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長女ちゃんの蜘蛛の糸

こんにちは!耕す太郎です。





『ある日のことでございます。
お釈迦様は極楽の蓮池のふちを、独りでぶらぶら御歩きになっていらっしゃいました』

芥川龍之介作「蜘蛛の糸」の冒頭です。





月曜日の朝のことでございます。

長女ちゃん(9歳)がリビングをふんふん言いながらウロウロとしていました。

ピピピッ

長女ちゃんの脇から電子音が聞こえてきます。

体温計は36.5℃

「はい、平熱。ちゃんと学校に行ってね」

長女ちゃんはお嫁ちゃんに言われてしまいます。

縋っていた最後の希望は簡単に切れてしまいました。

渋々と学校の準備を始めます。

そうなのです。

学校に行きたくないのです。





時は遡って3日前の金曜日の夕方。

学校から帰ってきた長女ちゃんの様子がおかしいです。

心配して声をかけた次女ちゃん(6歳)にも当たり散らす始末。

あまりにもいつもと違ったので問い質したところ、学校で1番仲が良いお友達とケンカをしてしまったようです。

たまにケンカをしてもすぐにその日のうちに仲直りして帰ってきたのですが、この日は違います。

「お友達やめよ」

そう言って帰ってきてしまったようです。

連絡手段はありません。

初めて迎えるモヤモヤのままの週末。

五里霧中の2泊3日。

月曜日になるまで解決しません。

原因を聞いてみると長女ちゃんの好きな男の子の名前をそのお友達が他の人にばらしてしまったようです。

約束を破られたショックで長女ちゃんもすぐには許せなかったのです。




そして迎えた月曜日の朝。

現実から目を背けるべく、ダメ元で体温計に縋ったのです。

「お父さん、どうしよう?」

長女ちゃんは僕に聞いてきます。

長女ちゃんの気持ちをスッキリ晴らせてあげる言葉などなく、ただ時間が過ぎるばかりです。

ねえ、どうしよう?

どうしよう?

そればかりの長女ちゃん。

どうって言われても、、、ねえ、、、。




どう?




どう?




っていうか、、、、、、、。




どうって何よ??




どうってなんだ??



けんか??



どう?



けんかどう??




県か道???


道ってなんだよ!!!

はい!

どん!


なんでそこだけ県でも府でもなくて「道」なのよ?


そう!


そんな本日は「北海道」のお話。





「五畿七道(ごきしちどう)」



明治の初期まで日本は都に近い5つの国(五畿)以外は7つの地域(七道)にわけておりました。


諸説ありますが、明治2年、ロシアの脅威もあって当時、蝦夷地と呼ばれていた地域を日本国土として組み込み、8つ目の「道」として「北海道」としたといわれております。

その後すぐに「廃藩置県」が発令され261あった「藩」がなくなり地方統治ではなく中央集権を狙ったため、各地での「道」もなくなり県(都や府も含む)を置いたのです。

しかし、北海道は領主が収める「藩」ではなくアイヌ民族の方々が住んでいて、土地も広く「県」での土地の統治が難しかったため一つの行政区域として「道」が残っていったのです。

歴史の教科書や博物館なとでお馴染みの「東海道」などと同じ「道」から始まっていると思うと、当たり前ですが時間は繋がっているんだなと感じてしまいます。

切れない歴史の糸。

僕らは子供たちにどんな未来を残せるだろう。

スケールの大きな話になってきてしまいましたが、北海道はでっかいどうなので、どうかお許し下さい。






月曜日の午後のことでございます。

イヤイヤながら学校に行った長女ちゃんが心配です。

ピンポーン。

帰って来ました。

インターホンに映った長女ちゃんは鼻の穴を広げて変顔を作っています。

暑かったのか顔は真っ赤です。

「ただいま!!」

元気な声で帰って来ました。



「どうだった?」

「どう?大丈夫だった?」


お嫁ちゃんと僕は矢継ぎ早に質問です。

どうどう!!

まあ落ち着きなさい。

はい。分かっちゃいるけど、気になるわけです。

長女ちゃんは水を一気に飲み干してから言いました。


「どうって?普通に笑って終わりだよ」


話を詳しく聞くとこうでした。

休み時間中に他のクラスメイトと話していた長女ちゃん。

ケンカしたお友達は独りで折り紙をしていたようです。

なんだかそれが寂しそうに見えたから長女ちゃんの方からそのお友達の方へ。



「仲直りしない?」

「うん。ごめんね」



どちらからでもなく、笑いがこみ上げてきて二人で笑って、笑って、笑って。

それでおしまい。

どうもこうもありません。


親の心配なんて軽く飛び越えて、自分で解決していきます。

美味しそうにおやつを食べています。

長女ちゃんの顔はまだ真っ赤か。

「あ〜。早く明日にならないかな」

明日の心配はいらないようです。

おしまい。

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