映画を観た「彼らが本気で編むときは、」
3~4年ぶり2回目の視聴。
生田斗真さんの出演は覚えていたけれど、桐谷健太さんの存在はすっかり忘れていた。
初見は生田さんの所作や言葉の美しさ、人としての美しさに圧倒されたのだが、今回は桐谷さんの優しさにも目が行った。
物語は、小学生のトモが、育児放棄傾向のある母親の予告なしの長期不在により叔父のマキオ(桐谷さん)のところに居候することから始まる。マキオの家には行き慣れているらしきことから、母親の不在の多さが垣間見える。
だが、今回マキオの家にはリンコさん(斗真)が住んでいて、二人は同棲しているようだ。リンコさんはトランスジェンダーで、学生時代はかなりつらい思いをしたようだ。しかし、何をおいても自分のことを理解し守ってくれる母親の存在から、素直に自分の思うままの姿で生きられるようになったようだ。リンコさんの母親は田中美佐子さんだ。
これまでは我が物顔で過ごしていたマキオの部屋も、リンコさんの登場により、ゲームの記録が抜かされていたり美味しく家庭的な食事がテーブルに並んだりと、トモは少し落ち着かない。
私はリンコさんがトモにシーツを敷く手伝いをさせるシーンが好きだ。
優しいけど、しっかり手伝いをさせる、子供に対しての扱いがとても上手だと思うのだ。リンコさんには他に育てている子供はいないので、この辺りのさじ加減が天性の感覚だと思うのだ。トモとリンコさんの関係がぐっと近づいた瞬間。トモもリンコさんに懐き、リンコさんもトモへの愛情が増していく。とても良い関係性が育まれていく流れはとても温かい世界だ。
だが、トモが下校途中に母親の後ろ姿を見かけてしまうところからこの関係がずっとは続かないものとなってしまう。
リンコさんもマキオも自分たちがトモを育てるというが、トモの母親も親権を手放さない。そのくせ、自分は母親である前に女性としての生き方もあるのだから子供を中心に動けないと宣う。この辺りの発想は「誰も知らない」の母親と同じように感じるが、「だれも知らない」の母親を演じたYOUさんより、今回のミムラさんのほうが、一見ちゃんとしているように見えてのネグレクトだから始末が悪い。いや、外見で判断するのは良くないのだけど、イメージ的に、ミムラさんの演じる母親のほうがダメージが大きい。
トモの最終的な決断は、残念に感じるものだった。でもしっかりしている彼女は数年もすれば自力で生きるようになるのだろう。それが良いことかどうかはわからないが、改善の見込みがほとんどない親でも血の力のほうが強かったなんて、やるせない。
そしてまたマキオとリンコさんの静かな日常に戻ることを考えた時に、彼らにはこれまでになかった喪失感を持つのだろうと思うと辛くなる。トモにだって喪失感はある。
トモの母親だけが何も失わないのだ。ただ彼女の心は誰よりも満たされない。
なんだかな。
#彼らが本気で編むときは
#WOWOW #生田斗真
#桐谷健太
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?