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Tohoku 4Days 3rd

遠野の河童は赤いのです。

一般的にキャラクターとして皆さんが思い浮かべる河童と言えば、青や緑で、分類するとすれば両生類や爬虫類に近い姿を思い浮かべるのではないでしょうか。
しかし、柳田國男の著書であるところの遠野物語に記述される遠野の河童は赤い色をし見た目には猿に近い生き物だったそうです。

これには諸説あるのですが、明るい話ではないので割愛します。
っていうか、知りたい人はLet’s  Go 遠野。


東北旅行3日目は、遠野物語の舞台。岩手県遠野市へ向かいます。
この日は生憎の雨となってしまいました。ちょうど秋田の大雨被害が報じられていた日です。山一つ越えた日本海側では大変なことになっていましたし、岩手側でも車窓から見える河川の水位が目に見えて上がっていました。

釜石線のホームに来る電車
快速はまゆり 鉄道オタクの間ではちょいと知られた存在
普段の姿を知らないが、どう見ても増水している(車窓より)

遠野物語にも記載のある事ですが、意外に遠野駅前は街として栄えていました。想像していた茅葺屋根の集落も、妖怪が覗いている鬱蒼とした森も無く、普通の地方都市が駅前に広がっていました

駅前をまっすぐ言った所に鍋倉山と南部神社。その麓にあるのが遠野市立博物館。一先ずの目的地です。

遠野駅前から少し進んだ場所
遠野市立博物館

遠野駅から駅前通りを南東へ真っすぐ進み、1kmも歩かない内に遠野市立博物館に到着します。1〜2階は図書館、3~4階は博物館となっているようです。

旅行をする時はだいたいいつもそうなのですが、人が混み合うのが嫌で、基本的には開場ダッシュが基本です。
初日の感覚ミュージアム、柳月食堂、萬福食堂も全てその日の営業開始1人目の客でした。どうしても人が混み合うのが嫌いなのです。

館内に入り、表示を確認。
大抵の美術館や博物館には「写真撮影禁止」の表示があるものなのですが、この博物館には見当たりませんでした。
念の為、受付の方に伺ってみたところ
「大体とこでも撮影OKです。シアターの上映作品と、特別企画展示のコーナーは撮影禁止にしておりますので、そちらはご遠慮ください」とのことでした。

ところで、特別企画展示は8月からだったと思うのですが(旅行当時2023年7月)?

「もう一部展示はしてあります」

開始時期とは一体。
むしろ、混む前に見れるので良いことしかありません。あまり気にせず展示コーナーに進みます。
ちなみに、現時点(2023年9月時点)では、特別展示も撮影可能との噂がありました。太っ腹すぎる。

馬と人の頭を持つ神様

この博物館で特に観たかったもの。
それがこのオシラサマです。

馬と人の頭を象った2つの木型に、布を幾重にも着せて着物とし養蚕の神様として各家庭で纏っていたものだそうです。

何故かこの神様は祀ることを「あそばせる」というのだそうです。

このような形、つまりは馬と人の頭を象ることにも意味はあるのですが、それを知りたい方は、Lets'GO 遠野(2回目)!

実際に、遠野物語では造形に関しての描写はありますが、もちろん書籍内に写真などはなく、私は意図的に画像をネット検索などしないようにしておきました。

このオシラサマ、微妙に名前を変えたり形の変わったマイナーチェンジバージョンとも言う様々な神様もおり、それらが一つの展示棚にまとめられている光景は圧巻でありました。

まだ人もまばらな午前中の博物館。一つの展示棚の前で、初対面の神々を熱心に写真に収める中年の姿がありました。呼吸はやや荒く、うっとりとした目で、華やかな着物を着た木型の馬と人をへレンズを向けるその様は、異様な迫力です。有り体にいれば変質者です。目線に現れる熱量は、登下校の女学生を狙う破廉恥漢を想起させます。

そして、その様子を少し離れたところから警戒心もあらわに私を見つめる老夫婦の存在に2分後に気づくことになります。

パネルを撮影した写真は、何故か全てブレていた

また、これも好きです。
博物館の中で、職員が実際に体験した怪奇現象が小さいパネルで展示されていました。

遠野や紀伊は「妖怪の多い場所」ではありません。「妖怪の記録が多く残る場所」なのです。
遠野物語を読んでいても、ロケーションをすげ替えたような類似する怪談は日本のあちこちに見ることができます。

生産量の多さよりも偶然を含むブランド化が機能していると言って良いでしょう。妖怪はどこにでもいますが、遠野物語がある種のお墨付きとして「遠野産妖怪」をブランドにしているのです。

そして「遠野」という地域において、このようなちょっとした怪談も全て付加価値を持った怪談になっているのだと思います。

もし仮に私がこの地方の病院に就職しており、ある程度の権限を持つに至ったなら「当院で職員が実際に体験した怪奇現象パネル展」とかやります。絶対。

妖怪って「生産」っていうのかしら。

さておき、博物館をあとにする前にミュージアムショップでも冷やかして行こうかと除いてみると、なかなかにクレイジーなガチャがありました。

遠野物語原稿缶バッチガチャです。

ガチャと言っていいのか微妙なラインの販売方法でした

遠野物語に出てくる妖怪が描かれている訳ではありません。遠野物語が製本されるまでの過程が缶バッチになっています。クレイジーですね。

博物館を出て、登りかけの鍋倉山をもう少しだけ登ったところに南部神社があります。

社務所はおろか、掲題のどこにも人っ子一人いませんでした


駅の方面が開けて見えていました

遠野駅周辺を眺めながら社務所で書置きの御朱印を頂きます。

ポツポツ雨が降り始めており、次の目的地と移動手段を神社の境内で検討し始めます。

恐ろしいほど乗客のいないバスに乗り、カッパ淵に向かいことにしました。
まじで駅前からカッパ淵まで乗客私一人。日曜日にです。

喜ばしい事ではあるのですが、みんな僕の知らない秘密の移動手段とか持ってます?

