アシェラレイ 漆黒を継ぐもの (7)

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  第    四    章


アシェラレイ  桃生の女神 水纏い 揺らぎ抱いて 空を極める


    ( 一 )

「りらさん、重要な責務を統括している仕組みをアシェラレイと言います。私はそのアシェラレイの統帥を務めています。その統帥をりらさんに引き継いで頂きたいと考えています」
「えっ?」
綾乃は驚くりらの瞳を見つめて、自分とりらの意識を宇宙に飛ばした。
言葉で説明するよりりらの霊性に直接アシェラレイの歴史を刻印した。
りらは意識を保ちつつもあの伊奈神社の巫女舞の時の様に身体が透明になって行き天に繋がっていく感覚を感じた。
りらに刻まれた黄金花鈿が舞うように開いていく。

 
「そよぐ光 何処迄も 優しく柔らかく 降り注がれ
 生命満つるもの 育むもの 地球と共に 天使の階段を昇る
 天使舞い降りて 天使の白き羽根 大地を癒したり
 導かるに 相応したる 人類で在りと 心から願う  」

 
りらは自らの意志を戴冠するように「拝命致します」と奏上した。
「りらさん、有難う。私も後継を任せることが出来てこの上なく嬉しく思っています。と同時に大きな任を果たすことが出来て安堵しています。
心からお礼を伝えます。
りらさんはまだ大学生でもありますから先ずは学業を優先されてくださいね。何よりも大切なことはりらさんがりらさんらしく在ることですから。
何も心配には及びません。お父様やお母様にも既にお話ししてあります。
本来ならば私と同じように時間を掛けて整えていくのですが、間もなく世界は今迄に経験したことがない大きな変革期を迎えます。この大きな変革期は現文明の終焉をもたらす可能性を帯びています。それだけは何としてでも避けなければと心に決めています。
りらさんが伊奈神社の100年に一度の大祭に巫女舞を奉納したのは必然でありそれだけの資質を有しているということです」
綾乃はりらを伴ってアシェラレイの徴を刻み池の地下空間の陣を開いた。

 
「幻が 幻影を運び 揺らぐ地球を投影する
 幻が開く時 幻に秘められた 言の葉が 水鏡を照らす」

 
「りらさん、この空間は統帥だけが入ることが許されます。この池は海に繋がり地球の核となるマリアナ海溝の神殿に繋がる海道を持っています。
マリアナ海溝は地球の中心から6366㎞の地点にあり、地球の海流を司り地球の心臓の役割を果たし、海流はマリアナ海溝で浄化され美しい水が再び海に戻り海を癒し秩序を保っています。宇宙の凪の様な特質を持ち地球はこのマリアナ海溝で呼吸をしています。
海洋生物達はその仕組みやマリアナ海溝最深の神殿の存在も知っています。地上の生物と同じように各々の周波数で意思疎通を図り独自のネットワークを構築し海洋を守護しています。
ウナギがマリアナ海溝で産卵するのは宇宙の凪のような特質を持っていることを知っているからでしょう。
現在の気候変動は現代社会が生み出した海洋汚染による海流破壊も一因となっています。海流破壊は海洋の生態系を壊しその自浄作用としての海洋断層の変動を起動させることにもなるのです。
統帥はその神殿のエネルギー帯を通り神殿奥に置かれている地球の全ての記憶が保存されているユラクリスタルと同調し、水鏡を通して地球の過去そして現在の時間軸での未来の事象を観ることが許されます。それは同時に地球の存亡が掛かっている時でもありますが・・・。
鏡の本質は水でしょう。水は宇宙にも存在しお互いに意思疎通を計ることが出来ます。一瞬にして全ての水に伝達を行います。
江戸に風水の仕組みを置いたと言われる天海も水の性質を充分熟知していたことでしょう。江戸が水の都と呼ばれた所以もそこにあるのでしょう。
また水の分子はあらゆる時空間の事象を記憶する機能を有しています。
この水鏡の原理を鑑み人類は鏡を造りご神体として崇めたのでしょう。
日本では三種の神器の一つとして八咫鏡がありますね。でも、この八咫鏡の前に伊斯許理度売命が造った日像鏡と日矛鏡が紀伊の国に在ります。
伊斯許理度売命は渋沢栄一の飛鳥山邸近くの七社神社の御祭神でもありますから崇敬していたかもしれません。
更にこの2つの鏡の前には若狭湾の冠島・沓島の息津鏡・辺津鏡が存在し深い繋がりがあるようです。
ま紀伊国は倭姫命の前に天照大神鎮座地を選ぶために巡幸された崇神天皇皇女豊鋤入姫命の母君である遠津年魚眼眼妙媛は紀国造荒川戸畔の娘でもあります。当時紀国造は日前神宮・國懸神宮の祭祀を務めていますし、紀国は黒潮に乗って渡来した部族が拠点とした地域とも言われています。
聖徳太子が訪れた可能性もあるかもしれませんね。
日前神宮・國懸神宮は伊勢国が大和国への東の出口に対して西の出口となり伊勢神宮と同等の神格を持っていました。朝廷も伊勢神宮同様神階を贈らない別格の社として尊崇していました。御祭神は日神(天照大神)に対する日前大神の名称から特別な特別な神ではないか?とも言われています。重要な聖域だったのでしょう。
桃生の血筋はそれら全ての地域に受け継がれていますし、強いてはアシェラレイの血筋は人類発祥から様々な時と変遷を経て世界各地で受け継がれているでしょう。
鏡の前に置かれている小さな水玉は天上からのコンタクトを可能とします。私も大きな変革の時を拝受しています。このコンタクトのご真意は極限られた血筋だけに口頭を以て伝達するこが許されます。
 

