日記 2023/10/29(極小)とびきり馬鹿な服
とびきり赤くて、とびきり馬鹿らしくて、とびきり可愛い服がある。ニットではないけれど、トレーナーというには薄手で柔らかすぎるトップス。真ん中に、超フワフワのたぬきがいる服である。たぬきはスケートボードをしている。私はこの服を、底抜けに馬鹿に、元気になりたいときに着る。秋になってまだ一度も着ていなかったけど、今週は2回着た。今週はとても、毎日、暗くて谷底深くにいる気分だった。堂々巡りの、擦り切れた、でも抜け出すことができない悩みの中を、皇居ランナーのようにずっとぐるぐる走り回っている。
たぬきはすごくフワフワなのだ。トイプードルみたいな毛質で作られている。着るとちょうど、胃があるあたりにたぬきが佇む。不安なとき、悲しくなりそうなとき、私はそっとたぬきを撫でる。少し毛先のくるっとした、柔らかいたぬきに指を埋もれさせたり、滑らせたりする。側から見れば、私はお腹をさすっているだけに見えるので、ごく自然に撫でることができる、ありがたい。大人になるにつれ、おしゃれだけれどなるべく目立たない、派手にならず動きやすい服ばかり選ぶようになったけれど、誰しも馬鹿になれる服は絶対に持っていた方がいいと思う。粘度の高い、宇宙の果てのように暗い悩みが身体を支配し始めたとき、ふと窓ガラスに姿が映る。こんな馬鹿みたいな服を着てる大人が、なにをグズグズ悩んでいるんだ…と思うと、なんだか笑えてくる。アンバランスすぎる。馬鹿な服着てるときくらい、馬鹿になろうよ。
そんな昨日は結構馬鹿になれたと思う。動物園に行ったし、喫茶店を出た直後にコーヒーを買ったし、コーラと揚げ物を外で食べたし、わざわざ電車で移動して中華を食べた。たぬきはずっと両手を小さく上げながら、スケボーをし続けていた。