので脱走を企てる。

そして脱走決行日
「よし、逃げるか…!」
「ちょっと待ちな!」
「な、なに!?」

 飼い主がそこには立っていた。

「お前、こんな時間にどこへ行く?」
「ひっ、ひひーん」
「もういい…。そんなに脱走したいなら俺を倒していけ。そしたらなぁ…」
「うるせぇ!」
「ぐはっ! いきなり殴るなんてぇ…」

 1発KOで飼い主を倒した。

「よし、これで自由だ」

 こうして馬をやめて人間らしい生活に戻ることが出来たとさ。

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