「風の声 水鏡そよぎ  風の波 水鏡伝え 風の華 水鏡記す
 息津鏡 辺津鏡 八咫鏡 日像鏡 日矛鏡
籠目の星鏡 五色の星甕  羅針を導き 標となり」

 
そして、神との永遠の愛の意味を持つヘセド石の指輪を受け継いでいます。この指輪がピッタリとはまる統帥は特別な使命を持つと言われています。
りらさん、はめてみて頂ける?」
りらは丁重に指輪を受け取りお互いが再会を喜ぶように指にはめた。
「ぴったりですね。きっと時代がりらさんを必要としているのね。
全ては神である宇宙のお計らいでしょう。不安に思うことなく流れに添いご自分の意志で責務に尽くされてくださいね」
「はい、心に刻んで参ります」りらは静かに頷いた。

 
自宅に戻ると両親が優しく出迎えてくれた。父透が包み込むように
「綾乃様から話は聞いたと思うが、突然の事でさぞかし驚いたことだろう。
去年の夏、りらの奉納舞を観て、その場で自分の後継者にとお祖父さまに打診されたそうだ。お祖父様もお祖母様も驚いたそうだが統帥がご神縁によって選ばれたのであれば、これがりらの宿命だと受け入れたと連絡を頂いた。
私も驚いたよ。珠美は桃生の言い伝えを知っていたが私はその詳細を初めて聞いたからね。
綾乃さまにもお目にかかり何故りらなのか?と尋ねた。逡巡したがりらの霊性が望んでいると諭され綾乃さまにお任せすることにしたのだ。
此処まで来てしまったが、りらが不本意であれば私が綾乃さまにもう一度話してみるが。じっくりと考えてごらん」
「お父様、心配して頂いて有難うございます。
でも、今日、お受けしてきました。余りにも突然でびっくりしたけれども、綾乃さまのお話を伺って何故かこれは私が為すべきことと感じたの。
私の御魂が望んでいることだと。幼い頃からいつも周囲に溶け込んでいけない異質の寂しさを感じていたわ。孤独と憤りの中でもがいていたこともあったけれども、その異質故に導かれていることもあると最近感じるようになったの。大丈夫よ。綾乃さまもりらさんはりらさんで在れば良いとおっしゃってくださったもの。それに私一人だけで成す事ではなく、お父様やお母様を始め皆さんが見守ってくださるもの」
「りら、有難う」母の珠美が涙を拭った。
「お母様の娘が統帥になるのよ。誇りに思って」とりらが笑った。

