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中長期視点のマーケター育成

まずは石の上にも3年から

マーケティング人材の育成について、求められる資質や日々の業務、蓄積すべき経験について話してきました。これらの手法を実践すれば、人材はかなり高い確率で育成できると考えています。

次に、これらの手法が実践できるようになった前提で、より中長期的な人材の育成方法について説明したいと思います。

まず、マーケティング人材の育成で最も重要なのは、マーケティングの基礎体力を育成する期間です。この期間には約3年を想定しています。個々の能力によって異なるかもしれませんが、最初の3年はじっくりと基礎体力を養成し、一つのマーケティングファンクションに集中して業務を行うことを重視します。

経験を積んだ後、一つ目のファンクションを深く理解した人材には、次のファンクションの習得が容易になると考えています。具体的には、2つ目のファンクションの習得には1つ目の半分程度の時間がかかると見込んでいます。もし2個目以降のファンクション習得に時間がかかる場合、それは基礎体力の不足を意味し、複数のファンクションを担当する準備が整っていないことを示唆します。

一方で、3年間一つのことに取り組むことに飽きる心配があるかもしれませんが、これには否定的な見方をしています。私の経験から言えば、真剣に取り組んでいれば、学びの機会は限りなく広がります。もしそれがないと感じる場合は、より深い分析を行うことで克服できるでしょう。この習慣が、普通のマーケターと良いマーケターの差を生む要因だと考えています。

2周目は2つのオプションから選択

最初の3年の第1ターン目は、基本的にはどのマーケターに対しても同じ考え方で良いと思っています。一方で、第2ターン目からは、それぞれのマーケターのキャリアビジョンに応じて大きく2つのパターンに分かれると考えています。

  1. マーケティングの複数のファンクションを経験し、最終的にはひとつのサービスや事業の総合的なマーケティング戦略の立案や実行をマネジメントできる人材。

  2. マーケティングの特定のファンクションをさらに深堀りし、そのファンクションのトップレベルのスキルと経験を持つ専門人材。

これらの人材に求められることと、その高みに立つためのキャリアステップについて考えてみます。

1)総合的マーケター

事業やサービスによって必要とされるマーケティングのファンクションは多少異なるかもしれませんが、一つの事業やサービスのマーケティング戦略を立案し、高いレベルで実行し、オペレーションに落とし込んでいくためには、基本的には各ファンクションを理解し、事業やサービスの状況や目指す戦略に応じた適切な選択を行う能力が不可欠です。少なくとも、新規顧客の獲得と既存顧客向けのCRM手法についての理解は必要です。

このようなマーケターになるためには、マーケティングの基礎体力を身につけた上で、2~3つのファンクションの経験が有効だと考えています。新しいマーケティング手法をすべて習得する必要はありませんが、少なくとも2つ以上のファンクションの経験が必要です。なぜなら、各ファンクションの応用を学ぶことで、全体の戦略を立案する際に最適な手法を選択する能力が身につくからです。特に、マーケティングの基礎体力を応用することで、異なるファンクションの本質を理解しやすくなります。このため、多様なファンクションの経験があるほど、総合的なマーケティング戦略を検討する能力が向上すると考えています。

さらに、総合的なマーケターにはマーケティングスキルだけでなく、チームマネジメントやコミュニケーションスキルも必要です。組織での業務では、チームを適切に指導し、成果を出すためにこれらのスキルが不可欠です。

総合的なマーケターを育成するには、4~5年程度の期間が必要です。この期間を通じて、複数のファンクションの経験を積むことで、マーケティング戦略を総合的に検討する能力が身につきます。

2)ファンクション特化型マーケター

ファンクション特化型のマーケターは、例えばデジタル広告の運用やCRMのMAのスペシャリストなど、特定のマーケティング分野でトップ水準のスキルを持つ人材です。彼らに必要なのは、狭く深くを徹底的に行い続ける粘り強さと、最新の事例を貪欲に吸収し、業界の最先端を走り続ける意思です。この2つは、スキルよりも意思や意欲の問題だと考えます。研究職のように、コツコツと成果を積み上げる粘り強さが重要です。これが欠けると、一般的なオペレーション人材になり、評価が停滞する可能性があります。

しかし、ファンクション特化型の人材の育成には、外部からのサポートも重要です。マンネリ化を防ぐために、定期的に環境を変えて刺激を与えることが大切です。これは、担当する事業やサービスを変更するだけでなく、ファンクション内でも新しい課題に取り組むことや、チームメンバーを変更することなどで実現できます。特定のファンクションに特化していても、個々の興味やモチベーションには違いがあります。外部からのサポートは、各人の興味を把握することで、適切な刺激を提供することができると思っています。面談や日々の業務への取り組みを観察し、メンバーと協力して刺激の作り方を考えることが重要です。

30代前半くらいまでに自分のマーケターとしてのキャリアを決めよう!

この2つのタイプのマーケターの区分は、良い悪いの話ではなく、個々のマーケターが自分のキャリアをどのように考えるかに関わる問題です。また、一度決めたら変更できないわけではありません。特に30代前半までは、様々な経験を積みながら、自分の向き不向きを見極める時期だと考えています。最初の3~4年は、いくつかのファンクションを経験しながら、進みたい道を模索するのも良いでしょう。

どのようなキャリアを選択するにしても、重要なのは、高いマーケティングの基礎体力を持ち、自分の担当する役割を深く追求し、PDCAの回転速度と精度を競合他社と比較して高めることです。この能力を持つ人材こそが、業界でトップレベルのマーケターです。常に同じことをしているのであれば、まだまだ成長の余地があると考えられます。自分のチームや自身の立ち位置を、日々のマーケティング業務の分析を通じて把握し、成長させるべきポイントを見つける努力をすることが大切です。

【この文章は以下の文章のライトバージョンです。より詳細な議論はこちらでご確認ください】


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