ティンベル王国に忍び寄る悪魔の手先 第4話<クロードの焦り>
俺は争いが嫌いなんだ。
大魔王が作り出した悪魔。
名はクロード。
悪魔のような魔力も力もない。
容姿は人間そっくりだ。
そんな自身に嫌悪感を抱いたこともある。
魔王は、俺のことを出来そこないと思っているんじゃないか。
魔力も力もない俺のことを、消そうとしているんじゃないのか。
怯える日々が続いた。
役に立たなければ。
功績を残さなければ。
己の存在意義を求めるように模索する。
「クロード、何そんなに焦ってるの?」
「シンシアか…。」
「お前には俺の悩みなんか分からんだろうな。」
「なんだよ唐突に。」
「俺はお前のように魔力がない。」
「この世界をこんなに住みよい土地にしたのはお前だからな。」
「さぞかし魔王様のお気に入りなんだろう。」
「なんだよそれ。嫉妬か?」
「そんなんじゃない。何も取り柄のない俺が、この世界にいてもいいのかってことだ。」
「なんだそんな事か。お前、考えすぎだぞ。」
「見てみろ。大空を飛ぶコンドル。」
「自由でいいよな。」
「上空から世界を見渡すと、さぞかし気持ちがいいんじゃないかな。」
「何が言いたい?」
「生きるのに、特技も取り柄もいらないってことよ。」
「コンドルのように、ただ自由に飛び回ってるだけ。そんな生き方好きだけどな。」
「シドー様は俺のことどう思ってる?」
「そうだな…。お前のこと、昔聞いたことがあるぞ。」
「なんだよ。もったいぶらずに話せよ。」
「あれは、わたしたち魔族が人間との戦いで敗れたときのこと…。」
「わたしたち魔族は、シドー様の命が途絶えると全員消えてしまう。」
「これは知ってるよな?」
「ああ…。」
「だが、実際はそうではなかった。」
「それは、魔王様が本当は死んでなくって、生き延びてたからだろう?」
「そうだ。わたしたち魔族は人間を喰らって生きている。これは紛れもない事実だ。」
「人間が動物を喰らうように。」
「魔王様は人間を喰らい生命を繋いできたのだ。」
「わたしたち魔族はそうするしか生きる術がなかった。」
「人間を襲い、人間を喰らい。」
「生き延びるための狩りをしていたに過ぎなかった。」
「だが、今は違う。どうしてだと思う?」
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