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北海道の廃線跡探訪 第45回 岩内線(2/2)幌似~岩内間


1.ごあいさつ

ご訪問ありがとうございます。

北海道の廃線跡探訪第45回 岩内線小沢こざわ~岩内間 その2 幌似ほろに~岩内間です。

幌似駅跡の幌似鉄道記念公園は、いつもきれいに整備されて、きもちのよいところです。
路盤は、幌似~西前田間は道路の防雪柵設置帯となり、西前田~岩内間はほぼ残っていますが、前田・西前田・岩内の各駅跡はまったく面影がなくなっています。

なお、これからの投稿予定路線などは、初回記事にありますので、そちらをご覧ください。

1.幌似

1/5万地形図「岩内」昭和44年編集に加筆

幌似は開業7年後の1919年12月開設され、廃止後は「幌似鉄道記念公園」となっている。

①幌似鉄道記念公園 2017年10月撮影

かつては駅構内が営業当時とほとんど変わらない姿で保存されていたが、2007年8月新国道建設のため、北西方向(道道側かつ前田方)へ20mほど曳家されている。
構内も、3本残されていた線路が、新設されたホームに面した1本だけになり、短くなった。
しかし、駅舎をはじめ手入れがすばらしく、ゴミ一つ落ちておらず、花壇にも色とりどりの花が咲いている。

①いつもきれいに手入れされている幌似駅舎 2017年10月撮影

保存車輌はスハフ42 507ワフ29587。ともに状態はよいが、欲をいえば車体標記の書体が残念で、スハフは岩内線とは縁がない。スハフには号車札「1号車」も入っているのには驚く。まあ、1輌しかないのだから、なくもがなという気もするが、丁寧に保存するという意気は大いに買える。

①ワフ29587とスハフ42 507 2010年10月撮影(タイトル写真も同じ)

駅舎は無粋なアルミサッシになっていた窓枠などが原型に?戻され、貨物上屋も側板を張り替えたのか、きれいになっており、あたかも実物大の模型のように見える。

①ホーム側から見た駅舎 2017年10月撮影
①貨物上屋もきれいに保存 2010年10月撮影

鳥居形の駅名標や、電柱や駅舎につけられた筆文字の「ほろに」の駅名標(わざわざ復元したらしい)などの小道具、さらには駅舎内の椅子や窓口にも神経が行きとどいている。

①駅舎内(旧待合室)のようす 旧事務室内にも資料が展示されている 2010年10月撮影

2.幌似~岩内

幌似の先の堀株川ほりかっぷがわ橋梁あたりで、路盤は新しい国道から少しずつ北側へ現れていくが、橋の痕跡はない。
堀株川の先の中野川橋梁の跡もなく、西前田までの路盤は、国道276号新設工事のための作業用通路となったため、近年まで残っていた用水路の橋台も撤去、改築された。

②レンガ造の橋台が前田川橋梁を含め10カ所ほどあった 2004年5月撮影
③ここだけPC桁が残っていた 2004年5月撮影

現在、国道の北側に防雪柵が設置されているところが岩内線の路盤跡で、そこにあるコンクリートの溝橋はまだ真新しく見えるが、古びてくるとあたかも岩内線の遺構のように見えるかもしれない。

前田川橋梁を渡ると、開業当初唯一の中間駅だった前田となる。

④残っていた前田川橋梁の橋台 2004年5月撮影

岩内線と直交する道路は駅を避けて幌似方にコの字形に曲がっていたが、廃止後は直線化されて旧駅構内を横断していた。その道路に分断されていながらも残っていたホームも、国道工事のためなくなっている

⑤道路で分断された前田のホーム(岩内方) 2010年10月撮影

西前田は北西に向いていた路線が南西方向に直角に曲がったところにある、1963年10月設置の新しい旅客専用の無人駅だった。
廃線後も残っていた、レールを組んだ上にコンクリート板を並べただけの簡素なホームも国道工事で撤去され、駅前広場というか取付道路だけが空き地になっている。

⑥岩内方から見た西前田のホーム 2004年5月撮影
⑥道路工事用車輌が通るため分断された西前田のホーム 2010年10月撮影
⑥上写真とだいたい同じ場所を望む 防雪柵のところが路盤跡 2023年5月撮影

新しい国道は西前田の先で泊村方面から南下してきた国道229号と合流する。ちょうど合流点あたりで路盤は国道の南東側へ移る。
かつて岩内線は、茅沼炭化工業専用鉄道(岩内~発足間、1946年開通、1962年廃止)と並び、あたかも複線のようになり岩内へ向かっていた。
路盤は一部が農道となっているほかはヤブに覆われている。

⑦国道と並行する路盤 岩内方を望む 2010年10月撮影

ちょうど共和町と岩内町の境界で国道とクロスするが、国道は直線化され踏切の痕跡はない。
岩内町に入った路盤は、市街地のなかのグリーンベルトとして現れ、駐車スペース、畑地や花壇となっているが、駅構内に入る手前で消えている。

⑧岩内市街地に残る路盤跡 2010年10月撮影

3.岩内

岩内駅構内は大きく様変わりし、いわないマリンパークを中心に、バスターミナルや美術館などが建ち並んでいる。駐車場や広場もあり、広かった構内を偲ばせる。

⑨木田金次郎美術館屋上から旧岩内駅構内を望む 2021年10月撮影

駅舎に突きあたっていた駅前通りは港側に貫通し、かつて駅舎のあった東側あたりに北海道中央バス岩内ターミナルが建っている。

⑨旧岩内駅構内に建つ北海道中央バス岩内ターミナル 2010年10月撮影

木田金次郎きだきんじろう美術館の建物は、敷地がかつては鉄道駅だったことを伝えるように、転車台・扇形庫をイメージしたデザインになっている。
木田金次郎は有島武郎との交流で知られる、岩内町出身の画家。

いわないマリンパークはその名前のとおりの公園で、岩内線を思い起こさせるものはない。
それでも一角には岩内駅についての説明板があり、モニュメントなのか、転轍テコが木陰にひっそりと置かれている。

⑨いわないマリンパークにある解説板 2010年10月撮影
⑨同 転轍テコ 2010年10月撮影

駅跡附近は道の駅「いわない」を中心に、観光客向けの食堂や商店も多く、休日などはかなりの賑わいがある。

函樽鉄道(開業前に北海道鉄道と改称、今の函館本線函館~南小樽間)に岩内経由の海岸ルート敷設を働きかけ、それが絶望的となるや自力で岩内馬車鉄道を敷設、さらに路盤や駅敷地を寄附してまで岩内線誘致に努力した先人の思いは、鉄道がなくなっても生きているのかもしれない。

今回はここまでです。

おしまいまで読んでくださり、ありがとうございました。

次回は根北線を予定しています。

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