 
りらは亜瑠宮家に足繁く通い綾乃からアシェラレイの歴史や仕組みを教えて頂きながらも、時々万葉を誘い古代史の話題に花が咲き楽しい時間を過ごしていた。
「以前綾乃さまから紹介して頂いた聖徳太子や丹後の歴史の御本を読み、
万葉と一緒に色々と調べてみました。
斎が何故丹後のある地域から選ばれるのか?が分かった様に思います。
丹後の歴史ってとても奥深く神秘的でその不可思議なつながりが協奏の旋律を醸し出しているようです。
 
 
『豊受大神  月神の一面を持ち天御中主神と同格神
 丹後は月の神を深く信仰していたのだろうか?
垂仁天皇後皇后 日葉酢媛命 (同母妹2人 異母妹2人も入内)
父君は9代開化天皇第3皇子 日子坐王の皇子丹波道王命
母君は河上麻須の娘 
河上麻須は熊野神社・矢田神社を創建した
河上麻須の館は衆良神社近くにあったと言われている ご神職は日下部氏
籠神社が創建される前、この地域一帯は丹後の重要な拠点であった
丹波国の一宮 出雲大神宮  御祭神 大国主命
籠神社奥宮眞名井神社の更に奥にひっそりと眠る隠された神
 
父 垂仁天皇・母 日葉酢媛命の両親を持つ 12代景行天皇 倭媛命
丹波道王命の曾孫  神功皇后
 
アブラハムが生まれたウルを守護したシュメール月神ナンナ
遠い日々の計画を決める暦の神 』

私が若かりし頃(昔々)
ある方が「垂仁天皇は出雲の系統」と話してくださったことがありました
その言葉とこの物語の丹後国が繋がってくるなんて感慨深いです

 
 
丹後のある地域は出雲とも使い繋がりを持っていたのですね。
だから、その血筋を受け継ぎ丹波国造氏の本拠地で生まれた女性が神格の高い神社で巫女として神に仕え、その神性を以て皇室と婚姻関係を結んでいったのだと思います。
また秦氏はガド族との説があるのであれば同じ母ジルパを持つアシェル族が渡来していても不思議ではないし、キリストを祝福した予言者であれば巫女でもあると思いますので特別な資質を持つ地域だったのかもしれません」
「りらに話したでしょう?京都の月読神社には聖徳太子社があって浦島太郎は月読神の子孫で伊根の浦嶋神社の御祭神は月読神だということを。
聖徳太子も月読神を崇敬していたのではないのかしえら?
籠神社の奥宮の眞井神社の石碑の紋は三巴紋。
三つの勾玉=天照大神・月読命・素戔嗚尊が交わっている丹後国を象徴しているもかもしれないわね」
「そうね。丹後国のある神社では住吉三神の綿津見命が御祭神なのね。
住吉三神は海の神・航海の神として信仰され、オリオン座の三ツ星は古代では航海の目印となっているから例えられているでしょう?
蒼さんが私がオリオン座が好きだと話したらとても興味深いことを教えてくれたわ」
「何?蒼さんって紀州徳川家で天文を担っていた家系でしょう?
徳川家とも関係しているの?」