もしかして妖怪ポストから依頼すると、大量のカラスがブランコで運んでくれたりするんですか?

ゲゲゲの鬼太郎

さておき、カッパ淵と伝承館という施設のあるエリアに到着しました。

伝承館では、昔の建物がそのまま展示されており、文字だけの情報であった遠野物語が如実に解像度を増していきます。

茅葺の古民家
想像上の遠野が解像度を上げてきた

そしてオシラ堂。

おびただしい数のオシラ様と人の願いが渦巻く部屋

古民家の一室に、大量のオシラサマがおわします。
圧巻の光景に、恍惚の表情でカメラを回す私を、やはり壮年のご夫婦が警戒色の目で私を見つめています。怪しくないです。100歩譲って怪しくても、怪しいだけでまだ罪は犯していないはずです。お天道様に後ろめたくはありますが、同心に手を捻られる覚えはございやせん。

お昼寝中らしいです

お昼寝中の座敷童ちゃんらしいのですが、古い日本家屋というシチュエーションにおいては、どんな可愛らしい人形だとしても多少の恐怖の意味付けをしまう気がします。

この施設の中では、クイズラリーをやっていました。
受付で紙をもらい、鉛筆を片手に庭内を周りクイズに答えるとオリジナル缶バッチがもらえます

カッパを探していることを控えめに主張するアイテム

絶対欲しいですよね、少なくとも私は欲しいです。

ちなみにクイズですが、6問中4問が妖怪好きであれば瞬殺できる問題で、あとの2問も展示物を見ればすぐわかるものでした。

なお、私は大人なので、すべての問題を漢字で解答したところ受付のお姉さまに花丸をつけていただきました。
最後に花丸をもらったのが小学2年生の頃と記憶しておりますので、25年ぶりくらいの花丸です。

バスが来るまでの時間、カッパ淵にてカッパを探索します。
意外に人が多かったのですが、本当に小さな小川という感じでした。日本昔ばなしのアニメに出てくるような淵です。

釣り竿にきゅうりが括られていて、許可証があればカッパ釣りをすることもできます。

私は許可証を持っていますが、釣りませんでした

この淵は、その昔に馬の足を冷やすために寄った人が昼寝をしていたところ、馬の嘶きで目を覚ますと馬の尻に飛びつく赤いカッパがおり、捕まえたという話が残る場所です。

遠野物語の記載にある、いわば聖地巡礼です。
遠野旅行が今後の人生のどこかに予定されているかたは、遠野物語を是非ご一読ください。
昔話と現在の光景が地続きであるという感覚を、其処彼処で味わうことができる稀有な場所です。

カッパ淵をあとにし、遠野駅前の市街地に戻るバスに乗り込みます。
途中、遠野八幡宮という場所で下車し、お参りと御朱印をいただきます。
可愛らしい妖怪の御朱印を頂戴しました。また、この神社。驚くほど広い土地と美しさで、雨天もまたそれに映える素晴らしい神社でした。

参道から、”らしい”囲気が溢れています
雨が映えまくる神社

 ある程度有名なスポットを回り(まだまだ足りませんが)、遠野八幡宮から遠野駅まで徒歩で戻って参りました。
ここから帰宿までのスケジュールを勘案します。

ちょっとした目的として、「遠野名物のジンギスカンを食べたい」というのと、「河童が目撃された猿ヶ石川」を見たい。というのがあります。そして何より、終電までに宿に帰りたい。です。

美食の巻きで少し触れましたが、遠野駅のすぐ近くでジンギスカンが食べられる店を発見。この時点で開店まで2時間。
この2時間を使って、卯子酉神社に徒歩で向かい、そこから猿ヶ石川を眺めながら再度駅に戻ると概ね2時間弱と計算しました。

赤い布が大量に垂れ下がる様は、ちょっとしたホラー

遠野の観光情報では割とよく見る、赤い布が有名な神社です。
事前情報なしではともすれば不気味に見えてしまう光景かもしれませんが、この神社、恋愛成就の神社なのです。

本当はもっと多くの写真を撮っておきたかったのですが、私の到着とほぼ同時に本当に沢山のカップルがやって来てはしゃいでおりましたため、聞こえない大きさで呪詛の言葉を撒き散らしながらスゴスゴと退散したわけです。

何でもいいんですが、「恋愛を成就しさせる神様」のところにやって来る「カップル」って何?別にそんな祈願をしたわけでもない私が言うのもなんですが。

愛宕橋
右の遊歩道から駅に帰ります

河童の目撃されたもう一つの有名な川です。
カッパ淵とはうって変わって、増水していることを加味してもかなり大きな川です。
不安定な天気のせいか、川縁の散策道ではほとんど人とすれ違うことがありませんでした。

一通り、見たいところは、すみません。全然見れていません。
気候、天候の条件も悪かったのですが、この旅から帰った私はすぐに町の自転車屋に赴き、折り畳み自転車を購入することになるのですが、その話と、機動力を得てさらに活動範囲が広がる旅日記はまたの機会に。

全然関係ないのですが、駅の売店でドリンクを買った所、くじ引きをさせてもらい、唐辛子を当てました。

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