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日記 2023/7/29 近ごろのこと


「自分のこと全部知られたくないって思っちゃう」
多分こんな感じ。多分こんなことをきみは言いました。

それはそうだ。当然そうだと思う。まあ中には、例えば好きな人には自分の中身の全てを差し出したいと思う人もいるとは思うけれど。でもきっと、こうしてnoteで文章を書く人の多くは、自分の思うあれこれをことばに落とし込みながらも、本当の本当の自分のまんなか、大事にしている小さな想いの海の場所は、秘密にしているはず。

してやられたな〜と、また思う。私はきみのことが好きで、知りたいけど知れば知るほどその向こう側に触れられない広大な領域があることに気づく。でもそれが嬉しい。好きなものや人は未知であるからこそ魅力的に感じるのだと、穂村弘さんもポッドキャストで話してた。きみ、分かってるね。そうやってあなたが隠し続けている以上、私は目が離せないのだから。
そんなことを話していたのは一昨日の話。念願だった新宿のバー「どん底」にて。いやーチーズオムレツ、あれは魔性の食べ物だね…

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工藤祐次郎さんに「学校帰りですか?」と聞かれた。やはり近頃のわたしはどうやら若いらしい。

話は少し遡り水曜日。ニューアルバムとEPをリリースした工藤さんのインストアライブにお邪魔した。ライブ後には特典会があって、CD購入者はサインと、工藤さん特製の暑中見舞いがもらえるという。CD、どちらを買おう。アルバムとEP両方買うと別録のCDが付くと聞いていたけれど、この間工藤さんのワンマンライブで過去のアルバムを買ったばかりだ。今回はアルバムの方にお気に入りの曲が多いので、アルバムにしよう!と意気込んでお会計。レジを立ち去るころには、右手に3枚のCD、左手に2枚の特典券を持っていた。一緒に行った友人はEPを買うと言っていたはずだけど、手に持っているCDの数は同じだった。


暑中見舞いは工藤さんが2日かけて作った「消しゴムはんこ」を使ったポストカード。嬉しい。工藤さんが一人ひとりのためにせっせとはんこを押しているのを見ていたら、小学生のころ消しゴムはんこにめちゃくちゃハマった時期があったなと思い出した。空き箱がパンパンになるくらい色んなはんこを作っていたはずなのに、この瞬間まですっかり記憶から抜け落ちていた。なにを彫ったかも忘れた。消しゴムハンコ用の消しゴムはハガキくらいのサイズで、彫る面は薄ピンクか薄紫色で、彫刻刀を当てると気持ちよくスルスルと削れた。覚えているのはそれくらい。触感は素直。

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やけに日焼けした足をもたもたと引き連れる浴衣姿のカップルは、最寄駅に着いても黙ったままで、浴衣にリュックを背負うのは違うでしょ、と心の中で突っ込むも、その荷物で補う不安はなんだろうと無駄な思慮を巡らせる自分に腹が立った。地元の大きめの駅で4年ぶりの夏祭り。私は逃げるように遠くへ出掛けて、終電間際で帰ってきたところだった。地元の祭りを素直に楽しめないという程度の捻くれ者で、でもいつも知らないところで誰か同士の絆が生まれるのが疎ましかった。常に部外者のような気がして疎外感があった。浮ついた話し声が飛び交う電車内やゴミが散乱する駅のホームは幼い劣等感を思い出させる。私は夏祭りの騒がしい雰囲気が苦手だというよりは、祭りのあとの虚無、知らないうちに変わっている人間関係、高揚感だけで繋がれた気持ちがあっさりと消えていく過程、そんなものに耐えられないのだった。

月が明るすぎる。苦手なことが多すぎる。

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