見出し画像

ダイヤモンドの原石

 磨けば光るダイヤモンドの原石があるそうな。その原石が持つ内なる光に魅かれて、たくさんの人が「私に研がせてくれ。私が研げばいい思いをさせてやる」と言います。原石は思います。「そんなに人を育てるのが上手いなら、自分で自分のことを磨いてください」皆さんもご存じの通り、ダイヤモンドは硬度が高すぎて、磨くのもダイヤモンドである必要があります。原石の目には、自分のことを磨きたいといったその彼らが、ダイヤモンドには見えなかったのです。

 ところで噂の原石は磨いたら、本当にダイヤモンドになるのでしょうか。

 多くの若者は何かの原石です。ダイヤモンドかもしれないため、得体の知れない人に「あなたを磨きたい」と言われますが、本当にその辺の石ころがダイヤモンドだった話をあまり聞きません。失礼かとは思いますが、偽物のダイヤモンドの原石は心の中で「自分がダイヤモンドではない」と思っています。万人から選ばれる存在ではない、と。(でも、なにかの原石であることは間違いないのです。)

 一方で本物のダイヤモンドの原石は、この世に生を受けたときから自身がダイヤモンドであるかどうかなんて、一度も考えません。私たち人間が、「自分は人間ではない」とは決して思わないのと同じです。ダイヤモンドは生まれたときからダイヤモンドです。それは覆ることのない事実。
 
 噂の原石は未来のダイヤモンドでした。
 硬度の高い自分の才能が、周囲を潰していく様子も原石は見ていました。

「どうして、続けないの」

「なぜ分からないの」

「なぜできないの」

 原石に目利きはできません。自分の周囲にいる人がダイヤモンドかどうかはわかりません。一緒に遊びたくて仲間の手を握ったら、どうも仲間は削られ、散っていきます。集団の中で生きていくことが求められるこの島国で、ダイヤモンドの原石は自分自身と一生、身を削ってくれるどこかにいる別の原石を探しに旅へ出かけます。そんなにいないんですよねぇ。

 旅の道中、ずいぶん小さくなったダイヤモンドに会います。0.1カラットよりも小さいダイヤモンド、若い時は大ぶりの大ぶり、特大級のダイヤモンドでした。このダイヤモンド色んなところで削られすぎて、さすがにどれがダイヤモンドの原石か分かります。気を利かせて、ちょうどいいダイヤモンドがいる居場所を教えました。

「南に削るのに適したダイヤモンドがあると聞く。南に行け」

 原石はこう返します。

「は?うるせー、ばーか!お前が行けよ。おっさんがダイヤモンドならな」

 原石に目利きはできないので、小さいダイヤモンドが石ころに見えました。また、今までずいぶん僻まれ、その経験から性格が荒んでいました。
 あれ?
 よく見ると、
 ずいぶん、
 いらないものがくっついて、
 これは、偽物でしょうか?

 磨けば光るダイヤモンドの原石は、きちんとした人が磨かなければ、輝かない、ただの汚れた石ころなのです。

おまけ

「うるせーブス!チケット買ってやったから早く飛行機乗れ!」
「指図すんな!」
(スーツケースをガラガラと押して空港へ行く)

彼女が光り輝くのは、きっともう少し後・・・。


夢も現実になったら、夢ではないですからね。

よろしければサポートお願いします。野菜の種や土、農耕グッズ購入費用にさせて頂きます。買ったものはノートで報告いたしますので、よかったら読んでください。