「うん。蒼さんが何故、徳川御三家が尾張・紀州・水戸に置かれたか?
その理由を話してくれたわ。あくまでも蒼さんの自説なんだけどね。
先ず、尾張は徳川家康の出身地(三河国)であるということと、日本書紀によると美濃・飛騨に居住しその後尾張国造になった尾張氏の勢力地だった。尾張氏は天命明命の後裔とされ古代から天皇家と結びつきが深く、天武天皇即位を全面的に支援したみたいね。更に天武天皇は代々熱田神宮大宮司も務めた尾張宿祢の同族とされる籠神社社家海部氏に養育されたという説があり、住吉大社社家の津守氏とも所縁があるのよ。
美濃を制する者は天下を制すと言われるように政治の中心江戸と経済の中心大坂を結ぶ物流の陸路の要衝であったということも併せて重要な拠点だったのだろうと。
紀州はやはり海洋に乗って渡来した集団が一大拠点を築いた地域で、海洋貿易の重要な拠点であったのね。日前神宮の創建や崇神天皇妃遠津年魚眼眼妙媛は紀国造荒川戸畔の娘であることからもその重要性が伺えるわ。
そして、西国への抑えとして置いた大坂を安定させる役割を持たせる為にも江戸と大坂の海路の要衝を紀伊半島に置いたのだろうと。
常陸国は日本神話に登場する天津甕星という星の神が治めていたらしいの。
別名を星神香香背男と言い、平田篤胤によると{香香}は星が輝くという意味で神威の大きな星を示す。甕は金星を表すと説いているのだけれど、金星はキリスト教ではラテン語で{光をもたらすもの}を意味する{ルシファー}は最高位の天使と称され、聖書の黙示録ではイエス・キリストを{輝く明けの明星}と呼ばれるほど神格化されているけれども、日本神話では星神は服従させる神として描かれているということから、大和政権に与しない星神を信仰する大きな勢力があったのではないか?
結局は建葉槌命に制圧されてしまったのだけれどもね。
その大甕山山頂に祀られていた天津甕星の宿魂石を現在の大甕神社に遷座するように命を下したのが水戸光圀なの。水戸光圀は大日本史を編纂したから常陸は古代からの日本の歴史を語る上では大切な地域だったのではないか?と話していたわ。
水戸徳川家な参勤交代を免除されていたし徳川慶喜が水戸家から出した最初で最後の将軍だったのは何か特別な役割があったからでしょうね。
現在も筑波学園都市が造られ、日本有数の頭脳が集結し未来を創造しているでしょうし、特別な才能を持つ子供たちもその芽を潰すことなく自由に開化できる環境も整えられているかもしれないわね。
それと、更に興味深いのが{かせ}はオリオン座の和名で、オリオン座は
海亀に見たてられ亀甲を意味する籠目もオリオン座を表している。
甕は丹後風土記の浦嶋子伝説の亀姫のことらしいのね。
眞名井神社の石碑には以前六芒星=籠目紋が刻まれていたでしょう?
ということは常陸国の星神を信仰していた民達も丹後国や紀伊国の様に渡来民族だったかもしれないわね。
渋沢栄一が復興に奔走した聖徳太子の御命日だけ秘仏が開帳される寺院が確か茨城にあったと思うわ。徳川御三家も聖徳太子と由縁が深いと言えるわね徳川家康は日本の正史を受け継ぎ未来に託したのね。聖徳太子の様に。
壮大な物語が紡がれているのね」
「そうね、聖徳太子・徳川家康にしろ後世に繋げていくのは至難の業だわ。天武天皇崩御後、持統天皇が吉野僥倖を数多く行い天武天皇の偉大さを称賛させる和歌を柿本人麻呂に詠ませたのも皇位を自分たちの血筋に継がせた一心だったからと言われている。でも、結局は玄孫称徳天皇崩御後は天智天皇の孫である光仁天皇に移ってしまって嫡流は皇室から消えてしまった。
但し、一条天皇の母君藤原詮子が天武天皇皇女十市皇女の11世孫にあたるから女系を通じて現在まで受け継がれてるはいるけれども。
立場は違うけれども信長や秀吉等の武将たちの血筋も女系を通じて現在でも皇室に受け継がれているわね。」
「そういう一面はあるわね。華流ドラマを観ていても古代の封印を解くには女系で受け継がれた女性の血を垂らすと鳳凰が蘇ったり扉が開いたりとか多いもの。ドラマと言ってしまえばそれまでだけれどもミトコンドリアの遺伝子の組み換えがないから原初と同じということかしら?
巫女の資質も代々受け継がれるという事はそこに理由があるのかもしれない

『そして 月の神聖な「血」そのものが奥儀だったのね
 花 満ち足りて  花溢れだす 
 原初の女神たち グラデーションを 不思議に染める』」


「オリオンの歌が出来たわ。

 冴え渡る 冬の夜空に オリオンが 光かざして 海を導く

 わらべ唄 歌い継がれて 黎明に 籠目の結び 解き放たれて」

3人は遥か昔を懐かしむ様に想像を膨らませながら心安らぐ時間を過ごした



日前神宮・國懸神宮 - Wikipedia  イシコリドメ - Wikipedia
垂仁天皇 - Wikipedia 丹波道主命 - Wikipedia  天津甕星 - Wikipedia
尾張氏 - Wikipedia  オリオン座 - Wikipedia  籠神社 - Wikipedia
神社・歴史事象等 Wikipdiaより引用参考にしております
 

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